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2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

2022-01-01から1年間の記事一覧

『名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件』白井智之 奇跡VS探偵のロジック

2022年のミステリ界を席巻! 2022年刊行作品。作者の白井智之(しらいともゆき)は1990年生まれのミステリ作家。デビュー作は2014年の『人間の顔は食べづらい』。同作は第34回の横溝正史ミステリ大賞の最終候補作のひとつであった。 『名探偵のいけにえ』は…

『早朝始発の殺風景』青崎有吾 高校生たちの気まずい密室

青春は気まずさでできた密室 2019年刊行作品。集英社の小説誌「小説すばる」に2016年~2018年にかけて掲載されていた作品をまとめたもの。「エピローグ」部分は単行本刊行時の書き下ろしとなっている。第73回日本推理作家協会賞の、長編および連作短編集部門…

『それでも君が』高里椎奈のドルチェ・ビスタシリーズ

高里椎奈による「密室本」 2002年刊行作品。講談社ノベルズ20周年企画「密室本」の一冊である。高里椎奈(たかさとしいな)と言えば、薬屋探偵シリーズが定番だったが(当時)、本作は初の非薬屋シリーズ作品だった。 その後『お伽話のように』『左手をつな…

『真っ暗な夜明け』氷川透 第15回メフィスト賞受賞作

覆面作家、氷川透のデビュー作 2000年刊行作品。第15回のメフィスト賞受賞作品である。氷川透(ひかわとおる)の最初の作品。この作家、東京大学文学部卒であることは開示されているのだが、それ以外のプロフィールがまったく不明と言う覆面作家である。性別…

『アホウドリの迷信 』岸本佐知子・柴田元幸セレクトによる、現代英語圏異色短編コレクション

魅惑の異色短編アンソロジー 2022年刊行作品。編者にして翻訳を担当しているのは、岸本佐知子(きしもとさちこ)と、柴田元幸(しばたもとゆき)の両名。 本書は、柴田元幸が編集長を務める文芸誌「MONKEY」の第23号で企画された特集「ここにいいものがある…

『殺しも鯖もMで始まる 地底の密室!』浅暮三文 講談社ノベルス20周年記念「密室本」の一冊

浅暮三文による「密室本」 2002年刊行作品。1998年に『ダブ(エ)ストン街道』で第8回のメフィスト賞を受賞した浅暮三文(あさぐれみつふみ)としては6作目の作品となる。 なお、文庫化はされていない。 作者の浅暮三文は1959年生まれ。作家になる前はコピーラ…

『オルガニスト』山之口洋 第10回日本ファンタジーノベル大賞受賞作

山之口洋のデビュー作 1998年刊行作品。第10回日本ファンタジーノベル大賞の大賞受賞作品である。ちなみにこの年の優秀賞は沢村凛の『ヤンのいた島』と涼元悠一の『青猫の街』である。 作者の山之口洋(やまのぐちよう)は1960年生まれ。本作がデビュー作と…

『竜殺しのブリュンヒルド』東崎惟子 神にやり直す機会を与えられても、私は同じ道を選ぶ

第28回電撃小説大賞、銀賞受賞作 2022年刊行作品。作者の東崎惟子(あがりざきゆいこ)は、本作『竜殺しのブリュンヒルド』がデビュー作となる。数々の人気作家を世に送り出してきた、電撃小説大賞の銀賞受賞作品だ。続篇としては『竜の姫ブリュンヒルド』が…

『狼の寓話 南方署強行犯係』近藤史恵の描く警察小説の第一弾

新人&女性刑事のバディもの 2003年刊行作品。近藤史恵(こんどうふみえ)初の警察小説。本作がこれで16作目。最初に出たのはトクマ・ノベルズ版だった。 狼の寓話―南方署強行犯係 (トクマ・ノベルズ) 作者:近藤 史恵 徳間書店 Amazon 徳間文庫版は2007年に刊…

『罪灯(つみともしび)』佐々木丸美 未必の故意による犯罪

当ブログは原則としてネタバレありでお届けしているが、本作については佐々木丸美の「館」シリーズについても軽度のネタバレを含んでいる。未読の方はご注意ください! 最後期の佐々木丸美作品 1983年刊行作品。佐々木丸美(ささきまるみ)としては15作目の…

