「西の善き魔女」シリーズの三作目
オリジナルの中央公論社版C★NOVELSファンタジア版は1998年刊行。その後2003年版に新装版にリニューアル。
その後、2001年に愛蔵版の単行本シリーズが出たり。
2005年に中公文庫版が出たり。
さらに、2013年に角川文庫版が出たり、様々な版が流通しているややこしいシリーズある。とはいえ、2020年現在で買うなら角川版なのかな。
あらすじ
フィリエルは遂に首都メイアンジュリーへと足を踏み入れた。ルアルゴー伯の庇護を受け、王宮ハイラグリオンでの社交界へのデビューを飾った彼女は周囲の注目を浴びる。王位への野心を抱くリイズ公爵の急接近は何を意味するのか。一方、王立研究所の一員となったルーンも権力を巡る血なまぐさい陰謀に巻き込まれていく。
宮廷編に突入
胡散臭い公爵は寄ってくるし、伯爵の息子にはプロポーズされるしでいきなりモテモテ。フィリエルは現女王の次女の娘という設定。彼女の母親は女王の意に染まぬ結婚をしていてその際に継承権を剥奪されている。従ってフィリエルは女王の血は引いているものの現時点では女王にはなることが出来ない人間なのだが、係累になっておいて損は無しということでいろいろな人間が近づいてくるわけだ。
実際に王位を争っているのはフィリエルにとって従兄弟にあたる現女王の長女の娘二人。それがレアンドラとアデイルの姉妹なんだけど、光と影、動と静、改革と保守って様相で対照的な存在として描かれていて面白い。これまで描かれてこなかった女系国家グラールの秘密も少しずつ明らかになってきているが、未だ多くの謎を秘めた世界の構造もとても魅力的だ。
フィリエルとルーンの仲が進展?
ようやく恋愛の形を取り始めたフィリエルとルーンの仲はこの巻で怒濤の急展開。盛り上がるかに見せておいて、一気に悲劇的な展開へともっていくストーリーテリングの冴えは見事。最後にフィリエルが取った選択は、ちょっと男の読者には理解出来ない恋する乙女ならではの決断で、好き嫌いが分かれるんじゃないだろうか。まあ、この程度で驚いているようではこの先は読めないわけだけど。