伊都工平の第二作
『天槍の下のバシレイス(てんそうのしたのバシレイス)』は2004年刊行作品。今は亡きメディアワークスのライトノベル小説誌「電撃hp」のvol28~31に連載されていた作品に追加短編三本。更に最終章の書き下ろしが追記されたもの。上下巻構成でカバーを並べると一枚絵になる仕様になっている。
ちなみにあとがきによれば連載時のタイトルは『西方世界剣魔攻防緑』であったそうで、これは間違いなく今の方がカッコイイので変えて正解。
作者の伊都工平(いとこうへい)は1975年生まれのライトノベル作家。デビュー作は2001~2004年にかけて書かれた『第61魔法分隊』全五巻で、今回の『天槍の下のバシレイス』が第二作となる。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
学園を舞台としたVS謎の生命体系の作品を読んでみたい方。女性主人公のライトノベルが好き!な方。1960年代風の世界観、テクノロジーがお好きな方。ゼロ年代のライトノベル作品、電撃文庫系の作品を読みたい方におススメ。
あらすじ
塔(メテクシス)と呼ばれる巨大構造物が突如出現。周囲は広大な無人地帯となり日本は東西に分断されてしまう。東日本は福島に遷都した日本政府に実効支配され、西日本は複数の共同体により分割統治されていた。2018年。15歳の川中島敦樹は東日本軍の特殊観測隊に選抜され塔周辺部への潜入を敢行する。しかしあえなく部隊は全滅。唯一生き残った敦樹は西日本へと逃れ新たな生活を始めることになる。
ここからネタバレ
第一部完!で終わってしまったのが残念
謎の異世界生命体に侵略された日本。学校に通いながら軍事活動に従事する少年少女。なんとなく『ガンパレード・マーチ』っぽい世界観。生活水準が1960年代レベルまで退行してしまったという設定なんだけど、いまひとつ生かし切れていない感じ。オーバーテクノロジーな兵器群を縦横に駆使しながら、日常生活に戻れば不便な60年代生活ってギャップは面白く書けばいい効果が出ると思うんだけどなあ。
主人公が女の子でビックリ。そいでもってパートナーはメガネっ娘と来た。♀×♀なのか!個人的にはアリな設定だけど、どっちかを男性にしておいた方が、話が作りやすかったような気はする。でも、敦樹も佐里もかわいいからいいか。瑚澄遊智(こすみゆうち)のイラストは非常によろしくて◎。『頭蓋骨のホーリーグレイル』の人だよね。
本作は今回の「まれびとの棺」上下巻で第一部完!の体裁となっている。が、残念ながらその後第二部が出ることはなく、あえなく打ち切りとなってしまった模様。ライトノベルの世界は厳しい……。
その後の伊都工平作品
『天槍の下のバシレイス』以降の伊都工平作品は、発表の場を電撃文庫から、MF文庫Jに移す。
2006~2007年にかけて『モノケロスの魔杖は穿つ』 が登場。全四巻。
2008年には『さくらら!』が登場。
2009~2010年には『Xの魔王』が同じくMF文庫Jから。全三巻。
現在確認されている最後の作品は2011年に書かれた『犯人は夜須礼ありす』となっている。
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