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2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

ファンタジー

『天盆(てんぼん)』王城夕紀 盤戯の優劣で立身が決まる世界の物語

王城夕紀のデビュー作 2014年刊行作品。王城夕紀(おうじょうゆうき)は1978年生まれ。本作の元となった「天の眷属」にてC★NOVELS大賞特別賞を受賞し作家デビューを果たしている。第二作に『マレ・サカチのたったひとつの贈物』、第三作に『青の数学』シリー…

『レーエンデ国物語』多崎礼 呪われた地、運命との出会い、人生を選ぶということ

国産の骨太ハイファンタジーが登場 2023年6月刊行作品。作者の多崎礼(たさきれい)は生年非公開の小説家。デビュー作は2006年、中央公論新社主催のC★NOVELS大賞を受賞した『煌夜祭(こうやさい)』。現代ビジネスのインタビュー記事によると23歳で広告代理…

『夜光貝のひかり』遠藤由実子 少年と少女の出会い、南の島の光と闇

遠藤由実子の第二作が登場 2023年刊行。書下ろし作品。作者の遠藤由実子(えんどうゆみこ)は1991年生まれの小説家。巻末のプロフィールを拝見する限り、本業は学校教員をされている模様。デビュー作は2019年の『うつせみ屋奇譚』。よって四年振りの新作であ…

『数の女王』川添愛 「不思議な数の世界」のファンタジー

言語学者が書いたファンタジー小説 2019年刊行作品。作者の川添愛(かわぞえあい)は1973年生まれの言語学者、小説家。 津田塾大学女性研究者支援センター特任准教授、国立情報学研究所社会共有知研究センター特任准教授を経て、小説家として独立。小説家と…

グイン・サーガ外伝27巻『サリア遊郭の聖女3』円城寺忍 三か月連続刊行の最終巻。マリウスの秘密が明らかに!

グインサーガ外伝、三か月連続刊行の三冊目! 2023年5月刊行作品。同年3月に『サリア遊郭の聖女1』、4月に『サリア遊郭の聖女2』と続いてきた連続刊行も遂にラスト!いよいよ完結編の登場だ。栗本薫の死後、グイン・サーガ外伝は何人かの作家が手掛けている…

『バガージマヌパナス』池上永一 わたしたちの島の話

第六回日本ファンタジーノベル大賞受賞作 1994年刊行作品。池上永一(いけがみえいいち)のデビュー作にして、第六回日本ファンタジーノベル大賞受賞作である。ちなみに同時に大賞を受賞したのが銀林みのるの怪作『鉄塔 武蔵野線』なのだった。この年は当た…

『鉄塔 武蔵野線』銀林みのる 少年時代の冒険行、そして鉄塔への情熱

第6回日本ファンタジーノベル大賞受賞作 1994年刊行作品。作者の銀林(ぎんばやし)みのるは1960年生まれ。本作がデビュー作となる。第6回の日本ファンタジーノベル大賞の受賞作として上梓された。ちなみに、同じくこの年の日本ファンタジーノベル大賞を受賞…

グイン・サーガ外伝27巻『サリア遊郭の聖女2』円城寺忍 三か月連続刊行の二冊目!

グインサーガ外伝、三か月連続刊行の二冊目! 2023年刊行作品。グインサーガ外伝としては27作目。書き手はグインサーガ外伝26巻の『黄金の盾』でデビューした円城寺忍(えんじょうじしのぶ)である。 前作のグイン・サーガ外伝28巻『サリア遊郭の聖女1』の続…

『竜の姫ブリュンヒルド』東崎惟子 『竜殺しのブリュンヒルド』の第二部が登場

ブリュンヒルド の物語「第二部」 2022年刊行作品。デビュー作であった『竜殺しのブリュンヒルド』に続く、東崎惟子(あがりざきゆいこ)の第二作。タイトルから予想がつくけれども「竜殺しのブリュンヒルド 」シリーズの二作目でもある。前作に引き続き、イ…

『ぼくのキャノン』池上永一 旧日本軍の残したカノン砲が信仰を集める世界

池上永一の六作目 2003年刊行。作者の池上永一(いけがみえいいち)は1970年生まれ。『バガージマヌパナス』で第6回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。本作は、『バガージマヌパナス』『風車祭』『あたしのマブイ見ませんでしたか』『レキオス』…

グイン・サーガ外伝27巻『サリア遊郭の聖女1』円城寺忍 三か月連続刊行、久しぶりの「月刊グインサーガ」!

