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2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

小説

『ハイファに戻って/太陽の男たち』ガッサーン・カナファーニー 難民となったパレスチナ人の苦難を綴った作品集

爆殺されたパレスチナ人作家 作者のガッサーン・カナファーニー(Ghassan Fayiz Kanafani/غسان كنفاني)は、1936年生まれのパレスチナ人。12歳の時に、ユダヤ人系武装組織に故郷を襲撃され難民となる。その後、作家、ジャーナリストとして活躍したが、1972年…

『ザリガニの鳴くところ』ディーリア・オーエンズ 2021年本屋大賞翻訳小説部門第1位作品

ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』のあらすじ、ネタバレ感想、犯人、タイトルの意味等、作品の魅力についてご紹介します。

『スモールワールズ』一穂ミチ 歪な家族の在りかたを描いた短編集

本屋大賞で第3位&直木賞候補作 2021年刊行作品。講談社の小説誌「小説現代」に2020年~2021年にかけて掲載されていた作品を単行本化したもの。BL作品の書き手として知られていた、一穂(いちほ)ミチが、2016年の『きょうの日はさようなら』に続いて、一般…

『盤上に君はもういない』綾崎隼 ただひたすらに「愛の物語」だった!

綾崎隼が将棋小説に挑戦 2020年刊行作品。作者の綾崎隼(あやさきしゅん)は1981年生まれ。作家デビューは2010年。電撃小説大賞で選考委員奨励賞を受賞した『蒼空時雨』(応募時タイトルは『夏恋時雨』)。メディアワークス文庫を中心に、二十冊以上の著作が…

『山ん中の獅見朋成雄』舞城王太郎が描く異界往還譚

ミステリの制約から解き放たれた舞城王太郎作品 2003年刊行作品。講談社の文芸誌「群像」の2003年7月号に掲載された作品を単行本化したもの。舞城王太郎(まいじょうおうたろう)としては、七作目の作品。一つ前に刊行された『阿修羅ガール』は三島由紀夫賞…

『推し、燃ゆ』宇佐美りん 第164回(2020年度下半期)芥川賞受賞作品

宇佐美りんの第二作 2020年刊行作品。『文藝』秋季号(2020年7月号)に発表された作品を書籍化したもの。第164回(2020年度下半期)の芥川賞受賞作品である。 筆者の宇佐美りんは1999年生まれ。2019年のデビュー作『かか』でいきなり文藝賞、更に三島由紀夫…

『白の闇』ジョセ・サラマーゴ ノーベル賞作家が描く視力を奪う感染症の恐怖

ノーベル文学賞受賞者が描く感染症小説 筆者のジョセ・サラマーゴ(José de Sousa Saramago)は1922年ポルトガル生まれの作家。1998年にはノーベル文学賞を受賞。2010年に87歳で没している。 『白の闇』のオリジナル版は1995年刊。原題は『Ensaio sobre a ceg…

『やさしさを忘れぬうちに』川口俊和 累計140万部突破「コーヒーが冷めないうちに」シリーズの第五弾!

「コーヒーが冷めないうちに」シリーズの五作目! 2023年刊行作品。『コーヒーが冷めないうちに』『この嘘がばれないうちに』『思い出が消えないうちに』『さよならも言えないうちに』に続く、「コーヒーが冷めないうちに」シリーズの五作目に相当する。前作…

『どうかこの声が、あなたに届きますように』浅葉なつ 声は届く。あなたに届く。 

第一回「読者による文学賞」受賞作 2019年刊行作品。作者の浅葉(あさば)なつは『空をサカナが泳ぐ頃』が、第17回電撃小説大賞でメディアワークス文庫賞を受賞して作家デビューを果たしている。代表作は累計150万部を超えた『神様の御用人』シリーズであろ…

『忘れないと誓ったぼくがいた』平山瑞穂の第二作は切なさあふれる恋愛小説

平山瑞穂の第二作品 2006年刊行作品。『ラス・マンチャス通信』の平山瑞穂(ひらやまみずほ)が、ファンタジーノベル大賞受賞後一年半の期間を経て上梓した二作目が本書である。 忘れないと誓ったぼくがいた 作者:平山 瑞穂 新潮社 Amazon 新潮文庫版は2008年…

