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『火星年代記』レイ・ブラッドベリ 火星移民を巡る26編の連作短編集


ブラッドベリの代表作

オリジナルの米国版は1950年刊行。原題は『The Martian Chronicles』。火星植民をテーマとした連作短編集である。

作者のレイ・ブラッドベリ(Ray Bradbury)は1920年生まれのアメリカ人作家。2012年に亡くなられている。

邦訳版はいくつか存在するが、まず知られているのが1976年のハヤカワ文庫版であろう。

火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)

火星年代記 (ハヤカワ文庫 NV 114)

 

ブラッドベリは本作の改訂版を1997年に刊行している。変更点は以下の通り。

改訂版では、「ロケットの夏」の年代が「2030年1月」に変更されたことをはじめ、各エピソードの年代がすべて旧版より31年繰り下げられた。また、「空のあなたの道へ」が削除されたうえ、『刺青の男』収録の「火の玉 (The Fire Balloons)」が「2033年11月 - 火の玉」として、『太陽の黄金の林檎』収録の「荒野 (The Wilderness)」が「2034年5月 - 荒野」として、それぞれ挿入された。

火星年代記 - Wikipediaより

邦訳版は2010年に上記の改訂版を底本とした、新版がハヤカワ文庫から登場している。現在手に入るのはこちらの版であろう。

火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)

あらすじ

人類は遂に火星へに到達した。しかし火星は無人の大地では無かった。地球からの探検隊は火星人の妨害によって次々と消息を絶っていく。それでも続々と来襲する地球人の大集団に、いつしか火星人たちは駆逐されていった。植民星となった火星だが、新天地に見えたこの地もまた、地球社会の縮図でしかなかった。地球に異変が訪れた時、火星に新たな変化が訪れようとしていた。

今でも違和感なく読める

ブラッドベリ30歳の時の作品。70年以上前の作品とは思えないな。本作は火星到着の2030年1月(旧版では1991年1月だった!)から、新たな火星人の誕生を見る2056年までの27年間を、26編のショートストーリーで綴る連作短編の形式を取っている。複数のエピソードに登場する人物もいるけれど、全編を通した主人公は存在しない。あえて云うならば、火星そのものが主役というべきところだろう。

冷戦期の世相を反映

わたしにとって、本作の初読はなんと1985年であった。久しぶりに再読してみたが、第二次大戦後の社会情勢を色濃く反映した社会批判が、今でも違和感なく読めてしまうところに人類の進歩の無さを痛感させられる。こうしたアイロニカルな社会批判が嫌みにならず、全編に横溢する詩情と打ち消し合うことなく共生出来ていることころが名作の名作たる所以か。

「百万年ピクニック」のラストを完全に忘れていた自分の記憶力の無さに心から感謝。もう一回この感動を味わえるとは。

火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)

火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)

 

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