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2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

SF

『光の帝国』『蒲公英草紙』『エンド・ゲーム』恩田陸の「常野物語」シリーズをまとめて紹介!

本日は恩田陸、初期の人気シリーズ「常野(とこの)物語」三作の感想をまとめてお届けしたい。 「常野(とこの)物語」シリーズの読む順番 恩田陸の「常野物語」シリーズの既刊は以下の三作。 光の帝国 常野物語(1997年) 蒲公英草紙(たんぽぽそうし) 常…

『[少女庭国]』矢部嵩 壮大な変奏曲、少女たちに課せられた「卒業試験」

矢部嵩の第四作 2014年刊行作品。早川書房のハヤカワSFシリーズJコレクションからのリリースだった。2013年の『魔女の子供はやってこない』に続く、矢部嵩(やべたかし)の第四作となる。ちなみにタイトルの『[少女庭国]』は「[しょうじょていこく]」と読む…

『白い病』カレル・チャペック コロナ禍の今だから読みたい疫病下の世界

疫病が蔓延する世界を描いた戯曲 『白い病(Bílá nemoc)』は、チェコスロバキア(当時)の作家カレル・チャペック(Karel Čapek)が1937年に発表した戯曲である。 岩波文庫版には2020年9月とごく最近の登場である。内容的にコロナ禍の昨今、世に送り出すには…

『輝く断片』シオドア・スタージョン 河出の「奇想コレクション」が面白い!

SF

河出書房新社「奇想コレクション」中の1冊 2005年刊行。河出書房新社が刊行していた「奇想コレクション」の第六集にあたる。 「奇想コレクション」は2003年から2013年にかけて、河出書房新社が刊行していた叢書で、海外のエスエフ、ミステリ作家らによる日…

『サマー/タイム/トラベラー』新城カズマ 夏に読みたい青春エスエフ小説

夏に読みたい時間モノ 2005年刊行作品。第37回星雲賞日本長編の部の受賞作である。作者の新城(しんじょう)カズマは1991年から富士見ファンタジア文庫で上梓された『蓬莱学園』シリーズがデビュー作(懐かしい)。 本作は、タイトルの通り「夏」に読んでお…

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』アンディ・ウィアー 人類の存亡をかけてミッションインポッシブルに挑んだ男

2021年を代表するエスエフ作品 オリジナルの米国版は2021年5月の刊行で、原題は『Project Hail Mary』とそのまんま。邦訳版は同年12月に刊行されている。一年を経ずにリリースされるとは早川書房も仕事が早い!訳者は小野田和子(おのだかずこ)。カバーイラ…

『塩の街』有川浩(ひろ)のデビュー作と終末モノのお作法

有川浩(ひろ)のデビュー作は 電撃ゲーム小説大賞受賞作品 2004年刊行。第10回電撃ゲーム小説大賞の大賞受賞作品。今をときめく有川浩(ひろ)のデビュー作である。現在は「有川ひろ」名義で活動されているのだが、本稿では刊行当時の名義「有川浩」にて記…

『白の闇』ジョセ・サラマーゴ ノーベル賞作家が描く視力を奪う感染症の恐怖

ノーベル文学賞受賞者が描く感染症小説 筆者のジョセ・サラマーゴ(José de Sousa Saramago)は1922年ポルトガル生まれの作家。1998年にはノーベル文学賞を受賞。2010年に87歳で没している。 『白の闇』のオリジナル版は1995年刊。原題は『Ensaio sobre a ceg…

『やさしさを忘れぬうちに』川口俊和 累計140万部突破「コーヒーが冷めないうちに」シリーズの第五弾!

