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2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

世界史

『ハイファに戻って/太陽の男たち』ガッサーン・カナファーニー 難民となったパレスチナ人の苦難を綴った作品集

爆殺されたパレスチナ人作家 作者のガッサーン・カナファーニー(Ghassan Fayiz Kanafani/غسان كنفاني)は、1936年生まれのパレスチナ人。12歳の時に、ユダヤ人系武装組織に故郷を襲撃され難民となる。その後、作家、ジャーナリストとして活躍したが、1972年…

『廃帝綺譚』宇月原晴明 順帝、建文帝、崇禎帝、そして後鳥羽院の物語

『安徳天皇漂海記』とあわせて読みたい 2007年刊行作品。宇月原晴明(うつきばらはるあき)としては六作目の作品にあたる。ミルキィ・イソベの表紙デザインが美しい。 廃帝綺譚 作者:宇月原 晴明 中央公論新社 Amazon タイトルや表紙デザインから想像がつく方…

『カルチェ・ラタン』佐藤賢一 16世紀のパリを舞台とした連作短編小説

16世紀のパリを舞台とした成長物語 2000年刊行作品。佐藤賢一(さとうけんいち)、七作目の作品。サトケンお得意のフランスモノである。 カルチェ・ラタン 作者:佐藤 賢一 集英社 Amazon 集英社文庫版ハ2003年に刊行されている。 不勉強にして知らなかったの…

『ドゥームズデイ・ブック』コニー・ウィリスの名作タイムトラベルSF

ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞、三冠に輝いた名作 オリジナルのイギリス版は1992年刊行。原題は『Doomsday Book』。 日本では1995年に単行本版が登場。 ドゥームズデイ・ブック (夢の文学館) 作者:コニー ウィリス 早川書房 Amazon ハヤカワ文庫版は…

『われはフランソワ』山之口洋 詩人フランソワ・ヴィヨンの一代記

山之口洋の第三作 2001年刊行作品。『オルガニスト』で第10回日本ファンタジーノベル大賞の大賞を受賞した山之口洋(やまのぐちよう)の三作目。 単行本のみで文庫化はされていない。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(最大★5つ) 15世紀…

『オクシタニア』佐藤賢一 異端者と異端審問官になった夫婦の物語

13世紀の南フランスを舞台とした歴史小説 2003年刊行作品。長いよ長いよの書き下ろし2,400枚。フツウの長編小説六冊分である。積読すること四年。ようやく読めた。 サトケンお得意のフランスモノ。今回のテーマははアルビジョア十字軍。相変わらず渋すぎるテ…

『 ジャガーになった男』佐藤賢一 戦国時代の武士がスペインに!

佐藤賢一のデビュー作 1994年刊行作品。第6回小説すばる新人賞受賞作で、佐藤賢一(さとうけんいち)のデビュー作である。もう三十年近くも前の作品かと思うと、なかなかに感慨深い。 佐藤賢一は1968年生まれ。山形大学卒業後、東北大学文学の大学院へ進学。…

『ベルカ、吠えないのか?』古川日出男 イヌから読み解く異色の現代史

二人称で描かれる異色の現代史 2005年刊行作品。古川日出男(ふるかわひでお)としては10作目。あまりお目にかかることが無い、二人称形態で書かれた小説作品である。 戦時下に置き去りにされた四頭のイヌのその後を描く章と、現代のロシアの物語が交互に描…

『あの図書館の彼女たち』ジャネット・スケスリン・チャールズ 戦時の図書館で働いた女性たちの物語

ジャネット・スケスリン・チャールズの大ヒット作 本日ご紹介する『あの図書館の彼女たち』は、2022年刊行作品。訳者は髙山祥子。オリジナルの米国版は2020年刊行で、原題は『The Paris Library』。 作者のジャネット・スケスリン・チャールズ(Janet Skeslien C…

『黒い悪魔』佐藤賢一 黒い肌を持つフランス人将軍の物語

フランス革命を舞台とした立身出世物語 2002年刊行作品。文藝春秋の小説誌「オール讀物」の2002年1月号から12月号に連載されていた作品を単行本化したものである。 黒い悪魔 作者:佐藤 賢一 文藝春秋 Amazon 文春文庫版は2010年に登場している。 おススメ度…

『ナポレオンの勇者たち』リチャード・ハワード 邦訳版は二巻で打ち切られてショック!

