ネコショカ

小説以外の書籍感想はこちら!
『刀伊の入寇 平安時代、最大の対外危機』
女真族の襲来と軍事貴族たちの台頭

4つ★(おススメ!)

『ナイフ投げ師』スティーヴン・ミルハウザー 幻想、不穏さ、謎の歴史、他では読めない独特の世界

ミルハウザーの第三短編集 オリジナルの米国版は1998年に刊行されており原題は「The Knife Thrower」。 作者のスティーヴン・ミルハウザー(Steven Millhauser)は1943年生まれのアメリカ人作家。デビュー作は1972年の『エドウィン・マルハウス―あるアメリカ…

『成瀬は天下を取りにいく』宮島未奈 成瀬あかり史を島崎と一緒に見届けたい!

低浮上が続いておりますが、生きてます。小説読めない期に入ったので、出現頻度低めですが、いずれ復活すると思うので、気長にお待ちください。 宮島未奈のデビュー作&本屋大賞受賞作! 2023年刊行作品。作者の宮島未奈(みやじまみな)は1983年生まれの小…

『冬期限定ボンボンショコラ事件』米澤穂信 「小市民」シリーズ四部作、最後の季節、高校時代の終わり

祝☆「冬期」もアニメ化!ということで、こちらも上げておきます。「秋期」のアニメ化結構よかったですね。終始漂う不穏な感じと、終盤にもたらされる負のカタルシスがなんとも言えず良かった。 「小市民」シリーズついに”冬期”が登場 2024年刊行作品。『春期…

『秋期限定栗きんとん事件』米澤穂信 「小市民」シリーズ三作目。欠落と補完、需要と供給、唯一無二の理解者

祝『秋期限定栗きんとん事件』アニメ化!と言うことで、こちらの記事をあげておきます(最近更新滞り気味でスミマセン)。 本ブログは基本ネタバレありで書いている、今回は『秋期限定栗きんとん事件』だけでなく、『春期限定いちごタルト事件』『夏期限定ト…

『ワインズバーグ、オハイオ』シャーウッド・アンダーソン いびつな者たちの群像劇

シャーウッド・アンダーソンの代表作 『ワインズバーグ、オハイオ』は、1919年にアメリカ人作家シャーウッド・アンダーソン(Sherwood Anderson)によって書かれた連作短編集である。原題は『Winesburg, Ohio』。 日本国内では戦前より邦訳が出ており、まずは1…

『死にたがりの君に贈る物語』綾崎隼 小説家と物語を愛するもののお話

綾崎隼の40冊目! 2021年刊行作品。綾崎隼(あやさきしゅん)は2010年のデビュー以来、数々の作品を上梓してきたが、40冊目の著作となるのが本書『死にたがりの君に贈る物語』である。表紙イラストはorieが担当している。 綾崎隼の作品を読むのは二作目。先…

『クラインの壺』岡嶋二人 30年以上前に描かれたバーチャルリアリティモノの傑作

岡嶋二人、最後の作品 1989年刊行作品。最初の単行本は懐かしの新潮ミステリー倶楽部からの登場だった。 クラインの壷 (新潮ミステリー倶楽部) 作者:岡嶋 二人 新潮社 Amazon 新潮文庫版は1993年に登場。個人的にはこのカバーデザインがいちばんしっくり来る…

『感応グラン=ギニョル』空木春宵 たぐいまれな奇想、傷みと呪縛からの解放をえがく

空木春宵、初の作品集 2021年刊行作品。東京創元社のミステリ誌『ミステリーズ!』や、アンソロジーシリーズ「GENESiS」、Webメディアの「Webミステリーズ!」などに掲載されていた作品を単行本化したもの。早川書房の『SFが読みたい! 2022年版』の「ベストSF…

『蒲生邸事件』宮部みゆき 普通の人間がまっとうに生きていくことで生まれる感動

SFにしてミステリ、宮部みゆきの20年過ぎても色褪せない名作 1996年作品。『蒲生邸事件』は「がもうていじけん」と読む。「サンデー毎日」に連載されていたもの。第18回(1997年)の日本SF大賞受賞作品。単行本版は毎日新聞社から。 蒲生邸事件 作者:宮部 み…