「コーヒーが冷めないうちに」シリーズの五作目! 2023年刊行作品。『コーヒーが冷めないうちに』『この嘘がばれないうちに』『思い出が消えないうちに』『さよならも言えないうちに』に続く、「コーヒーが冷めないうちに」シリーズの五作目に相当する。前作…

『アース・ガード ローカル惑星防衛記』「小川一水」としてのデビュー作

「小川一水」名義で書かれた最初の作品 1998年刊行作品。1996年に第6回ジャンプ小説大賞で大賞を受賞した、河出智紀名義の『まずは一報ポプラパレスより』に続く二作目の作品である。 本作から筆名が小川一水(おがわいっすい)に変わっている。つまり小川一…

『果しなき旅路』ゼナ・ヘンダースン ひっそりと暮らす異能の人々の物語

往年の名作、連作エスエフ短編集 作者のゼナ・ヘンダースン(Zenna Chlarson Henderson)は1917年生まれ、1983年に亡くなられたアメリカ人エスエフ作家である。 教職の傍ら執筆を続けた極めて寡作な作家で、この作品は1952年から1959年にかけてアメリカの「フ…

『ふわふわの泉』野尻抱介 某超有名SF作品へのオマージュ

タイトルはふわふわしているけど内容はハードSF 2001年刊行作品。最初の文庫版はライトノベルレーベルのファミ通文庫から登場。2002年星雲賞の日本長編部門を受賞。ハヤカワのベストSF2001国内部門の6位にランクインしている。作者の野尻抱介(のじりほうす…

『ドゥームズデイ・ブック』コニー・ウィリスの名作タイムトラベルSF

ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞、三冠に輝いた名作 オリジナルのイギリス版は1992年刊行。原題は『Doomsday Book』。 日本では1995年に単行本版が登場。 ドゥームズデイ・ブック (夢の文学館) 作者:コニー ウィリス 早川書房 Amazon ハヤカワ文庫版は…

『残月記』小田雅久仁 月はそれぞれの人間の心の闇に昇ってくる

日本SF大賞受賞作 2021年刊行作品。双葉社の小説誌「小説推理」に2016年~2019年にかけて、散発的に掲載されていた三編の作品をまとめたもの。 作者の小田雅久仁(おだまさくに)は1974年生まれの小説家。2003年に『影舞(未刊)』が、第15回日本ファンタジ…

『ピニェルの振り子 銀河博物誌1』野尻抱介 19世紀の人類が宇宙旅行を可能にしたら?

魅力的な設定のエスエフ作品 2000年刊行作品。作者の野尻抱介(のじりほうすけ)は1961年生まれ。 1992年に「クレギオン」シリーズでデビューして以来、長らく富士見系の作家であった野尻抱介が初めてソノラマ文庫に書き下ろした作品が本作である。早川書房…

『トリニティ・ブラッド』吉田直 未完の大作、全12巻+αを一気にご紹介

吉田直、未完の大作 「トリニティ・ブラッド」シリーズは2001年~2004年に、角川スニーカー文庫から刊行されていたライトノベル作品だ。作者の吉田直(よしだすなお)は1969年生まれ。1997年に『ジェノサイド・エンジェル 叛逆の神々』にて第二回のスニーカー…

『タイム・リープ あしたはきのう』高畑京一郎 平成の名作が新装版で再文庫化!

平成の名作が復刊 作者の高畑京一郎(たかはたきょういちろう)は1967年生まれのライトノベル作家。第1回電撃ゲーム小説大賞の金賞を受賞した、1994年の『クリス・クロス 混沌の魔王』がデビュー作。電撃ゲーム小説大賞系の作品でありながら、いきなり文庫で…

『沈黙のフライバイ』野尻抱介 国産ハードSF小説の良短編集

「ベストSF2007」国内第三位の作品 2007年刊行作品。作者の野尻抱介(のじりほうすけ)は1961年生まれのエスエフ作家。「ベストSF2007」の国内第三位作品。1998年から2006年にかけて「SFマガジン」「SFオンライン」に発表された四編に書き下ろし一編を加えて…

『フリーランチの時代』小川一水 『時砂の王』外伝を含む、第二短編集

ヴァラエティに富んだ内容の短編集 2008年刊行作品。SFマガジン等に掲載された作品群をまとめた小川一水(おがわいっすい)の第二短編集。第一短編集である『老ヴォールの惑星』のスケールの大きさに較べるとやや小粒かな。 おススメ度、こんな方におススメ…

『犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎』コニー・ウィリス 時間モノの傑作

ヒューゴー賞・ローカス賞ダブル受賞作 2004年刊行作品。作者のコニー・ウィリス(Connie Willis)は1945年生まれのアメリカ人エスエフ作家。 オリジナルの米国版は1998年に刊行されている。原題は『To Say Nothing of the Dog』。ヒューゴー賞・ローカス賞受賞…

