ネコショカ

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蘇我氏も平家も滅亡していなかった!『女系図でみる驚きの日本史』


蘇我氏も平家も滅亡していなかった!

2017年刊行。筆者は1961年生まれ。歴史系の著作多数。以前に読んだ『昔話はなぜ、お爺さんとお婆さんが主役なのか』が面白かったので、今回も手に取って見た次第。

女系図でみる驚きの日本史 (新潮新書)

大切なのは「胤より腹」。家は絶えても血は残る。歴史を女系図でたどると、日本史の見え方が変わってくるよ!という興味深い一冊。

目次はこんな感じ

あらすじに替わって、目次をご紹介。かなりそそられる内容である。

第一講 平家は本当に滅亡したのか
第二講 天皇にはなぜ姓がないのか
第三講 なぜ京都が都になったのか
第四講 紫式部の名前はなぜ分からないのか
第五講 光源氏はなぜ天皇になれなかったのか
第六講 平安貴族はなぜ「兄弟」「姉妹」だらけなのか
第七講 「高貴な処女」伊勢斎宮の密通は、なぜ事件化したのか
第八講 貴族はなぜ近親姦だらけなのか
第九講 頼朝はなぜ、義経を殺さねばならなかったのか
第十講 徳川将軍家はなぜ女系図が作れないのか

女系図から見えてくるもの

女系図とは読んで字のごとく、母親が誰なのかに着目して書かれた系図のことである。男系は絶えていても、実は蘇我氏は後の藤原氏に血筋が続いているし、壇ノ浦で滅亡したはずの平家は、現在の天皇にまで血統を繋げている。

昔の史料では女性は軽視されがちで、系図をたどってみても名前すら残っておらず、ただ「女」とだけしか書かれていないことも多い。しかしこの名もなき女性たちが、一族の盛衰に、実は重要な役割を果たしていたことを本書では解き明かしていく。

平安貴族の乱脈ぶりがすごい

女系の力がもっとも強く発揮されるのは平安時代、それも半ばくらいまでの頃である。通い婚で子供は母親の家で育てられた時代、母方の一族の権勢が子の将来を左右した。性的な規範の緩い時代故に、この時代の系図はぐっちゃぐちゃで、近親婚や、不倫の類、二股三股も当たり前といった感じで、現代人の感覚で読むとあたまがクラクラしてくる(笑)。思わぬ人物同士に意外な血縁関係があったりして、このあたりの系図を読み解いていくのがかなり楽しい。

外戚の影響を排したかった徳川幕府

歴史上、母方の一族が権力を専横した例は枚挙に暇を得ない。摂関政治はまさに藤原氏の外戚としての権威に拠るものであるし、鎌倉幕府における北条氏、室町幕府における日野氏の例も有名であろう。

本作で筆者は、各時代毎に権力者が正妻から生まれてきた割合を調べているのだが、平安期の摂関が77%、鎌倉将軍が67%、同執権が56%、室町将軍が47%と、時代を降るつれて正妻腹率が低下、そして徳川将軍に至っては20%にまで低下してしまうのである。

徳川将軍は高貴な出自である正妻からはほとんど生まれておらず、身分の低い側室から生まれた事例が多いのである。側室の身分が低すぎる場合も多く、この場合当然外戚は権威の持ちようがない。これは歴史の経緯を踏まえた、周到な外戚対策であったのかもしれない。

もっとも、徳川将軍家の正室は、五摂家か宮家出身の女性に限られていたが、例外もあった。11代家斉と、13代家定(もちろん篤姫だ)の正室はよりにもよって島津家の姫なのである。外戚の影響を排そうとしてきた徳川家にあって、最後の最後で大奥で権勢をふるったのが島津家の女性であったという事実は、なんとも歴史の皮肉という気がしないでもない。

下ネタオッケーの人ならおススメ!

歴史好きの方であれば、おおそうだったのか!とニヤニヤ出来そうな小ネタが満載で楽しめる一冊ではあるが、いかんせん惜しむらくは描写が下品なのが、本作の欠点でもありウリとも言うべき点であろう。この筆者は他の作品でも概してこんな感じなので、これが芸風なのだと思われる。

本書の描写は前半は比較的、おとなしめなのだが、中盤を過ぎたあたりから、俄然エロモード全開になってくる。特に、平安期の悪左府こと藤原頼長のドロドロの男色系図が出てくるあたりはもはや喜色満面、筆者ノリノリだなといった面持ちである。書いていて楽しかったんだろうと思う。

女系図でみる驚きの日本史 (新潮新書)

女系図でみる驚きの日本史 (新潮新書)

 

ついでに読むならこちらもおススメ

本書に登場する「高貴な処女」伊勢斎宮の密通事件は、以前に取り上げた『斎宮-伊勢斎王たちの生きた古代史』でも紹介されている。宜しければこちらも是非!

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