ネコショカ

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弁護士が教えるコミュニケーション術『「沈黙」の会話力』


「沈黙」することで人を動かす

2018年刊行。筆者の谷原誠(たにはらまこと)は1968年生まれの現役の弁護士。著書多数。

「沈黙」の会話力

とかく交渉術といえば、明朗快活、立て板に水でしゃべり倒す人間が有利であるように思われがちだが、実際には必ずしもそうではない。寡黙なトップセールスマンは決して珍しい存在ではない。彼らは如何にして交渉を成功させているのか、その秘密は「沈黙」にあると説くのが本書である。

目次

第一章 パワー・サイレンス(Part1) 沈黙することで成功した人々
第二章 パワー・サイレンス(Part2) 沈黙がもたらす人生の分岐点
第三章 パワー・アクション 沈黙とアクションを効果的に組み合わせる
第四章 パワー・クエスチョン 会話と交渉はすべて質問で決まる
第五章 パワー・トーク 質問と沈黙のあとで相手に影響を与える言葉の力

「沈黙」の効用は?

第一章のパワー・サイレンス(Part1)では、スティーブ・ジョブスやオバマ元大統領、キング牧師など、「沈黙」を活用して成功した人々の事例を挙げ、続く第二章パワー・サイレンス(Part2)では、「沈黙」の活用方法について述べていく。

「沈黙」の効用として、わたしが良いなと感じたのは以下の四点。

必要なことを言ったあとは、静かに沈黙していたほうが、話した内容が相手の頭と心に徐々に浸透していって、説得もしやすくなるでしょう。

p54より

沈黙を使うと、相手は不安になります。そして、「何が気に入らないのだ」と想像し、その点を補うような話をしてしまうということがあります。

p59より

沈黙は必ずしも相手に対して行使するだけのものではありません。自分の感情をコントロールするためにも、沈黙を有効に使いましょう。

p63より

重要な話をする前に、「重要な話をする」というサイン(前振り)を出しておくと、相手の意識を話に向けることができます。

p76 

言われてみると当たり前の事のように思えるのだが、これが意外と出来ない。ビジネス会話の中では、お互いがしゃべらない状況というのは、避けた方が良いのではと思いがちで、ついつい余計なコトバで隙間を埋めてしまいがちなのである。

「沈黙」の効果を高めるテクニックは?

第三章のパワー・アクションでは「しぐさ」、第四章のパワー・クエスチョンでは「質問」がキーワードになる。「沈黙」をより効果的に生かすためのテクニックが紹介されている。ラポールの概念や、5W1Hの使い方など、比較的よく聞く小ネタの数々が登場するが、これらを「沈黙」と結び付けて説いていくところが面白い。

「沈黙」の実践的な活用法とリスクは?

最終章となる、第五章パワー・トークは「沈黙」の実践的な活用法が紹介されている。

相手が話すのを聞くためには、自分は沈黙していなければなりません。相手に質問し、相手に話をさせ、自分は沈黙するのです。

p181より

ただ「沈黙」すればよいわけでは無く、まずは相手の話をしっかりと聞いて理解することが肝要だと筆者は述べている。

そして「沈黙」は使い方を誤ると、逆にコミュニケーションを大きく阻害してしまうこともある。不機嫌に見える、気難しい人物かと思われてしまうなど、リスクも当然あるのだ。

似て非なるコミュニケーション術で「不機嫌」によって、相手をコントロールする手法も存在するが、これは「沈黙」の正しい使い方ではない。単なるパワハラであり、ビジネスの場で使うのはお勧めできない。

筆者は最後にこう書いている。

沈黙は誤解されるというリスクもあります。ですから、相手への配慮を忘れないことが大切です。

p205より

 結局のところ、コミュニケーションは相手があって初めて成立するものである。であるえが故に、相手を尊重すること、疎かにしないこと、自身の利益だけを追い求めないことが大前提となってくるのであろう。相手との関係性が良好であれば良好であるほど、「沈黙」にも価値が出てくるのである。