『朝日のようにさわやかに』恩田陸 14編を収録した第二短編集

14編を収録したバラエティに富んだ短編集 2007年刊行作品。『図書室の海』に続く恩田陸の第二短編集である。この当時、既に恩田陸の刊行ペースは相当に早く、ほぼ毎月なにかしら作品が出ている状態であった。この時期の多作ぶりはホントに凄かった。デビュー…

『銀河帝国の弘法も筆の誤り』田中啓文 「バカSF」をとことん楽しめる一作

SF

第33回星雲賞受賞作を含む短編集 2001年刊行作品。SFマガジン1997年8月号、2000年2月号、、SFマガジン1999年9月臨時増刊号に掲載された作品に加え、表題作を含む書き下ろし二作を加えたSF短編集である。表題作である「銀河帝国の弘法も筆の誤り」は第33回星雲…

『傀儡后』牧野修 醜悪さも突き詰めると美に変る

日本SF大賞受賞作品 2002年刊行作品。同年の第23回日本SF大賞を受賞。そして、ベストSF2002では国内部門8位にランクインしている作品である。作者の牧野修(まきのおさむ)は1958年生まれのエスエフ作家。単行本版はハヤカワSFシリーズ Jコレクションの一冊…

『絶対猫から動かない』新井素子 「いつか猫になる日まで」50'sとして懐かしく読む

新井素子としては珍しい雑誌連載作 2020年刊行作品。KADOKAWAの電子メディア文芸誌「文芸カドカワ」に2017年1月号~2019年8月号まで。「文芸カドカワ」の後継媒体である「カドブンノベル」の2019年9月号~12月号まで連載されていた作品を単行本化したもの。 …

『黄泉がえり』梶尾真治 よみがえる死者たち、彼らの正体、目的は?

SF

梶尾真治の一般知名度を高めた作品 2000年刊行作品。ハートウォーミングなエスエフを書かせたら当代随一の梶尾真治が地元熊本を舞台に書き上げたのが本作。草彅クンの映画で有名になったから、一般的にはカジシンの出世作と呼ぶことが出来そうだ。もっとも映…

『あたしのマブイ見ませんでしたか』池上永一、初の短編集

池上永一の三作目 1999年刊行作品。「Seven Seas」「週刊小説」に95年~99年にかけて発表された作品群をまとめたものである。長編作品が印象に残りがちな池上永一(いけがみえいいち)だが、本書はそんな彼の初の短編集だ。『バガージマヌパナス』『風車祭(…

『時砂の王』小川一水 時をめぐる大いなる戦いの果てに

時間モノの醍醐味を堪能できる一作 2007年刊行作品。本作『時砂(ときすな)の王』は文庫書き下ろし作品だった。 どうしてJコレクション枠で出なかったのが謎である。小川一水(おがわいっすい)はハヤカワからは既に『第六大陸 』『復活の地』を上梓してお…

『DOOMSDAY 審判の夜』津村巧 第22回メフィスト賞受賞作

津村巧のデビュー作 2001年刊行作品。第22回のメフィスト賞受賞作である。著者HPによると、応募時タイトルは『SURVIVOR―生存者―』。残念ながらノベルス版のみで、文庫版は刊行されていない。 作者の津村巧(つむらたくみ)は1970年生まれ。本作以前に、光文…

『リセット』北村薫 <時と人>シリーズの三作目!

<時と人>シリーズの第三作 2001年刊行作品。作者の北村薫(きたむらかおる)は1949年生まれのミステリ作家。デビュー作は1989年の『空飛ぶ馬』。デビューから30年が経ち、御年も70歳を超えて、この世界では大ベテランの域にある作家と言っていい。 リセット …

『アロマパラノイド 偏執の芳香』牧野修 めくるめくる電波の世界

「ベストSF1999」国内部門6位 1999年刊行作品。単行本はアスキーから発売されており、当時のタイトルは『偏執の芳香 アロマパラノイド』 であった。「ベストSF1999」の国内部門で第6位にランクインしている。作者の牧野修(まきのおさむ)は1958年生まれのエ…