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2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

4つ★(おススメ!)

『エレファントヘッド』白井智之 複雑に入り組んだ本格ミステリの迷宮

2023年のミステリ界を席巻した一作 2023年刊行。書下ろし作品。作者の白井智之(しらいともゆき)は1990年生まれのミステリ作家。ここ数年は意欲作を連発し、年末のミステリ系各賞の常連となった感がある。長編作品としては2022年の『名探偵のいけにえ 人民…

『暗がりで本を読む』徳永圭子 きっとあなたに届く書評集

現役書店員による書評集 2020年刊行。筆者の徳永圭子(とくながけいこ)は1974年生まれの現役書店員。こちらの記事を読む限りでは丸善の方である様子。「本屋大賞、地域イベントのブックオカなどの本のイベントに実行委員として携わる」とあるので、いわゆる…

『この銀盤を君と跳ぶ』綾崎隼 二人の天才とそれぞれの伴走者の物語

綾崎隼のスポ根フィギュアスケート小説が登場 2023年刊行作品。作者の綾崎隼(あやさきしゅん)は1981年生まれ。第16回の電撃小説大賞選考委員奨励賞を受賞した『蒼空時雨』(応募時タイトルは『夏恋時雨』)で作家デビューを果たしている。メディアワークス…

『赤いモレスキンの女』アントワーヌ・ローラン 人は人生を変えられる

小粋な現代のおとぎ話 2020年刊行作品。オリジナルのフランス版は2014年刊行。原題は「La femme au carnet rouge」である。 作者のアントワーヌ・ローラン(Antoine Laurain)は1972年生まれ。 2007年にドゥルオー賞を受賞した『行けるなら別の場所で(Ailleu…

『光の帝国』『蒲公英草紙』『エンド・ゲーム』恩田陸の「常野物語」シリーズをまとめて紹介!

本日は恩田陸、初期の人気シリーズ「常野(とこの)物語」三作の感想をまとめてお届けしたい。 「常野(とこの)物語」シリーズの読む順番 恩田陸の「常野物語」シリーズの既刊は以下の三作。 光の帝国 常野物語(1997年) 蒲公英草紙(たんぽぽそうし) 常…

『王とサーカス』米澤穂信を『さよなら妖精』へのアンサーとして読む

ミステリランキング三冠に輝いた話題作 2015年刊行作品。この年の「週刊文春ミステリーベスト10」「ミステリが読みたい!」「このミステリーがすごい!」すべての国内部門で第一位を獲得する三冠を達成。米澤穂信(よねざわほのぶ)の代表作のひとつとなって…

『ねじの回転』ヘンリー・ジェイムズ ヴィクトリア朝時代のイギリスを舞台とした心霊小説

ヘンリー・ジェイムズの代表作のひとつ 1898年作品。原題は「The Turn of the Screw」。古い翻訳だと『ねじのひねり』とされていることもあるかな。作者のヘンリー・ジェイムズ(Henry James)は1843年生まれ。アメリカで生まれ、イギリスで活躍した小説家。19…

『ハイファに戻って/太陽の男たち』ガッサーン・カナファーニー 難民となったパレスチナ人の苦難を綴った作品集

爆殺されたパレスチナ人作家 作者のガッサーン・カナファーニー(Ghassan Fayiz Kanafani/غسان كنفاني)は、1936年生まれのパレスチナ人。12歳の時に、ユダヤ人系武装組織に故郷を襲撃され難民となる。その後、作家、ジャーナリストとして活躍したが、1972年…

『教室が、ひとりになるまで』浅倉秋成 同調圧力の檻の中で

本格ミステリ大賞、日本推理作家協会賞候補作 2019年刊行作品。筆者の浅倉秋成(あさくらあきなり)は1989年生まれ。デビュー作は2012年に講談社BOX新人賞“Powers”にてPowersを受賞した『ノワール・レヴナント』。浅倉冬至の筆名で『進撃の巨人』のノベライ…

『アリアドネの声』井上真偽 無理だと思ったらそこが限界なんだ!