『壬生義士伝』浅田次郎 守銭奴と蔑まれた新撰組隊士の物語

浅田次郎、初の歴史小説 2000年刊行作品。もともとは「文藝春秋」誌に1998年~2000年にかけて連載されていたもの。タイトルの『壬生義士伝』は「みぶぎしでん」と読む。 日本を舞台とした歴史小説は、浅田次郎(あさだじろう)としては初めての作品となる。…

『世界は密室でできている』舞城王太郎 「奈津川サーガ」スピンアウト作品

舞城王太郎の「密室本」 2002年刊行作品。『煙か土か食い物』『暗闇の中で子供』に続く、舞城王太郎(まいじょうおうたろう)の三作目にあたる作品。 浅暮三文の『殺しも鯖もMで始まる 地底の密室!』や高里椎奈の『それでも君が』と同様に、講談社ノベルズ2…

『曲り角』神吉拓郎 人生の転機が訪れた17人の男女の姿を描く

神吉拓郎の短編集が復刊 作者の神吉拓郎(かんきたくろう)は1928年生まれ。NHK出身の放送作家、小説家。1983年に『私生活』で直木賞を受賞。1994年に物故されている。 本日ご紹介する『曲り角』は、もともとは1985年に文藝春秋から刊行されていた作品。 曲…

『模倣の殺意』中町信 復刊したら40万部も売れてしまった作品

何度もタイトルを変えて復活した中町信のデビュー作 作者の中町信(なかまちしん)は1935年生まれ。出版社勤務を経て1989年から専業化。90年代に数多くのミステリ作品を発表した作家であるが、残念ながら2009年に他界されている。 2005年刊行の作品だが、本…

『鉄の枷』ミネット・ウォルターズ 中世の拘束具を被せられた死体の謎

ミネット・ウォルターズの三作目 オリジナルの英国版は1994年刊行で、原題は『The Scold's Bridle』。邦訳版は1996年に登場している。 鉄の枷 作者:ミネット ウォルターズ 東京創元社 Amazon わたしが読んだのは2002年に刊行された創元推理文庫版である。 作…

『風よ龍に届いているか』ベニー松山のウィザードリィ小説2作目は傑作ファンタジー

「隣り合わせの灰と青春」に続く、ウィザードリィ小説の2作目 今は亡きゲーム雑誌「ファミコン必勝本」。かつて宝島社(当時はJICC出版)から出版されていたこの雑誌はなぜか異常なまでに「ウィザードリィ」という特定のRPGをプッシュしていて、コミックが連…

『黙過の代償』森山赳志 第33回メフィスト賞受賞作

森山赳志、唯一の作品 2005年刊行作品。タイトルは「もっかのだいしょう」と読む。第33回のメフィスト賞受賞作品である。メフィスト賞には珍しい国際謀略モノだ。作者の森山赳志(もりやまたけし)は1971年生まれ。本作がデビュー作だが、残念ながらこれ以降…

『象と耳鳴り』恩田陸 元判事を主人公としたミステリ短編集

恩田陸のミステリ短編集 1999年刊行作品。主として祥伝社の小説誌『小説NON』に掲載されていた一連の作品をまとめて書籍化したもの。『光の帝国 常野物語』の次、『木曜組曲』の前に出た作品で、恩田陸の第六作となる。 象と耳鳴り 作者:恩田 陸 祥伝社 Amaz…

『暗闇の中で子供』舞城王太郎 「奈津川サーガ」の第二作はなぜ文庫化されないのか?

メフィスト賞受賞後、初の作品 2001年刊行作品。『煙か土か食い物』で第19回のメフィスト賞を受賞した舞城王太郎(まいじょうおうたろう)の第二作。「奈津川サーガ」と呼ばれる一連のシリーズの二作目でもある。 全貌が判りにくい「奈津川サーガ」 奈津川家…

『凌辱の魔界』友成純一 繰り広げられる魔宴の日々

アダルトレーベルから出ていた伝説のホラー作品 1985年刊行作品。もともとはマドンナ文庫から刊行されていた作品である。作者の友成純一(ともなりじゅんいち)は1954年生まれの小説家。 マドンナ文庫というのはいわゆるアダルト系のレーベルなのだが、そも…

