ネコショカ

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2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『ポストコロナのSF』コロナ後を見据えたSF作家19人の想像力

エスエフ作家の想像力が試されている 先日、はてなのアノニマスダイアリ(通称増田)にこんな投稿があがっていた。 SF的想像力で扱われるパンデミックってだいたい「感染者の9割が死ぬようなヤバいウイルスが蔓延して人類文明崩壊」みたいな話ばかりで、 新…

『酒仙』南條竹則 呑んで呑んで呑みまくる酩酊小説

南條竹則のデビュー作 1993年刊行作品。作者の南條竹則(なんじょうたけのり)は1958年生まれ。本作で第五回の日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞を受賞し、作家デビューを果たしている。 本業の英文学者(現在は作家専業だが)として数多くの翻訳書の実績…

『時をかける少女』筒井康隆 時間モノのド定番

56年前に書かれた作品! 『時をかける少女』の初出は1965年の「中三コース」(←今はもう亡い)の十一月号。なんと50年以上も前の作品なのだ。昔の記録を調べてみたところ、自分がこの作品を初めて読んだのは1983年の6月13日。1983年の映画版(大林宣彦監督)…

『グラーフ・ツェッペリン 夏の飛行』高野史緒 拡張現実(AR)がつなげる時間と空間

Amazon Publishingから刊行された作品 本作は2018年刊行。Amazon Publishing(prime対応中)から出ているので、現時点では電子書籍のみで出されている作品かと思われる。これからはプロの作家でもこういうのが増えていくのかな。Amazon記載によると、紙の本…

『本と鍵の季節』米澤穂信 ダブル探偵!二人の男子高生が活躍するミステリ

米澤穂信、二年ぶりの新作だった 集英社の小説誌「小説すばる」に2012年~2018年にかけて掲載されていた作品を加筆修正。更に書下ろし一篇を加えて上梓された作品。 一作目となる「913」は2012年刊行の集英社文庫創刊35周年記念のアンソロジー『いつか、君へ…

『天地人』火坂雅志 2009年NHK大河ドラマの原作小説

大河ドラマの原作小説 2003年から2006年にかけて新潟日報他、複数の新聞紙面に掲載された作品を加筆修正の上でまとめたもの。2006年刊行。単行本版は日本放送出版協会から刊行されている。2008年NHK大河ドラマの原作小説である。天の巻、地の巻、人の巻の三…

『夏の滴』桐生祐狩 少年の日のひと夏の冒険、、だが

桐生祐狩のデビュー作 2001年刊行作品。作者の桐生祐狩(きりゅうゆかり)は1961年生まれ。本作『夏の滴』が、第8回の日本ホラー小説大賞で長編賞を受賞して作家デビューを果たしている。プロフィールを拝見する限り、もともとは演劇畑の方である様子。 夏の…

『青ノ果テ 花巻農芸高校地学部の夏』伊与原新 宮沢賢治×ロードノベルの魅力

ブレイクしそうな伊与原新作品 2020年刊行作品。作者の伊与原新(いよはらしん)は1972年生まれ。第30回横溝正史ミステリ大賞を受賞した、2010年刊行の『お台場アイランドベイビー』がデビュー作。その後『月まで三キロ』では第38回新田次郎文学賞を受賞。『…

『木洩れ日(こもれび)に泳ぐ魚』恩田陸 

別れを決めた男女の最後の夜を描く 2007年刊行。「婦人公論」2006年1月22日号から2007年2月22日号にかけて連載された作品を加筆修正の上で単行本化したもの。この年2007年は恩田作品が出ていたように記憶していたが、実は長編作品はこれ一作だった。意外だな…

『君がいる風景』平谷美樹 自らの無力さ故に死なせてしまった女の子を救いたい!

表紙のテンションが20世紀だけど、2002年の作品 2002年刊行。作者の平谷美樹(ひらやよしき)は1960年生まれ。名前で勘違いしがちだけど男性作家。学校についての描写に妙にリアリティがあると思ったら、元々は中学校教師であったらしい。なるほどね。現在は…

『天涯の砦』小川一水 遭難した宇宙船に残された10人のサバイバル

ベストSF2006国内部門第三位 2006年刊行。ベストSF2006国内部門第三位の作品。ハヤカワSFシリーズ・Jコレクションレーベルからの登場であった。 天涯の砦 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション) 作者:小川 一水 早川書房 Amazon ハヤカワ文庫版は2009年に刊行…

『NO推理、NO探偵?』柾木政宗 第53回メフィスト賞受賞作

柾木政宗のデビュー作 2017年刊行作品。柾木政宗の第一作。第53回のメフィスト賞受賞作品である。作者の柾木政宗(まさきまさむね)は1981年生まれ。ワセダミステリクラブ出身。 『NO推理、NO探偵?』には、2019年に続篇的な存在の『ネタバレ厳禁症候群 ~So …

『アイオーン』高野史緒 暗黒の中世を描く歴史改変エスエフ

暗黒の中世を生きる 2002年刊行。高野史緒(たかのふみお)の六作目。ベストSF2002の国内部門で13位に入った作品。「SFマガジン」に1999年から2002年にかけて散発的に掲載された作品五編に書き下ろし一編、そしてプロローグとエピローグを加筆したのが本書。…

『セリヌンティウスの舟』石持浅海 人を信じるということは……

石持浅海の六作目 2005年刊行作品。石持浅海(いしもちあさみ)作品としては、『アイルランドの薔薇』『月の扉』『水の迷宮』『BG、あるいは死せるカイニス』『扉は閉ざされたまま』に続く第六作となる。 セリヌンティウスの舟 (カッパノベルス) 作者:石持 …

『黄金旅風』飯嶋和一 希代の朱印船貿易家の物語

末次平左衛門(二代目平蔵)の物語 2004年刊行。飯嶋和一(いいじま かずいち)の五作目の作品。 黄金旅風 作者:飯嶋 和一 小学館 Amazon 小学館文庫版は2008年に登場している。 飯嶋和一は1988年デビューなのに、本書刊行時の2004年でようやく五作目!なん…

ゴーストハント(悪霊)シリーズ新旧読み比べ(7)『悪霊だってヘイキ!』と『ゴーストハント7』

ゴーストハント(悪霊)シリーズ新旧読み比べ最終回! 長々とお伝えして来た小野不由美のゴーストハント(悪霊)シリーズを、旧作、新作両方読んでレビューする企画も遂にラスト!本日ご紹介するのはシリーズ第七作『悪霊だってヘイキ!(ゴーストハント7)…