ネコショカ

小説以外の書籍感想はこちら!
2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

滝本竜彦『ネガティブハッピー・チェーンソーエッジ』 平凡な男子高校生と美少女戦士、そしてチェーンソー男

本ページはプロモーションが含まれています


滝本竜彦のデビュー作

2001年作品。作者の滝本竜彦(たきもとたつひこ)は1978年生まれの小説家。本作で第5回角川学園小説大賞特別賞を受賞し作家デビューを果たした。表紙絵はイラストレータの安倍吉俊(あべよしとし)によるもの。

ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ

2004年に角川文庫版が出ている。

滝本竜彦の既刊は以下の通り。作家としてのキャリアは20年を超えるが、寡作のため著作は七作しかない。

  • ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ(2001年/角川書店)
  • NHKにようこそ!(2002年/角川書店)
  • 超人計画(2003年/角川書店)
  • 僕のエア(2010年/角川書店)
  • ムーの少年(2011年/角川書店)
  • ライト・ノベル(2018年/角川書店)
  • 異世界ナンパ 無職ひきこもりのオレがエルフや猫人間や幼女竜に声をかけてみました(2021年/角川書店)

角川学園小説大賞って?

ちなみに、角川学園小説大賞は1997年~2010年にかけて存在していたライトノベルの新人賞。

って、角川が別にやっているスニーカー大賞とはどう違うの?というと、審査するのが編集部だけであること(スニーカーの方は有名作家の審査がある)。応募条件が25歳未満であることくらい?テイストは違うけど、乱歩賞に対するメフィスト賞くらいの気持ちで考えておけばいいのだろうか。

本章の主な出身者は滝本竜彦をはじめ、高殿円(たかどのまどか)、岩井恭平(いわいきょうへい)、十文字青(じゅうもんじあお)、日日日(あきら)

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★★(最大★5つ)

ゼロ年代初期の社会世相、時代の雰囲気を知りたい方、追体験したい方。滝本竜彦のデビュー作を読んでみたいと思っていた方。タイトルと表紙イラストに惹かれた方。平凡な毎日に飽き飽きしている方におススメ!

あらすじ

山本陽介はごくごく平凡な一介の男子高校生だ。しかし彼が恋した少女、雪崎絵理は非凡な運命を背負っている。チェーンソーを振り回し暴れ狂う謎の男を相手に日夜戦い続ける美少女戦士なのだ。退屈な日常からの脱却のため、はたまた恋のため、絵理と共にチェーンソー男との戦いに挑む、陽介の奇妙な高校生活を綴る。

ここからネタバレ

時代の切り取り方が巧い

この設定にしてこの表紙(安倍吉俊はこの時期流行っていた作家という認識)。しかも学園小説大賞ってことなので、いかにもライトノベルテイストな、学園アクション活劇なのかと思って読んでみたらこれが大間違い。正体不明の敵と戦う美少女戦士を、生暖かく下心満々で見守り続ける男子高校生の物語。無気力、勉強ダメ、スポーツダメ、と、三拍子揃った当世風ダメ主人公の平凡な日々に訪れた非日常の世界を描く。

作者が1978年生まれの人間というだけあってか、時代の雰囲気の切り取り方がなかなか良いのだ。かつて上遠野浩平(かどのこうへい)作品で感じた、「ああ、それ、あるある」ってなシンパシーに近いか。まるで格好良くない主人公なのに、ラストでもたらしてくれたカタルシスが思いの外深かったのには我ながら驚いた。

コミック版もある

本作は角川のコミック誌「コミックス・エース」に連載され、2008年に単行本化されている。全二巻。作画は佐伯淳一(さえきじゅんいち)によるもの。

 

映画化もされている

また、2008年に映画化もなされている。監督は北村拓司(きたはまたくじ)。山本陽介役を市原隼人、雪崎絵里役を関めぐみが演じている。市原隼人若っ!

同時期のライトノベル作品ならこちらもおススメ