方向模索中の本読みBlog

書評Blogの予定だけど、現在方向性模索中。基本ネタバレありなので注意してね。

広告代理店によって操作される世界世論、高木徹「ドキュメント戦争広告代理店」

NHKスペシャルをベースとしたノンフィクション作品

ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争 (講談社文庫)

ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争 (講談社文庫)

 

2002年刊行。2000年の10月に放映されたNHKスペシャル「民族浄化~ユーゴ・情報戦の内幕~」をベースにしたノンフィクション作品。筆者はNHKのディレクターで、本作により第一回新潮ドキュメント賞、第24回講談社ノンフィクション賞をダブル受賞している。

ユーゴスラヴィア内戦におけるセルビアの悪玉イメージを決定づけたのは、実際に現地で行われたことの是非や戦争の勝ち負けではなく、アメリカのPR会社の存在だったという衝撃的な内容となっている。

内容はこんな感じ

ユーゴスラヴィア紛争は冷戦後最悪の内戦となった。独立間もないボスニア・ヘルツェゴビナは国際社会からの支持を勝ち取るためにアメリカのPR会社と契約を交わす。それは情報操作によるもう一つの戦争の始まりを意味していた。対セルビア戦の命運を分けた情報戦の顛末を描きながら、もはや必要不可欠の存在となりつつあるPR会社の実態について迫っていく。

アメリカのPR会社がユーゴ紛争のプロパガンダを主導

流すべき情報と、流してはいけない情報を取捨選択し、効果的に実力者にそれを届ける。映像映えしそうな人間をスポークスマンに仕立て上げ、服装、喋り方、話す内容に至るまで徹底的に演出しサポートしていく。

政治の世界でも、興業の世界でも当たり前のようにやっているプロモーション活動だが、それが戦争の局面においても同様の事が行われていた。言うなれば、電通や博報堂みたいな会社が全社をあげて、戦争の情報戦サポートをしているような状態だろうか。

本来であれば国家機関が行うようなプロパガンダ活動を民間会社が担い、なおかつ他国の仕事も平気で受けるというのは、さすが超大国アメリカ。一昔前の共産圏だったら死刑なのでは?PR会社は形を変えた現代の死の商人でしか無いわけだが、グローバル化が進む一方の世界情勢の中で、経験豊富な専門家の需要はこれからも減ることは無いだろう。筆者曰く、日本の外務省はこの手のプロパガンダ活動が致命的に不得手であるらしい。喜ぶべきことなのか嘆くべきなのか、なんとも難しいところである。