ネコショカ

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2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

恩田陸

『まひるの月を追いかけて』恩田陸の描く旅の情景が素晴らしい

恩田陸の紀行モノ 2003年刊行作品。文藝春秋の小説誌「オール讀物」に2001年7月号から2002年8月号にかけて6回に渡り掲載された作品を単行本化したもの。恩田陸22作目の作品。 まひるの月を追いかけて 作者:恩田 陸 文藝春秋 Amazon 文春文庫版は2007年に刊行…

『光の帝国』『蒲公英草紙』『エンド・ゲーム』恩田陸の「常野物語」シリーズをまとめて紹介!

本日は恩田陸、初期の人気シリーズ「常野(とこの)物語」三作の感想をまとめてお届けしたい。 「常野(とこの)物語」シリーズの読む順番 恩田陸の「常野物語」シリーズの既刊は以下の三作。 光の帝国 常野物語(1997年) 蒲公英草紙(たんぽぽそうし) 常…

『Q&A』恩田陸 質問と答えだけで物語が進行する不思議な作品

謎が謎を呼ぶ奇妙な物語 2004年刊行作品。幻冬舎の文芸雑誌「星星峡」の2002年4月号から2004年3月号にかけて掲載されていた作品を単行本化したものである。 単行本版はベージュの地にタイトルと作者名のみと至ってシンプルな装丁で、一瞬どこかの高校の文芸…

『黒と茶の幻想』恩田陸 美しい謎と非日常の島、そして旅路の果て

恩田陸作品最長クラスの長編 講談社のミステリ雑誌「メフィスト」の、2000年5月号~2001年9月号に連載されていた作品を単行本化したもの。本作は『三月は深き紅の淵を』の系譜に連なる作品の一つで、その第一章「待っている人々」の中で言及されている。本作…

『ライオンハート』恩田陸 時空を超えて何度も廻り逢う男女の物語

20世紀最後に刊行された恩田陸作品 新潮社の小説誌『小説新潮』に1990年~2000年にかけて掲載された、五編の作品をまとめたもの。奇しくも連載中にSMAPの「らいおんハート」発売されているが、関係はない。 単行本版は2000年12月に刊行された。個人的には20…

『ネクロポリス』恩田陸 聖地アナザーヒルでは死者と再会できる

恩田陸最長クラスの大長編 2005年刊行作品。「小説トリッパー」の2001年冬季号から2005年春季号にかけて連載されていた作品を大幅に加筆修正の上で単行本化したもの。上下巻構成で総ページ数785ページは恩田作品中でも最長クラスの大ボリュームである。 恩田…

『ブラザー・サン シスター・ムーン』恩田陸 本と音楽と映画があれば幸せだった時代の物語

恩田陸の自伝的要素を含む作品 最初の単行本版は2009年に刊行。英題は『Brother Sun, Sister Moon』。 河出文庫版は2012年に登場。文庫化に際して、河出書房新社の文芸誌『文藝』に掲載されていた前日譚的な作品「糾える縄のごとく」を追加収録。加えて、巻…

『象と耳鳴り』恩田陸 元判事を主人公としたミステリ短編集

恩田陸のミステリ短編集 1999年刊行作品。主として祥伝社の小説誌『小説NON』に掲載されていた一連の作品をまとめて書籍化したもの。『光の帝国 常野物語』の次、『木曜組曲』の前に出た作品で、恩田陸の第六作となる。 象と耳鳴り 作者:恩田 陸 祥伝社 Amaz…

『朝日のようにさわやかに』恩田陸 14編を収録した第二短編集

14編を収録したバラエティに富んだ短編集 2007年刊行作品。『図書室の海』に続く恩田陸の第二短編集である。この当時、既に恩田陸の刊行ペースは相当に早く、ほぼ毎月なにかしら作品が出ている状態であった。この時期の多作ぶりはホントに凄かった。デビュー…

『図書室の海』恩田陸デビュー10年目の短編集

初期代表作の外伝を含む、恩田陸の魅力が詰まった作品集 2002年刊行作品。各種アンソロジーやらネット媒体、雑誌等に掲載されてきた8編に加え、2編の書き下ろしを加えた短編集。この年、恩田陸はデビュー10周年だった。収録されている作品数が10編なのはこれ…

『『恐怖の報酬』日記 酩酊混乱紀行』恩田陸 飛行機嫌いの作家がイギリスへ!

