ネコショカ

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『鉄の枷』ミネット・ウォルターズ 中世の拘束具を被せられた死体の謎


ミネット・ウォルターズの三作目

オリジナルの英国版は1994年刊行で、原題は『The Scold's Bridle』。邦訳版は1996年に登場。

 

鉄の枷

鉄の枷

 

わたしが読んだのは2002年に刊行された創元推理文庫版である。

鉄の枷 (創元推理文庫)

作者のミネット・ウォルターズは1949年生まれの女性作家。『氷の家』(原題『The Ice House』で1992年にデビュー。この作品がジョン・クリーシー・ダガー賞を取り一躍人気作家に。続いて、第二作の『女彫刻家』がエドガー賞を獲得している。

本作はそんなミネット・ウォルターズの第三作。こちらの作品も英国でゴールド・ダガー賞を受賞し、その人気を不動のものとした。日本国内でも、「このミス」1998年版で海外部門第四位にランクインしている。

あらすじ

イギリス。フォントウェル村。村きっての名家、ギレスビー家の老婦人マチルダの遺体が自宅浴室で発見される。睡眠薬を服用し浴槽内で手首を切る。それは覚悟の自殺だったのか。しかし彼女の頭部には中世の拘束具スコゥールズ・ブライドルが被せられ、野菊や刺草の装飾が施されていた。村の医師セアラは、マチルダの"遺言"により事件に巻き込まれていくのだが。

厄介なギレスビー一族が魅力的

イギリスの片田舎で繰り広げられた半世紀に及ぶ愛憎劇のなれの果てを描いたお話。殺害されたマチルダは孤高の嫌われ者といった態の老婦人、その娘は色情狂で薬物中毒者、孫は盗癖ありの問題児で放校寸前と、過去に遡ってもまともな人間が一人もいないギレスビー一族が面白い。とりわけマチルダ・ギレスビー凄すぎ。あなたは黒すぎる。

医師セアラの視点で描かれる

普通の人代表にして、物語の牽引役はマチルダの主治医で数少ない理解者であった医師のセアラ。彼女は夫で売れない画家ジャックとの夫婦仲が冷え切っていて、いままさに離婚確定かという状況。物語はマチルダの死についての真相究明に、セアラたち夫婦の家庭内問題が絡み合うような形で展開していく。陰惨なギレスビー家の話がセアラとジャックの陽性のキャラクター設定でかなり救われている。

前作『女彫刻家』とはかなり趣きが違うので最初は少々戸惑う。最初の100頁くらいは我慢して読む。話の軸がセアラに移ってくると読みやすくなる。ミネット・ウォルターズのリーダビリティは相変わらず高い。ミスリードの仕掛けも堂に入ったもので、暖かな余韻を残した幕引きも悪くない。引き出しの多さに感心させられた。ここしばらく読んでいないので、そろそろ他の作品も読んでみようかな。

鉄の枷 (創元推理文庫)

鉄の枷 (創元推理文庫)