「西の善き魔女」シリーズ最後の作品
2003年刊行作品。時間軸的には本編5巻の後のお話。つまり一番最後に読むべきなのがこの巻ということになる。
外伝2巻のあとがきで「外伝はこれで打ち止めって」書いてあったけど、どうしても書きたかったの今回のお話であるらしい。故に外伝2巻との刊行間隔が三年もある。
単行本サイズの愛蔵版(第四巻)は2002年に刊行。これまで愛蔵版は、元シリーズ二冊分を一冊に合本化して成立してきたので、従来の巻と比べると、どうしても第四巻はページ数が足りない。それゆえに、追加エピソードが必要になったという側面もあるようだ。
中公文庫版は2005年に刊行。こちらでは正編、外伝の区別はなくなっており、最終第八巻という体裁になっている。
そして2015年に角川文庫版が登場。こちらもシリーズ最終、第八巻の扱いである。
あらすじ
グラールに迫りつつあった脅威はひとまず去った。しかし世界の謎は未だ残されたまま。異端ヘルメス党が依然として異端審問官に追われる立場であることに変わりはなかった。ルーンはふたたび世界の果ての壁へと旅立ち、そしてフィルエルは一路、北の塔を目指し行動を開始する。古き賢者を抹殺し、新たなる世界の判定を得るために……。
最後はやはりフィリエル
今回はもともとのヒロイン、フィリエルが主人公。このキャラクター、無理を通して道理を吹っ飛ばす、台風の目のような存在なので、やはり存在感が圧倒的。理屈が通用しないからもう無敵である。
シリーズ最後のお話とはいえ、全ての謎が明らかになるわけでもないし、誰が女王になるか決まるわけでもない。最終巻としてのカタルシスが得られるような内容にはなっていないのは残念。せっかく追加エピソードとして書いたのであれば、キッチリ白黒つけて欲しかった。
中公文庫版や角川文庫版ではシリーズ最終の八巻とされているので、それなりの「完結感」を期待してしまうのだが、もともとは「外伝の第三巻」であったことを考えると致し方のないところだろうか。
アニメ版も放映されていた
『西の善き魔女』のアニメ版は2006年に放映。2005年に文庫化されたのは(中公文庫版)は、もしかしてこのアニメ化への布石だったか?
1クール、全13話構成で、ちょっと詰め込み過ぎの感が強い。かなり駆け足の展開。キャスティングは以下の通り。
フィリエル:折笠富美子
ルーン:平田宏美
アデイル:斎藤千和
レアンドラ:田中理恵
マリエ:藤村 歩
ロット:石田 彰
ユーシス:谷山紀章
リイズ:中田譲治