恩田陸初のエッセイ作品 2005年刊行。講談社がかつて発行していた月刊文芸PR誌「IN☆POCKET」に2004年1月から10月にかけて連載されていた作品を単行本化したもの。 装丁はダイヤモンドビッグ社の有名な旅行ガイド『地球の歩き方』を多分にパロった仕様となっ…

『「ABC」殺人事件』クリスティの名作をモチーフとした競作アンソロジー

豪華なラインナップのミステリアンソロジー 2001年刊行。講談社文庫創刊30周年を記念して企画された、書き下ろしアンソロジー作品である。書き手は有栖川有栖、恩田陸、加納朋子、貫井徳郎、法月綸太郎と、記念企画だけに豪華な顔ぶれだ。 タイトルからも想…

『月の裏側』恩田陸 謎の連続失踪事件と「戻ってきた」人々

恩田陸によるホラー?作品 2000年刊行作品。幻冬舎発行の小説誌『PONTOON(ポンツーン)』に1998年10月号から1999年10月号にかけて掲載されていた作品を、加筆修正のうえで単行本化したもの。 月の裏側 作者:恩田 陸 幻冬舎 Amazon 幻冬舎文庫版は2002年に刊…

『クレオパトラの夢』恩田陸 神原恵弥シリーズの第二作は北海道が舞台

神原恵弥シリーズの第二作 双葉社の小説誌「小説推理」に、2002年7月号、9月号、11月号、2003年1月号、5月号、7月号に連載された作品を加筆修正の上、単行本化したもの。神原恵弥(かんばらめぐみ)シリーズの第二作となる。 単行本版の装丁は表紙を透明にし…

『MAZE[メイズ]』恩田陸 異国の迷宮で繰り広げられる人間消失の謎

神原恵弥シリーズの第一作 2001年刊行作品。もともとは双葉社の 小説誌『小説推理』に2000年7月号~2000年11月号にかけて掲載されていた作品。 最初に刊行された単行本版のタイトルは『MAZE[めいず]』と[ ]内がひらがなになっていた。書影の左上をよく見…

『いのちのパレード』恩田陸ならではの「奇想」を味わう第三短編集

恩田陸、三冊目の短編集 2007年刊行作品。実業之日本社の小説誌「ジェイ・ノベル」に掲載されていた作品14編に、書き下ろし1編を加えて単行本化したもの。 『図書室の海』『朝日のようにさわやかに』に続く、恩田陸三作目の短編集である。 いのちのパレード …

『三月は深き紅の淵を』恩田陸 「物語」の在り方を問う、恩田作品の原点

恩田陸『三月は深き紅の淵を』のあらすじ、わかりやすいネタバレ解説、感想。関連する『麦の海に沈む果実』等の理瀬シリーズについても紹介しています。

『ねじの回転』恩田陸が描く226事件、そして運命への挑戦

エスエフ作品の刊行が相次いだ2002年の恩田陸作品 2002年刊行作品。集英社「小説すばる」に2000年11月号から2002年1月号にかけて連載されていた作品を単行本化したもの。サブタイトルは「FEBRUARY MOMENT」。 ねじの回転 FEBRUARY MOMENT 作者:恩田 陸 集英…

『木曜組曲』恩田陸 五人の女たちが織り成す心理戦

映画化もされた恩田陸の初期作品 1999年刊行作品。「問題小説」に98年から99年にかけて掲載されたものが1999年に徳間書店より単行本化された。恩田陸としては七作目。最初期の作品のひとつである。 木曜組曲 作者:恩田 陸 徳間書店 Amazon 最初の徳間文庫版…

『薔薇のなかの蛇』恩田陸 理瀬シリーズ17年ぶりの最新作はイギリスが舞台!

