小説
池澤夏樹の短編集 1995年刊行作品。最初の単行本は文芸春秋から。谷崎潤一郎賞を取った『マシアス・ギリの失脚』の二年後に出た作品。 「文學界」「スイッチ」「毎日新聞」「キャラウェイ」「クレヨン」「新潮現代童話館」「リテラリー スイッチ」「群像」な…
予備知識なしで読んで欲しい 1995年刊行作品。ドイツ人作家ベルンハルト・シュリンク(Bernhard Schlink)による小説作品。原題は『Der Vorleser』。日本版は2000年刊行。新潮社の海外文学レーベル「新潮クレスト・ブックス」からの登場だった。 朗読者 (新…
珠玉のシュペルヴィエル短編集 2006年刊行作品。オリジナルのフランス版は1931年に発表されていて原題は『L'Enfant de la haute mer』。 作者のジュール・シュペルヴィエル(Jules Supervielle)は1884年生まれの詩人、作家。1960年に没している。フランス人…
リュドミラ・ウリツカヤの出世作 2002年刊行作品。新潮社の外国文学レーベル新潮クレスト・ブックスからの登場。オリジナルのロシア版は1992年に発表されている。原題は『Сонечка』。 作者のリュドミラ・ウリツカヤ(Людмила Улицкая)は1943年生まれのロシア人…
ライトノベルには珍しいプロ野球小説 1995年刊行作品。谷山由紀(たにやまゆき)のデビュー作となる。今は亡き朝日ソノラマの小説誌「グリフォン」に93年投稿の「コンビネーション(本作ではジンクスに改題)」に始まり、以後数年をかけて執筆された連作短編…
パトリック・マッケイブの出世作 2022年刊行作品。オリジナル版は1992年に刊行されており原題は『The Butcher Boy』。作者のパトリック・マッケイブ(Patrick McCabe)は1955年生まれのアイルランド人作家。『ブッチャー・ボーイ』が四作目。 本作はイギリスの…
2007年のピューリッツァー賞受賞作 オリジナルの米国版は2006年刊行で原題は『The Road』とそのまんま。 邦訳版は2008年に単行本版が早川書房から刊行されている。訳は黒原敏行(くろはらとしゆき)。 ザ・ロード 作者:コーマック・マッカーシー 早川書房 Am…
2022年もすでに二週間が経過してしまい、やや時機を逸してしまった感が無きにしも非ずだが、恒例の「〇〇年に読んで面白かった小説10選」をお届けしたい(10冊に絞れなかったので今年は11冊だけど)。 特に順位などは無し。また、「2021年に刊行された作品」…
アガサ・クリスティー賞大賞&直木賞候補作、衝撃のデビュー作 2021年刊行作品。作者の逢坂冬馬(あいさかとうま)は1985年生まれ。本作『同士少女よ、敵を撃て!』で、第11回のアガサ・クリスティー賞の大賞を受賞して作家デビューを果たしている。 逢坂冬馬…
とにかく展開が読めない作品 2003年刊行。いやホントにもう古川日出男(ふるかわひでお)作品の展開の読めなさ加減は異常。この読めなさ加減を楽しむ一冊である。 サウンドトラック 作者:古川 日出男 集英社 Amazon 集英社文庫版は2006年に登場。この際に上…
シャーウッド・アンダーソンの代表作 『ワインズバーグ、オハイオ』は、1919年にアメリカ人作家シャーウッド・アンダーソン(Sherwood Anderson)によって書かれた連作短編集である。原題は『Winesburg, Ohio』。 日本国内では戦前より邦訳が出ており、まずは1…
イタリアのベストセラー作品 1995年刊行作品。原題「Compagnia dei Celestini」でオリジナルのイタリア版は1992年刊行。作者のステファノ・ベンニ(Stefano Benni)はイタリア人作家で1947年生まれ。邦訳されている作品は少ないながらも、本国では相応の実績…
森雅裕が描く戦闘美少女モノ 森雅裕(もりまさひろ)は1953年生まれの作家。東京藝術大学の美術学部卒。 デビュー作は1985年の『画狂人ラプソディ』。この作品は第5回の横溝正史ミステリ大賞で佳作入選。続く、『モーツァルトは子守唄を歌わない』では、第31…
各巻ごとに書いていたあさのあつこの『バッテリー』シリーズ全六巻の感想を、ひとつの記事に集約化しました。 シリーズ累計発行部数1,000万部越えの超ベストセラー おススメ度、こんな方におススメ! 『バッテリー』あらすじ 『バッテリーII』あらすじ 『バ…
シリーズ、三年ぶりの新作 2021年刊行作品。『コーヒーが冷めないうちに』『この嘘がばれないうちに』『思い出が消えないうちに』に続くシリーズ四作目。三年ぶりの新作である。川口俊和(かわぐちとしかず)の小説作品としては本作が四冊目。この人、このシ…
