ネコショカ

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犯人は読者!究極のトリックを描く、深水黎一郎『ウルチモ・トルッコ』


表紙を見ると犯人の顔が映る装丁!

2007年刊行。第36回のメフィスト賞受賞作品。タイトルの「ウルチモ・トルッコ」はイタリア語で究極のトリックを意味する。

ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ ! (講談社ノベルス)

既にサブタイトルにいきなり物凄いネタバレが書いてある。「犯人はあなただ!」と。カバーを見ると判ると思うけど、表1部分が鏡のようになっていてぼんやりと自分の顔が映るようになっているのだ。なかなかに凝った意欲的な装丁と言える。なにせ犯人は読者なのである。

ミステリ界の一芸入試メフィスト賞の受賞作に相応しいと言えば相応しいタイプの作品だろう。ちなみに刊行から十余年を経ているが、未だ文庫化はされていない模様(電子書籍化はされている)。

あらすじ

作家である「私」の元へある日一通の手紙が届けられる。それはミステリー界最後の不可能トリックを用いた「意外な犯人」ネタを高額で買い取って欲しいとの申し出であった。手紙の主は香坂誠一と名乗り、再三にわたり取引を要請してくるようになる。「読者が犯人」。想像を絶した不可能トリックは本当に存在するのか。「私」はその秘密を知り驚愕するのだが。

いかにして究極のトリックを実現させるのか?

ネタはすでに割れているので、いかにして超絶不可能トリック「読者が犯人」を実現させているかに興味は移る。作家のモノローグ。とある人物からの手紙。そしてその人物からの覚書。意味不明な文章が次々に出てきて、正直リーダビリティは高くないのだが、当然それらは全て意味があること。きちんと仕掛けの一部になっている。

それがおもしろいのかと問われると微妙なところではあるが、ここは我慢して最後まで読むべき。これが島田荘司だったら、社会派ネタを縦横に織り込んでハンカチ一枚みっしり泣ける話に仕上げてくるのだろうけど、さすがにこのあたりが限界か。

で、問題のオチだけど、書き手が後だしジャンケンで「実はこれが~で」みたいな、それまで明らかにしていなかった新事実を持ち出してくるのはアンフェアなんじゃなかろうか。書きようによってはもう少しうまく処理出来たような気もするけど、なんだかペテンにかけられたかのような読後感の悪さがつきまとうのが勿体ないのであった。

ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ ! (講談社ノベルス)

ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ ! (講談社ノベルス)