ネコショカ

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2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

『鬼女の都』菅浩江 京都×同人の世界を描いた本格ミステリ

菅浩江初の本格ミステリ 1996年刊行作品。1989年に『ゆらぎの森のシエラ』でデビューして以来、エスエフ、ファンタジー寄りの作品を手掛けてきた菅浩江が、初めて書いた本格推理小説が本作である。ちなみに、カバーの袖には法月綸太郎の賛辞まで入っていた。…

『老ヴォールの惑星』小川一水 硬軟取り混ぜた第一短編集

小川一水の初期作品集 2005年刊行。ベストSF2005国内部門第一位の作品。小川一水(おがわいっすい)としては、初の短編集となる。 初出は「ギャルナフカの迷宮」が同人誌「Progressive25」。「老ヴォールの惑星」「幸せになる箱船」が「SFマガジン」。最後の…

『天槍の下のバシレイス まれびとの棺』伊都工平 生活水準が1960年代レベルまで退行した世界での学園バトルもの

伊都工平の第二作 『天槍の下のバシレイス(てんそうのしたのバシレイス)』は2004年刊行作品。今は亡きメディアワークスのライトノベル小説誌「電撃hp」のvol28~31に連載されていた作品に追加短編三本。更に最終章の書き下ろしが追記されたもの。上下巻…

『カント・アンジェリコ 』高野史緒 カストラートの歌声と、絶対王政時代のハッキングバトル

高野史緒の第二作 1996年刊行作品。第6回日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となった『ムジカ・マキーナ』に続く、高野史緒(たかのふみお)の第二作。 単行本版の刊行から二十年近く、長期にわたって入手困難な状態が続いていたが、講談社文庫版が2013…

『感傷戦士』『漂泊戦士』森雅裕の五月香ロケーションシリーズとおススメ作品

森雅裕が描く戦闘美少女モノ 森雅裕(もりまさひろ)は1953年生まれの作家。東京藝術大学の美術学部卒。 デビュー作は1985年の『画狂人ラプソディ』。この作品は第5回の横溝正史ミステリ大賞で佳作入選。続く、『モーツァルトは子守唄を歌わない』では、第31…

『バッテリー』あさのあつこ 全六巻の感想まとめ!

各巻ごとに書いていたあさのあつこの『バッテリー』シリーズ全六巻の感想を、ひとつの記事に集約化しました。 シリーズ累計発行部数1,000万部越えの超ベストセラー おススメ度、こんな方におススメ! 『バッテリー』あらすじ 『バッテリーII』あらすじ 『バ…

『首鳴き鬼の島』石崎幸二 希少な「ミリア&ユリシリーズ」ではない作品

唯一の非講談社系作品 石崎幸二(いしざきこうじ)は、2000年の『日曜日の沈黙』で第18回メフィスト賞を受賞して作家デビュー。その後、2001年に『あなたがいない島』『長く短い呪文』、2002年には『袋綴じ事件』を上梓したが、その後しばらく新刊が出ていな…

『後宮の烏6』白川紺子 新展開!烏漣娘娘の半身を求めて

※2022/05/06追記 最終巻『後宮の烏7』の感想を書きました。 シリーズ累計90万部突破! 2021年刊行作品。『後宮の烏』『後宮の烏2』『後宮の烏3』『後宮の烏4』『後宮の烏5』に続く、『後宮の烏(こうきゅうのからす)』シリーズの六作目にあたる。 四巻発売…

「はてなブロガーに10の質問」と書評(読書)ブログ

『三体Ⅲ』を読んでいて(相変わらず超長い!)今週は読了本が少ないので、はてなブログ10周年特別お題「はてなブロガーに10の質問」に乗っかってみます(こういう時はですます調)。 なお、文字だけだと間が持たないので、適宜ネコ画像を挿入して場を和ませ…

『E.G.コンバット』秋山瑞人、未完のデビュー作、『E.G. Final』はいつ出るんだ~

秋山瑞人、未完の大作「E.G.コンバット 」1~3のあらすじと感想。完結編Finalについての情報についても書きました。

『魔導物語』『新☆魔導物語』『超☆魔導物語』山本剛 三部作で懐かしのアルルたちに再会

コンパイルがまだ元気だったころの「魔導物語」ノベライズ 本日ご紹介するのは、大昔の(20年以上前だ)ゲームノベライズ「魔導物語」三部作。あまりに有名なゲームタイトル『ぷよぷよ』。そのベースとなったソフト『魔導物語』をノベライズしたものが本シリ…

『九十九十九(ツクモジュウク)』舞城王太郎によるJDCトリビュート作品

清涼院流水のJDCシリーズの一環として書かれた作品 『九十九十九(つくもじゅうく)』2003年刊行作品。『煙か土か食い物』『暗闇の中で子供』『世界は密室でできている。』『阿修羅ガール』に続く、舞城王太郎の第五作にあたる。 九十九十九 (講談社ノベルス…

『死の記憶』トマス・H・クック 平穏なままに年齢を重ねていくことへの怖れ

過去から蘇る「死の記憶」 1999年刊行作品。オリジナルの米国版は1993年に刊行されている。ちなみに、原題はまさにそのまんまな『Mortal Momory』である。 書影の帯を見て頂くとわかると思うが、『緋色の記憶』のトマス・H・クックとある。つまり日本国内では…

『さよならも言えないうちに』川口俊和 「コーヒーが冷めないうちに」シリーズの四作目!