『つきのふね』森絵都 空から救いの船は降りてこない

マイファースト森絵都作品 1998年刊行作品。野間児童文芸書受賞作品。わたし的には本作が初森絵都(もりえと)であった。たくさん作品が出ているので、どれから読むべきか迷ったけど、一番ページ数が少なそうなものからチャレンジしてみた次第。 つきのふね …

『ナイフ投げ師』スティーヴン・ミルハウザー 幻想、不穏さ、謎の歴史、他では読めない独特の世界

ミルハウザーの第三短編集 オリジナルの米国版は1998年に刊行されており原題は「The Knife Thrower」。 作者のスティーヴン・ミルハウザー(Steven Millhauser)は1943年生まれのアメリカ人作家。デビュー作は1972年の『エドウィン・マルハウス―あるアメリカ…

『停電の夜に』ジュンパ・ラヒリ 不安、喪失感、行き違う心、そして言ってはいけない言葉

ジュンパ・ラヒリのデビュー作 2000年刊行作品。新潮社の外国文学レーベル「新潮クレスト・ブックス」からの登場だった。オリジナルの米国版は1999年刊行で、原題は『Interpreter of Maladies(病気の通訳)』。 作者のジュンパ・ラヒリ(Jhumpa Lahiri)は1967…

『熊の場所』初の短編集、ミステリのくびきから解き放たれた舞城王太郎

舞城王太郎の四作目 2002年刊行。「群像」掲載の二作に書き下ろし(「ピコーン!」)を加えて単行本化したもの。作中の短編「熊の場所」は第15回の三島由紀夫賞の候補作品である。 舞城王太郎(まいじょうおうたろう)としては、『煙か土か食い物』『暗闇の中…

『光のとこにいてね』一穂ミチ 運命と出会ってしまった結珠と果遠

一穂ミチの一般小説、五作目 2022年刊行作品。文藝春秋の小説誌「別冊文藝春秋」に、2021年5月号~2022年9月号にかけて連載されていた作品を単行本化したもの。第168回の直木賞候補作品でもある。 一穂ミチ(いちほいち)はBL小説の書き手としては15年のキャ…

『アホウドリの迷信 』岸本佐知子・柴田元幸セレクトによる、現代英語圏異色短編コレクション

魅惑の異色短編アンソロジー 2022年刊行作品。編者にして翻訳を担当しているのは、岸本佐知子(きしもとさちこ)と、柴田元幸(しばたもとゆき)の両名。 本書は、柴田元幸が編集長を務める文芸誌「MONKEY」の第23号で企画された特集「ここにいいものがある…

『曲り角』神吉拓郎 人生の転機が訪れた17人の男女の姿を描く

神吉拓郎の短編集が復刊 作者の神吉拓郎(かんきたくろう)は1928年生まれ。NHK出身の放送作家、小説家。1983年に『私生活』で直木賞を受賞。1994年に物故されている。 本日ご紹介する『曲り角』は、もともとは1985年に文藝春秋から刊行されていた作品。 曲…

『ベルカ、吠えないのか?』古川日出男 イヌから読み解く異色の現代史

二人称で描かれる異色の現代史 2005年刊行作品。古川日出男(ふるかわひでお)としては10作目。あまりお目にかかることが無い、二人称形態で書かれた小説作品である。 戦時下に置き去りにされた四頭のイヌのその後を描く章と、現代のロシアの物語が交互に描…

『羊と鋼の森』宮下奈都 唯一無二の「森」に出会えた人生

第13回本屋大賞受賞作 2015年刊行作品。第13回の本屋大賞受賞作品。『羊と鋼の森』は「ひつじとはがねのもり」と読む(わりとそのまんま)。文庫の帯なんかだと「伝説の三冠を達成!」などとあるが、本屋大賞のほかに、第4回ブランチブックアワード大賞2015、…

『異常(アノマリー)』エルヴェ・ル・テリエ 本当の意味で自分と向き合うということ

フランスで110万部売れたベストセラー作品 2022年刊行作品。加藤かおり訳。オリジナルのフランス版は2020年に発売されていて原題は『L’Anomalie』。作者のエルヴェ・ル・テリエ(Hervé Le Tellier)は、1957年生まれのフランス人作家。ジャーナリスト、数学者…