『あの図書館の彼女たち』ジャネット・スケスリン・チャールズ 戦時の図書館で働いた女性たちの物語

ジャネット・スケスリン・チャールズの大ヒット作 本日ご紹介する『あの図書館の彼女たち』は、2022年刊行作品。訳者は髙山祥子。オリジナルの米国版は2020年刊行で、原題は『The Paris Library』。 作者のジャネット・スケスリン・チャールズ(Janet Skeslien C…

『探偵大戦』似鳥鶏 特殊能力を持つ探偵たちの競演

似鳥鶏の最新作は異能探偵バトル 2021年刊行作品。2007年『理由あって冬に出る』でのデビュー以来、市立高校シリーズ、戦力外捜査官シリーズ他、多数の作品をリリースし続けている似鳥鶏(にたどりけい)の最新作である。 推理大戦 作者:似鳥鶏 講談社 Amazo…

『法廷占拠 爆弾2』呉勝浩 スズキタゴサクを裁く法廷が何者かに占拠されたら!?

『爆弾』の続篇が登場 2024年刊行作品。呉勝浩(ごかつひろ)の14作目。 2023年版の「このミステリーがすごい」、「ミステリが読みたい」でいずれも1位を獲得した『爆弾』の続篇である。 ミステリ系ランキングの結果はこんな感じ。『爆弾』に比べるとランキ…

『残月記』小田雅久仁 月はそれぞれの人間の心の闇に昇ってくる

日本SF大賞受賞作 2021年刊行作品。双葉社の小説誌「小説推理」に2016年~2019年にかけて、散発的に掲載されていた三編の作品をまとめたもの。 作者の小田雅久仁(おだまさくに)は1974年生まれの小説家。2003年に『影舞(未刊)』が、第15回日本ファンタジ…

『永劫館超連続殺人事件 魔女はXと死ぬことにした』南海遊 道連れの魔女と密室殺人の謎

今週のお題「読んでよかった・書いてよかった2024」に参戦! 館×密室×タイムループ 2024年刊行作品。作者の南海遊(みなみあそゔ)は1986年生まれの小説家。小説投稿サイトである「小説家になろう」出身。「小説家になろう」に投稿されていた、『傭兵と小説…

『負けヒロインが多すぎる!2』雨森たきび マケイン第二巻は焼塩檸檬編!

『負けヒロインが多すぎる!』シリーズの二冊目 2021年11月刊行作品。雨森(あまもり)たきびによる『負けヒロインが多すぎる!』シリーズの第二作。第一巻の刊行が2021年の7月なので僅か四カ月での新作だ。わたし的にライトノベルを常時読まなくなって久し…

『死んだ山田と教室』金子玲介 第65回メフィスト賞受賞作品

金子玲介のデビュー作 2024年刊行。第65回のメフィスト賞を受賞した作品。作者の金子玲介(かねこれいすけ)は1993年生まれの作家。本作にて作家としてのデビューを果たしている。 初出は講談社のWeb小説誌『メフィスト』2023年WINTER特別号。単行本の表紙を…

『星虫』岩本隆雄 第1回ファンタジーノベル大賞最終候補作 1990年代に書かれたジュブナイルエスエフの良作

岩本隆雄のデビュー作 1990年刊行作品。かれこれ35年近く前の作品になってしまった。岩本隆雄(いわもとたかお)のデビュー作だ。元々は新潮社主催の第1回ファンタジーノベル大賞の最終候補作だった。残念ながら選には漏れたものの、新設された(二年で消え…

『カント・アンジェリコ 』高野史緒 カストラートの歌声と、絶対王政時代のハッキングバトル

高野史緒の第二作 1996年刊行作品。第6回日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となった『ムジカ・マキーナ』に続く、高野史緒(たかのふみお)の第二作。 カント・アンジェリコ 作者:高野 史緒 講談社 Amazon 単行本版の刊行から二十年近く、長期にわたっ…

『禁忌の子』山口未桜 現役の医師が書いた医療ミステリ×本格ミステリ

山口未桜のデビュー作 2024年刊行作品。作者の山口未桜(やまぐちみお)は1987年生まれの現役医師。本作『禁忌の子(きんきのこ)』で第34回の鮎川哲也賞を受賞し、作家デビューを果たしている。 医師で作家といえば、最近で有名なのは知念実希人(ちねんみ…

『まだ終わらないで、文化祭』藤つかさ 自分らしさって本当に必要なの?