白乙一の初期代表作を収録 2003年刊行作品。既刊であった『きみにしか聞こえない』『さみしさの周波数』『失踪HOLIDAY』の中から五作品を抜粋、更に書き下ろしを一編(「マリアの指」)を加えて、単行本化したのが本書。 各編の初出は以下の通り。 『きみに…
古川日出男の三作目 1999年刊行作品。『ウィザードリィ外伝II 砂の王(1)』『13』に続く、古川日出男(ふるかわひでお)の第三作。『ウィザードリィ外伝II 砂の王(1)』は著作にカウントされないこともあるので、そう考えると第二作ということになる。いず…
飯嶋和一の貴重な現代小説集 1989年刊行作品。河出書房新社主催の第25回文藝賞受賞作である表題作に加え、講談社主催の第40回小説現代新人賞を受賞した『プロミスト・ランド』他、1編を収録した作品集。 極めて寡作でありながら骨太に男の生き様を描き、豊穣…
自身の体験を元にした糖尿病小説! 2006年刊行。『ラス・マンチャス通信』『忘れないと誓ったぼくがいた』に続く、平山瑞穂の三作目。 帯のコピー曰く、なんと世界初の糖尿病小説らしい。33歳の若さで糖尿病と診断されてしまった作者自身の経験に基づくオート…
三年ぶりのシリーズ最新作『さよならも言えないうちに』が出たので、過去記事を再プッシュ。本日はシリーズ三作目の『思い出が消えないうちに』を再度ご紹介したい。 不思議な喫茶店の物語第三弾 2018年刊行作品。『コーヒーの冷めないうちに』『この嘘がば…
『沈黙』と併せて読みたい一作 2000年刊行。書き下ろし。古川日出男(ふるかわひでお)の四作目。 前作である『沈黙』に少しだけ言及されていて、その後作中でのフォローが無かったアビシニアン少女についての物語。 2003年に登場した文庫版では『沈黙/アビ…
三年ぶりのシリーズ最新作『さよならも言えないうちに』が出たので、過去記事をちょっとだけリライトの手抜き更新二回目(ということは三回目もある)。 『コーヒーの冷めないうちに』の続編が登場 2017年刊行。『コーヒーの冷めないうちに』シリーズの二作…
久しぶりに新刊が出た! シリーズ四作目。三年ぶりの新作となる『さよならも言えないうちに』が刊行されたので、『コーヒーが冷めないうちに』シリーズを再度ご紹介したい。 オリジナルは演劇作品だった シリーズ一作目となる『コーヒーが冷めないうちに』は…
「永遠」に惹かれた少女時代を描く 2003年刊行作品。集英社の小説誌『小説すばる』に、1999年~2002年にかけて掲載されていた作品をまとめたもの。 永遠の出口 作者:森 絵都 集英社 Amazon 集英社文庫版は2006年に登場している。 おススメ度、こんな方におス…
池澤夏樹、最初の長編作品 1984年刊行作品。翻訳家、詩人として既に活動していた池澤夏樹(いけざわなつき)が、初めて送り出した長編小説が本作である。 中公文庫版は1990年に刊行されている。 夏の朝の成層圏 (中公文庫) 作者: 池澤夏樹 出版社/メーカー: …
川端裕人のデビュー作 1998年刊行作品。第15回のサントリーミステリー大賞の優秀作品賞受賞作。作者の川端裕人(かわばたひろと)は1964年生まれで、本作がデビュー作となる。ちなみに大賞は結城五郎の『心室細動』。 夏のロケット 作者:川端 裕人 文藝春秋 …
ボウエン作品が日本語で読めるようになった 作者のエリザベス・ボウエン(Elizabeth Bowen)は1899年生まれ。アイルランド生まれの小説家。1973年没。 本作『ホテル』は2021年刊行作品。原題は『The Hotel』で1927年の刊行。100年近く前の作品ということにな…
桜庭一樹の転機となった作品 2003年刊行作品。ファミ通文庫からの刊行。当初はライトノベルレーベルからの登場であった。イラストは高橋しんが担当。 桜庭一樹は1999年の『AD2015隔離都市 ロンリネス・ガーディアン』でデビューしているが、最初の数年間は内…
乙一初のスニーカー文庫作品 2000年刊行作品。 乙一(おついち)としては四作目の作品。JUMP j BOOKSの『夏と花火と私の死体』でデビューし、その後集英社メインで作品を発表してきたこの作家としては、初めての他社作品ということになる。もちろんスニーカ…
宇佐美りんの第二作 2020年刊行作品。『文藝』秋季号(2020年7月号)に発表された作品を書籍化したもの。第164回(2020年度下半期)の芥川賞受賞作品である。 筆者の宇佐美りんは1999年生まれ。2019年のデビュー作『かか』でいきなり文藝賞、更に三島由紀夫…