『骨は珊瑚、眼は真珠』池澤夏樹 取り戻しようのない喪失感を綴った短編集

池澤夏樹の短編集 1995年刊行作品。最初の単行本は文芸春秋から。谷崎潤一郎賞を取った『マシアス・ギリの失脚』の二年後に出た作品。 「文學界」「スイッチ」「毎日新聞」「キャラウェイ」「クレヨン」「新潮現代童話館」「リテラリー スイッチ」「群像」な…

『朗読者』ベルンハルト・シュリンク 誇り高き一人の女の物語

予備知識なしで読んで欲しい 1995年刊行作品。ドイツ人作家ベルンハルト・シュリンク(Bernhard Schlink)による小説作品。原題は『Der Vorleser』。日本版は2000年刊行。新潮社の海外文学レーベル「新潮クレスト・ブックス」からの登場だった。 朗読者 (新…

『海に住む少女』ジュール・シュペルヴィエル さまざまな孤独の在りようを綴った十編の作品集

珠玉のシュペルヴィエル短編集 2006年刊行作品。オリジナルのフランス版は1931年に発表されていて原題は『L'Enfant de la haute mer』。 作者のジュール・シュペルヴィエル(Jules Supervielle)は1884年生まれの詩人、作家。1960年に没している。フランス人…

『ソーネチカ』リュドミラ・ウリツカヤ すべてを受け入れることと本の中の世界の救済

リュドミラ・ウリツカヤの出世作 2002年刊行作品。新潮社の外国文学レーベル新潮クレスト・ブックスからの登場。オリジナルのロシア版は1992年に発表されている。原題は『Сонечка』。 作者のリュドミラ・ウリツカヤ(Людмила Улицкая)は1943年生まれのロシア人…

『コンビネーション』谷山由紀のデビュー作はプロ野球の世界を舞台とした連作短編小説

ライトノベルには珍しいプロ野球小説 1995年刊行作品。谷山由紀(たにやまゆき)のデビュー作となる。今は亡き朝日ソノラマの小説誌「グリフォン」に93年投稿の「コンビネーション(本作ではジンクスに改題)」に始まり、以後数年をかけて執筆された連作短編…

『ブッチャー・ボーイ』パトリック・マッケイブ むき出しの蔑視と悪意、絶望の中を堕ちていく

パトリック・マッケイブの出世作 2022年刊行作品。オリジナル版は1992年に刊行されており原題は『The Butcher Boy』。作者のパトリック・マッケイブ(Patrick McCabe)は1955年生まれのアイルランド人作家。『ブッチャー・ボーイ』が四作目。 本作はイギリスの…

『ザ・ロード』コーマック・マッカーシー 善い者として火を運ぶということ

コーマック・マッカーシー『ザ・ロード(The Road)』のあらすじ、ネタバレ感想。終末の世界を旅する、一組の親子の物語です。

2021年に読んで面白かった小説11選

2022年もすでに二週間が経過してしまい、やや時機を逸してしまった感が無きにしも非ずだが、恒例の「〇〇年に読んで面白かった小説10選」をお届けしたい(10冊に絞れなかったので今年は11冊だけど)。 特に順位などは無し。また、「2021年に刊行された作品」…

『サウンドトラック』古川日出男 展開の読めなさ加減が凄い!

とにかく展開が読めない作品 2003年刊行。いやホントにもう古川日出男(ふるかわひでお)作品の展開の読めなさ加減は異常。この読めなさ加減を楽しむ一冊である。 サウンドトラック 作者:古川 日出男 集英社 Amazon 集英社文庫版は2006年に登場。この際に上…

『ワインズバーグ、オハイオ』シャーウッド・アンダーソン いびつな者たちの群像劇

シャーウッド・アンダーソンの代表作 『ワインズバーグ、オハイオ』は、1919年にアメリカ人作家シャーウッド・アンダーソン(Sherwood Anderson)によって書かれた連作短編集である。原題は『Winesburg, Ohio』。 日本国内では戦前より邦訳が出ており、まずは1…