藤つかさの第二作 2023年刊行作品。作者の藤(ふじ)つかさは1992年生まれのミステリ作家。デビュー作である『その意図は見えなくて』に続く、第二作が本作『まだ終わらないで、文化祭』である。表紙絵は前作に引き続き、イラストレータの中野カヲルが担当し…

『負けヒロインが多すぎる!』雨森たきび すべての恋愛の敗者たちに捧げる

雨森たきびのデビュー作 2021年刊行作品。作者の雨森(あまもり)たきびは、2020年の第15回小学館ライトノベル大賞にて、『俺はひょっとして、最終話で負けヒロインの横にいるポッと出のモブキャラなのだろうか』でガガガ賞を受賞。同作を『負けヒロインが多…

『ひとりぼっちのソユーズ』七瀬夏扉 今日から、あなたは私のスプートニクになるの

SFジュブナイルの佳品が完全版で帰って来た 2017年刊行作品。もともとは小説投稿サイト「カクヨム」に掲載されていた作品を、改稿のうえで文庫化したもの。KADOKAWA系列のライトノベルレーベル、富士見L文庫からの発売だった。表紙および扉絵のイラストはア…

『どうせ、この夏は終わる』野宮有 人類最後の夏をあなたならどう過ごす?

野宮有の10作目! 2023年刊行作品。作者の野宮有(のみやゆう)は、第25回の電撃小説大賞で『シルバー・ブレット -SILVER BULLET-』が選考委員奨励賞を受賞。改題されて電撃文庫から2019年に発売された『マッド・バレット・アンダーグラウンド』がデビュー作と…

『すみれ屋敷の罪人』降田天 「回想の殺人」を描いた良作ミステリ

降田天の三作目 2018年刊行作品。降田天(ふるたてん)は、萩野 瑛(はぎのえい)と鮎川颯(あゆかわそう)の両名で構成される合作作家のペンネームである。 このコンビ作家の活動歴は長い。鮎川はぎ名義で刊行された「横柄巫女と宰相陛下」シリーズで2007年…

『ここはすべての夜明けまえ』間宮改衣 わたしのかぞくのはなし

間宮改衣のデビュー作 2024年刊行作品。作者の間宮改衣(まみやかい)は大分県出身で、1992年生まれ。第11回ハヤカワSFコンテストに、本作『ここはすべての夜明けまえ』にてエントリし、特別賞を受賞。作家としてのデビューを果たしている。 表紙イラストは…

『チョコレートコスモス』恩田陸 続篇の『ダンデライオン』はいつ出るの!!

続きが気になる未完シリーズの第一作 2006年刊行作品。サンデー毎日の2006年6月27日号から2005年8月7日号にかけて連載された作品を単行本化したもの。さまざまな媒体で連載を持ったことのある恩田陸だけど、週刊誌連載はこれが初めてかな? チョコレートコス…

『誰が勇者を殺したか』駄犬 魔王は斃れた、そして勇者だけが還らなかった

10万部突破の大人気作品 2023年刊行作品。作者の駄犬(だけん)は、小説投稿サイト「小説家になろう」出身のライトノベル作家。インタビュー記事によると40代の会社員。かつては書籍編集の仕事に就いていたこともあるみたい。 駄犬は『誰が勇者を殺したか』…

『黒牢城』米澤穂信 直木賞受賞!荒木村重✖黒田官兵衛の歴史ミステリ

米澤穂信の歴史ミステリが登場 2021年刊行作品。タイトルの『黒牢城』は「こくろうじょう」と読む。英題は『Arioka Citadel case』。 KADOKAWAのWEBマガジン「文芸カドカワ」及び「カドブンノベル」に2019年~2020年にかけて掲載されていた作品に、加筆修正…

『老虎残夢』桃野雑派 武俠小説×本格ミステリ×歴史小説×〇〇

第67回江戸川乱歩賞受賞作品 2021年刊行作品。タイトルの『老虎残夢』は「ろうこざんむ」と読む。作者の桃野雑派(もものざっぱ)は1980年生まれ。本作にて第67回江戸川乱歩賞を受賞し、作家デビューを果たしている。同時受賞作は伏尾美紀(ふせおみき)の『…

『火蛾(ひが)』古泉迦十 イスラム世界を舞台とした異色のミステリ

※以前に書いたエントリですが、文庫化に際して再読し、若干内容を修正、追記しました! 謎のメフィスト賞作家、古泉迦十 2000年刊行作品。第17回メフィスト賞受賞作である。 タイトルの『火蛾』は「ひが」と読み、作者名の古泉迦十は「こいずみかじゅう」と…