シリーズ、三年ぶりの新作 2021年刊行作品。『コーヒーが冷めないうちに』『この嘘がばれないうちに』『思い出が消えないうちに』に続くシリーズ四作目。三年ぶりの新作である。川口俊和(かわぐちとしかず)の小説作品としては本作が四冊目。この人、このシ…

『コンビニなしでは生きられない』秋保水菓 第56回メフィスト賞受賞作品

秋保水菓のデビュー作 2018年刊行作品。筆者の秋保水菓(あきうすいか)は1994年生まれのミステリ作家。本作『コンビニなしでは生きられない』で、第56回のメフィスト賞を受賞し、作家としてデビューしている。 講談社ノベルス版の表紙イラストはukiが担当。…

『鉄(くろがね)コミュニケイション』秋山瑞人の第二作はノベライズの域を超えた傑作!

電撃G's文庫から電撃文庫に移籍した作品 1998年刊行。『鉄(くろがね)コミュニケイション』は秋山瑞人(あきやまみずひと)の第二作品である。 最初は電撃文庫で、美少女系のノベライズ等を専門に出していた電撃G's文庫から世に出ている。それがこちら。1巻…

『夜の記憶』トマス・H・クック 幼き日の心の闇に向き合うこと

過去と現実、虚構と真実が混ざり合う幼い日の物語 本日ご紹介するのはトマス・H・クックのこちらの作品。クック作品を紹介するのは前回の『緋色の記憶』に続いて二回目となる。 2000年刊行。オリジナルの米国版は1998年刊行。「このミステリがすごい!2000」の…

『クリスタルサイレンス』藤崎慎吾 ベストSF1999国内部門第1位作品

SF

藤崎慎吾のデビュー作品 1999年作品。単行本版は朝日ソノラマから刊行。早川書房のベストSF1999(「SFが読みたい2000」)では『グッドラック 戦闘妖精・雪風』を抑えて国内部門第1位に輝いている。 作者の藤崎慎吾(ふじさきしんご)は1962年生まれの小説家…

『老虎残夢』桃野雑派 武俠小説×本格ミステリ×歴史小説×〇〇

第67回江戸川乱歩賞受賞作品 2021年刊行作品。タイトルの『老虎残夢』は「ろうこざんむ」と読む。作者の桃野雑派(もものざっぱ)は1980年生まれ。本作にて第67回江戸川乱歩賞を受賞し、作家デビューを果たしている。同時受賞作は伏尾美紀(ふせおみき)の『…

『薔薇のなかの蛇』恩田陸 理瀬シリーズ17年ぶりの最新作はイギリスが舞台!

「理瀬」シリーズの実質的な三作目! 2021年刊行作品。『麦の海に沈む果実』『黄昏の百合の骨』に続く、「理瀬シリーズ」の実質的な第三作目にあたる。前作の『黄昏の百合の骨』が登場したのが2004年だったので、なんと17年ぶりのシリーズ最新作ということに…

『DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件』西尾維新 南空ナオミとL(エル)メインのノベライズ

本日は西尾維新が手掛けた、数少ないノベライズ作品として『DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件』をご紹介したい。 西尾維新による『DEATH NOTE』ノベライズ 本作は2006年刊行。言わずとしれたベストセラーコミック『DEATH NOTE(デスノ…

『失はれる物語』乙一 初期乙一のベストアルバム的な作品集

白乙一の初期代表作を収録 2003年刊行作品。既刊であった『きみにしか聞こえない』『さみしさの周波数』『失踪HOLIDAY』の中から五作品を抜粋、更に書き下ろしを一編(「マリアの指」)を加えて、単行本化したのが本書。 各編の初出は以下の通り。 『きみに…

『悪夢制御装置』はライトノベル×ホラーの越境アンソロジー

スニーカー・ミステリ倶楽部のアンソロジーシリーズ第五弾 2002年刊行。短命に終わったスニーカー・ミステリ倶楽部だが、ライトノベルユーザに向けのミステリ啓蒙本として、一般作家によるアンソロジー(短編集)を数冊刊行していた。 ラインナップは以下の通…

『沈黙』古川日出男 神秘の旋律ルコの魅力

古川日出男の三作目 1999年刊行作品。『ウィザードリィ外伝II 砂の王(1)』『13』に続く、古川日出男(ふるかわひでお)の第三作。『ウィザードリィ外伝II 砂の王(1)』は著作にカウントされないこともあるので、そう考えると第二作ということになる。いず…