ミステリ系各賞上位ランクインの話題作 2023年刊行作品。書下ろし。表紙イラストは尾崎伊万里(おざきいまり)によるもの。 作者の井上真偽(いのうえまぎ)は、第51回メフィスト賞受賞作、2015年刊行の『恋と禁忌の述語論理』がデビュー作。年齢、性別不明…

『[少女庭国]』矢部嵩 壮大な変奏曲、少女たちに課せられた「卒業試験」

矢部嵩の第四作 2014年刊行作品。早川書房のハヤカワSFシリーズJコレクションからのリリースだった。2013年の『魔女の子供はやってこない』に続く、矢部嵩(やべたかし)の第四作となる。ちなみにタイトルの『[少女庭国]』は「[しょうじょていこく]」と読む…

『invert 城塚翡翠倒叙集』相沢沙呼 「invert」に込められた意味を考えてみよう

文庫化されたのでちょこっと修正しました。 翡翠ちゃんにまた会える! 2021年刊行作品。「雲上の晴れ間」「泡沫の審判」「信用ならない目撃者」の三篇を収録した短編(中編?)作品集。「泡沫の審判」のみ、講談社の小説誌「小説現代」の2021年1月号に掲載。…

『存在のすべてを』塩田武士 未曾有の二児同時誘拐事件と、それからの三十年

塩田武士の新たな代表作になりそう 2023年刊行作品。朝日新聞社の週刊誌「週刊朝日」の2022年4月1日号~2023年6月9日号にかけて連載されていた作品を単行本化したもの。初出時のタイトルは「未到の静けさ」だった。2023年版の週刊文春ミステリ・ベスト10では…

『スモールワールズ』一穂ミチ 歪な家族の在りかたを描いた短編集

本屋大賞で第3位&直木賞候補作 2021年刊行作品。講談社の小説誌「小説現代」に2020年~2021年にかけて掲載されていた作品を単行本化したもの。BL作品の書き手として知られていた、一穂(いちほ)ミチが、2016年の『きょうの日はさようなら』に続いて、一般…

『近畿地方のある場所について』背筋 見つけてくださってありがとうございます。

情報をお持ちの方はご連絡ください 2023年刊行作品。作者の背筋(せすじ)は、KADOKAWAの小説投稿サイトカクヨムを中心に活躍している作家。年齢、性別、属性などは一切公開されていない覆面作家だ。本作『近畿地方のある場所について』がデビュー作ってこと…

『白い病』カレル・チャペック コロナ禍の今だから読みたい疫病下の世界

疫病が蔓延する世界を描いた戯曲 『白い病(Bílá nemoc)』は、チェコスロバキア(当時)の作家カレル・チャペック(Karel Čapek)が1937年に発表した戯曲である。 岩波文庫版には2020年9月とごく最近の登場である。内容的にコロナ禍の昨今、世に送り出すには…

『レーエンデ国物語』多崎礼 呪われた地、運命との出会い、人生を選ぶということ

国産の骨太ハイファンタジーが登場 2023年6月刊行作品。作者の多崎礼(たさきれい)は生年非公開の小説家。デビュー作は2006年、中央公論新社主催のC★NOVELS大賞を受賞した『煌夜祭(こうやさい)』。現代ビジネスのインタビュー記事によると23歳で広告代理…

『ちぎれた鎖と光の切れ端』荒木あかね 孤島に取り残された八人の男女、そして……。

荒木あかね、乱歩賞受賞後一作目 2023年刊行作品。2022年に『此の世の果ての殺人』で最年少の江戸川乱歩賞受賞を果たした、荒木あかね待望の第二作となる。『此の世の果ての殺人』は週刊文春のミステリベストテンで第5位にランクインされるなど高い評価を受…

『夜光貝のひかり』遠藤由実子 少年と少女の出会い、南の島の光と闇

遠藤由実子の第二作が登場 2023年刊行。書下ろし作品。作者の遠藤由実子(えんどうゆみこ)は1991年生まれの小説家。巻末のプロフィールを拝見する限り、本業は学校教員をされている模様。デビュー作は2019年の『うつせみ屋奇譚』。よって四年振りの新作であ…

『盤上に君はもういない』綾崎隼 ただひたすらに「愛の物語」だった!