「理瀬」シリーズの実質的な三作目! 2021年刊行作品。『麦の海に沈む果実』『黄昏の百合の骨』に続く、「理瀬シリーズ」の実質的な第三作目にあたる。前作の『黄昏の百合の骨』が登場したのが2004年だったので、なんと17年ぶりのシリーズ最新作ということに…

『殺人鬼の放課後』はスニーカー・ミステリ倶楽部発のミステリアンソロジー

今週のお題「読書の秋」にエントリします! 短命に終わったスニーカー・ミステリ倶楽部 2001年に登場した、角川スニーカー文庫内のミステリレーベルが、スニーカー・ミステリ倶楽部だ。でも、結局あまりうまくいかなくて、数年で消えてしまったはず。同時期に…

『ユージニア』恩田陸 複数の視点から組み上げられていく事件のかたち

日本推理作家協会賞、受賞作品 2005年刊行作品。「KADOKAWAミステリ」2002年8月号~2003年5月号、及び「本の旅人」2003年7月号~2004年9月号にかけて連載されていた作品を加筆修正の上で単行本化したもの。掲載誌が途中で変わってしまったのは「KADOKAWAミス…

『ロミオとロミオは永遠に』恩田陸 郷愁と狂騒の20世紀に捧げるオマージュ作品

恩田陸のディストピア学園モノ 2002年刊行作品。早川書房「SFマガジン」の1999年3月号から2000年6月号にかけて掲載されたものを大幅に加筆修正。ハヤカワSFシリーズJコレクションの一冊として刊行されている。カバーイラストはおがわさとし。 ロミオとロミオ…

ドラマ版『六番目の小夜子』が素晴らしかったので全力で紹介する

ドラマ版『六番目の小夜子』が再放送された! 7月某日、Twitterを眺めていたら驚愕すべき情報が流れて来た。 ✨深夜の #イッキ見まつり✨【#六番目の小夜子】総合で一挙再放送!7/31(土)午前0:11(金曜深夜)8/1(日)午前0:36(土曜深夜)8/2(月)午前0:36(日曜深夜)…

『新耳袋コレクション』恩田陸セレクトの現代怪談集

「新耳袋」から99編を恩田陸がセレクト 本書は2006年刊行。「新耳袋」は名前は聞いていたけど実際に読むのは初めて。「新耳袋」は怪異蒐集家の木原浩勝と中山市朗が集めた、現代の怪異譚集なのである。 【合本版】新耳袋 第一夜?五夜 現代百物語 (角川文庫) …

『木洩れ日(こもれび)に泳ぐ魚』恩田陸 

別れを決めた男女の最後の夜を描く 2007年刊行。「婦人公論」2006年1月22日号から2007年2月22日号にかけて連載された作品を加筆修正の上で単行本化したもの。この年2007年は恩田作品が出ていたように記憶していたが、実は長編作品はこれ一作だった。意外だな…

『夏の名残りの薔薇』恩田陸 物語の揺らぎを楽しむ

あとがき+解説+インタビュー付き 2004年刊行作品。「別冊文藝春秋」の245号から250号にかけて連載された作品を単行本化したもの。文藝春秋の「本格ミステリ・マスターズ」レーベルからの登場であった。 単行本にしてはめずらしくあとがき付き。更に杉江松恋に…

『黄昏の百合の骨』恩田陸 それからの理瀬の物語

「理瀬」シリーズの実質的な二作目! 2004年刊行作品。講談社のミステリ誌『メフィスト』の2002年5月増刊号~2003年9月増刊号に連載されていた作品をまとめたもの。表紙及び、作中の扉絵イラストは北見隆。『麦の海に沈む果実』後の水野理瀬を描いた作品であ…

恩田陸「理瀬」シリーズの外伝三作をご紹介!

先日は『麦の海に沈む果実』をご紹介したが、今回は「理瀬」シリーズの外伝とも言える短編作品をご紹介しよう。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(最大★5つ) 恩田陸の「理瀬」シリーズは全部読む!と決めている方。『麦の海に沈む果実』…

『麦の海に沈む果実』恩田陸 「理瀬」シリーズの実質的な一作目!

2021年5月26日に恩田陸の「理瀬」シリーズ、17年ぶりの新作長編『薔薇のなかの蛇』が刊行される!嬉しい~ 薔薇のなかの蛇 作者:恩田 陸 発売日: 2021/05/26 メディア: 単行本 ということで、「理瀬」シリーズの旧作紹介をお届けしたい。17年も新作出ていな…