『ナポレオンの勇者たち』シリーズとは? 本日お届けするのはリチャード・ハワード(Richard Howard)の『ナポレオンの勇者たち』シリーズである。リチャード・ハワードは1958年生まれの英国人作家。ホラー系のジャンルを得意しているショーン・ハトスン(Shau…

『ベルリンは晴れているか』深緑野分、弱者が弱者を虐げる世界で

2019年の本屋大賞第3位、直木候補作 2018年刊行作品。直木候補作、2019年の本屋大賞第3位にランクインした作品である。 その他、この年のミステリ系各ランキングで、『このミステリーがすごい! 』が第2位、『週刊文春』ミステリーベスト10 で第3位、「ミス…

『朗読者』ベルンハルト・シュリンク 誇り高き一人の女の物語

予備知識なしで読んで欲しい 1995年刊行作品。ドイツ人作家ベルンハルト・シュリンク(Bernhard Schlink)による小説作品。原題は『Der Vorleser』。日本版は2000年刊行。新潮社の海外文学レーベル「新潮クレスト・ブックス」からの登場だった。 朗読者 (新…

『星のせいにして』エマ・ドナヒュー 第一次世界大戦下、スペイン風邪の蔓延、産科発熱病棟の三日間

エマ・ドナヒューの邦訳、二作品目 2021年刊行作品。オリジナルの米国版は2020年に登場しており、原題は『The Pull of the Stars』。作者のエマ・ドナヒュー(Emma Donoghue)は1969年生まれ。アイルランド系のカナダ人作家。 デビュー作は1994年の『Stir Fry…

『同志少女よ、敵を撃て!』逢坂冬馬 セラフィマの銃口はわたしたちをも狙っている

本屋大賞!アガサ・クリスティー賞大賞&直木賞候補作、衝撃のデビュー作 2021年刊行作品。作者の逢坂冬馬(あいさかとうま)は1985年生まれ。本作『同士少女よ、敵を撃て!』で、第11回のアガサ・クリスティー賞の大賞を受賞して作家デビューを果たしている…

『死の泉』皆川博子が描く狂気と幻想の世界

第二次大戦下のドイツを舞台とした作品 作者の皆川博子(みながわひろこ)は1929年(もしくは1930年)生まれで、1970年のデビューから現在に至るまで、連綿と現役の作家として活動を続けている。80代に入っても一向に刊行ペースが衰えない驚異の作家である。…

『オルレアンの魔女』稲羽白菟 歴史の闇の中からよみがえる”魔女”

稲羽白菟の三作目 2021年刊行作品。作者の稲羽白菟(いなばはくと)は1975年生まれ。2016年に、『合邦の密室』が、第九回島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞の準優秀作を受賞。2018年に同作で作家デビューを果たしている。その後、2020年に第二作…

『ホテル』エリザベス・ボウエンの第一長編作品

ボウエン作品が日本語で読めるようになった 作者のエリザベス・ボウエン(Elizabeth Bowen)は1899年生まれ。アイルランド生まれの小説家。1973年没。 本作『ホテル』は2021年刊行作品。原題は『The Hotel』で1927年の刊行。100年近く前の作品ということにな…

『赤目のジャック』佐藤賢一 フランス中世最大の農民反乱の顛末

文庫になる際にタイトルが変わっている 1998年刊行作品。『ジャガーになった男』『傭兵ピエール』に続く佐藤賢一の三作目である。 1997年~1998年にかけて雑誌「鳩よ!」に連載されていた作品が『赤目 ジャックリーの乱』というタイトルでマガジンハウスから…

『双頭の鷲』佐藤賢一 百年戦争の英雄デュ・ゲクランの生涯

佐藤賢一の四作目はお得意の百年戦争モノ 1999年刊行作品。『ジャガーになった男』『傭兵ピエール』『赤目のジャック』に続く、佐藤賢一の四作目である。 新潮文庫版は2001年に刊行されている。単行本は単巻で刊行されていたが、文庫化に際して上下巻に分冊…

『王妃の離婚』佐藤賢一 うらぶれたオッサンが頑張る話に昂る

佐藤賢一の直木賞受賞作 1999年刊行作品。佐藤賢一の五作目。第121回の直木賞受賞作である。ちなみに同時受賞タイトルは、桐野夏生の『柔らかな頬』であった。 1994年に書かれた佐藤賢一のデビュー作、『ジャガーになった男』は戦国時代にスペインに渡った一…

『半身』サラ・ウォーターズ ヴィクトリア朝時代のイギリスを舞台とした傑作ミステリ

2003年の翻訳ミステリ界を制した傑作 2003年刊行作品。オリジナルは1999年にイギリスで出版されている。原題は『Affinity』。作者のサラ・ウォーターズはヴィクトリア期のイギリスを舞台とした作品を得意としており本作がデビュー二作目。 このミス2004年版海…