『隣り合わせの灰と青春』ベニー松山 「ウィザードリィ」の世界を完全再現

ファミコンゲーム「ウィザードリィ」のノベライズ 30年以上前に刊行された作品だが、未だ色褪せないゲームノベライズの先駆にして、その域をはるかに超えてしまった大傑作がベニー松山の『隣り合わせの灰と青春』である。作者のベニー松山は1967年生まれの小…

「卓球場シリーズ」野村美月の初シリーズ全四作をまとめてご紹介

以前バラバラに配信していた、野村美月の「卓球場シリーズ」全四作を一つの記事に統合しました。 野村美月の卓球場シリーズ! 「卓球場シリーズ」は野村美月(のむらみづき)のデビュー作である『赤城山卓球場に歌声は響く』から始まる、全四巻のシリーズ作…

『invert II 覗き窓の死角』相沢沙呼 城塚翡翠シリーズの三作目

翡翠ちゃんシリーズの三冊目! 2022年刊行作品。サブタイトルの『覗き窓の死角』には「ファインダーのしかく」とルビが振られている。「のぞきまどのしかく」ではないので気をつけたい。 表紙イラストは、前作、前々作に引き続き、ヒットメーカー遠田志帆(…

『沈黙のフライバイ』野尻抱介 国産ハードSF小説の良短編集

「ベストSF2007」国内第三位の作品 2007年刊行作品。作者の野尻抱介(のじりほうすけ)は1961年生まれのエスエフ作家。「ベストSF2007」の国内第三位作品。1998年から2006年にかけて「SFマガジン」「SFオンライン」に発表された四編に書き下ろし一編を加えて…

『変な絵』雨穴 あなたにはこの絵の「謎」が解けますか?

9枚の「図絵」がからみあうスケッチ・ミステリー 2022年刊行作品。前作『変な家』が40万部超の大ヒットとなった雨穴(うけつ)の第二作である。本作『変な絵』も発売早々に、発行部数20万部を超える売り上げをたたき出しており、雨穴は僅か一年で、ヒットを連…

『フリーランチの時代』小川一水 『時砂の王』外伝を含む、第二短編集

ヴァラエティに富んだ内容の短編集 2008年刊行作品。SFマガジン等に掲載された作品群をまとめた小川一水(おがわいっすい)の第二短編集。第一短編集である『老ヴォールの惑星』のスケールの大きさに較べるとやや小粒かな。 おススメ度、こんな方におススメ…

『此の世の果ての殺人』荒木あかね 終末の世界、女性バディモノ✖ロードノベルの魅力

史上最年少、選考委員満場一致の乱歩賞受賞作 2022年刊行作品。作者の荒木あかねは1998年生まれのミステリ作家。本作『此の世の果ての殺人(このよのはてのさつじん)』で第68回の江戸川乱歩賞を受賞し、作家としてのデビューを果たしている。受賞当時23歳は…

『Twelve Y.O.』福井晴敏 第44回江戸川乱歩賞受賞作

最初に刊行された福井晴敏作品 1998年刊行作品。第44回の江戸川乱歩賞受賞作品である。ちなみにタイトルの『Twelve Y.O.』は「とぅえるぶ わい おー」と読む(そのまんまだ)。 作者の福井晴敏は1968年生まれ。ちなみに同時受賞は池井戸潤の『果つる底なき』…

『楽園とは探偵の不在なり』斜線堂有紀 二人殺せば地獄行きの世界で連続殺人は可能か?

斜線堂有紀、初のハードカバー作品? 2020年刊行作品。作者の斜線堂有紀(しゃせんどうゆうき)は1993年生まれ。『キネマ探偵カレイドミステリー』で電撃小説大賞の「メディアワークス文庫賞」を受賞し、2017年に作家デビューを果たしている。 当初はメディ…

『オクシタニア』佐藤賢一 異端者と異端審問官になった夫婦の物語

13世紀の南フランスを舞台とした歴史小説 2003年刊行作品。長いよ長いよの書き下ろし2,400枚。フツウの長編小説六冊分である。積読すること四年。ようやく読めた。 サトケンお得意のフランスモノ。今回のテーマははアルビジョア十字軍。相変わらず渋すぎるテ…