綾崎隼が将棋小説に挑戦 2020年刊行作品。作者の綾崎隼(あやさきしゅん)は1981年生まれ。作家デビューは2010年。電撃小説大賞で選考委員奨励賞を受賞した『蒼空時雨』(応募時タイトルは『夏恋時雨』)。メディアワークス文庫を中心に、二十冊以上の著作が…

『可燃物』米澤穂信 本格ミステリ×警察小説×群馬県の魅力

米澤穂信の警察小説が登場 2023年刊行作品。文芸春秋の刊行するエンタテイメント系小説誌「オール讀物(よみもの)」に2020年~2023年にかけて、散発的に掲載されていた作品を単行本化したもの。本作には、米澤穂信(よねざわほのぶ)作品のお約束として英題…

『ロボット』カレル・チャペック 人によって作られた存在が反乱を起こしたら?

作者のカレル・チャペック(Karel Čapek)は1890年生まれのチェコスロバキア人(当時)作家、劇作家。1938年没。 本作は1920年に発表され、初演は1920年。『ロボット』のタイトルで知られているが、もともとのタイトルは『R.U.R.(Rossumovi univerzální robo…

『海がきこえるⅡ〜アイがあるから〜』氷室冴子 1990年代の恋愛シーンがよみがえる青春小説の佳品

拓と里伽子にもう一度会える 1995年刊行作品。1993年に刊行された『海がきこえる』の続編である。前作の『海がきこえる』は徳間書店のアニメ情報誌「アニメージュ」の連載作品であったが、本作は書下ろし作品として上梓されている。 前作に引き続き、表紙、…

『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』斜線堂有紀 愛する人の死が三億の価値を持つとしたら?

斜線堂有紀の第五作品 2019年刊行作品。『私が大好きな小説家を殺すまで』に続く、斜線堂有紀(しゃせんどうゆうき)の第五作。 個人的に『私が大好きな小説家を殺すまで』から始まる、『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』、『恋に至る病』の三作を、…

『十戒(じっかい)』夕木春央 『方舟』はブラフじゃなかった!今回も抜群の面白さ

夕木春央の第五作 2023年刊行作品。作者の夕木春央(ゆうきはるお)は1993年生まれのミステリ作家。 デビュー作は2019年のメフィスト賞受賞作『絞首商會(こうしゅしょうかい)』。第二作は2021年の『サーカスから来た執達吏(しったつり)』。そして、2022…

『推し、燃ゆ』宇佐美りん 第164回(2020年度下半期)芥川賞受賞作品

宇佐美りんの第二作 2020年刊行作品。『文藝』秋季号(2020年7月号)に発表された作品を書籍化したもの。第164回(2020年度下半期)の芥川賞受賞作品である。 筆者の宇佐美りんは1999年生まれ。2019年のデビュー作『かか』でいきなり文藝賞、更に三島由紀夫…

『サマー/タイム/トラベラー』新城カズマ 夏に読みたい青春エスエフ小説

夏に読みたい時間モノ 2005年刊行作品。第37回星雲賞日本長編の部の受賞作である。作者の新城(しんじょう)カズマは1991年から富士見ファンタジア文庫で上梓された『蓬莱学園』シリーズがデビュー作(懐かしい)。 本作は、タイトルの通り「夏」に読んでお…

『世界でいちばん透きとおった物語』杉井光 電子書籍では味わえない至福の読書体験がここに!

20万部突破の大ヒット作に! 作者の杉井光(すぎいひかる)は1978年生まれ。デビュー作は2006年の『火目の巫女(ひめのみこ)』。第二作の『神様のメモ帳』はアニメ化もされて、シリーズ累計100万部を超える大ヒット作に。第三作の『さよならピアノソナタ』…

『ピエタ』大島真寿美 追憶、ありえたかもしれない未来、そして人生は続く

2012年の本屋大賞第三位 2011年刊行作品。作者の大島真寿美(おおしまますみ)は1962年生まれ。1992年に「春の手品師」で文學界新人賞を受賞。同年、すばる文学賞最終候補となった『宙の家』がデビュー作。キャリアの長い作家だが、俄然注目を浴びたのが、20…

『バガージマヌパナス』池上永一 わたしたちの島の話

第六回日本ファンタジーノベル大賞受賞作 1994年刊行作品。池上永一(いけがみえいいち)のデビュー作にして、第六回日本ファンタジーノベル大賞受賞作である。ちなみに同時に大賞を受賞したのが銀林みのるの怪作『鉄塔 武蔵野線』なのだった。この年は当た…