栗本薫亡きあとのグインサーガ外伝五作目 2023年刊行作品。グインサーガ外伝としては27冊目。作者の円城寺忍(えんじょうじしのぶ)は、2014年刊行、グインサーガ外伝26巻の『黄金の盾』がデビュー作。本作が9年振りの新作で、待望の第二作ということになる…

『残月記』小田雅久仁 月はそれぞれの人間の心の闇に昇ってくる

日本SF大賞受賞作 2021年刊行作品。双葉社の小説誌「小説推理」に2016年~2019年にかけて、散発的に掲載されていた三編の作品をまとめたもの。 作者の小田雅久仁(おだまさくに)は1974年生まれの小説家。2003年に『影舞(未刊)』が、第15回日本ファンタジ…

『戒(かい)』小山歩 第14回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作

小山歩のデビュー作にして唯一の作品 2002年刊行作品。第14回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作である。 作者の小山歩(おやまあゆみ)は宮城県気仙沼市出身で、東北学院大学文学部史学科で、専攻は民俗学。しかしながらこの作家、結局これ一冊きりで…

『トリニティ・ブラッド』吉田直 未完の大作、全12巻+αを一気にご紹介

吉田直、未完の大作 「トリニティ・ブラッド」シリーズは2001年~2004年に、角川スニーカー文庫から刊行されていたライトノベル作品だ。作者の吉田直(よしだすなお)は1969年生まれ。1997年に『ジェノサイド・エンジェル 叛逆の神々』にて第二回のスニーカー…

『僕僕先生』仁木英之 ニートな僕と美少女仙人の物語

第18回日本ファンタジーノベル大賞、大賞受賞作 2006年刊行作品。第18回日本ファンタジーノベル大賞、大賞受賞作品。作者の仁木英之(にきひでゆき)は1973年生まれ。本作『僕僕先生』がデビュー作となる。 なお、この年の優秀賞は堀川アサコの『闇鏡』なの…

『それでも君が』高里椎奈のドルチェ・ビスタシリーズ

高里椎奈による「密室本」 2002年刊行作品。講談社ノベルズ20周年企画「密室本」の一冊である。高里椎奈(たかさとしいな)と言えば、薬屋探偵シリーズが定番だったが(当時)、本作は初の非薬屋シリーズ作品だった。 その後『お伽話のように』『左手をつな…

『オルガニスト』山之口洋 第10回日本ファンタジーノベル大賞受賞作

山之口洋のデビュー作 1998年刊行作品。第10回日本ファンタジーノベル大賞の大賞受賞作品である。ちなみにこの年の優秀賞は沢村凛の『ヤンのいた島』と涼元悠一の『青猫の街』である。 作者の山之口洋(やまのぐちよう)は1960年生まれ。本作がデビュー作と…

『竜殺しのブリュンヒルド』東崎惟子 神にやり直す機会を与えられても、私は同じ道を選ぶ

第28回電撃小説大賞、銀賞受賞作 2022年刊行作品。作者の東崎惟子(あがりざきゆいこ)は、本作『竜殺しのブリュンヒルド』がデビュー作となる。数々の人気作家を世に送り出してきた、電撃小説大賞の銀賞受賞作品だ。続篇としては『竜の姫ブリュンヒルド』が…

『風よ龍に届いているか』ベニー松山のウィザードリィ小説2作目は傑作ファンタジー

「隣り合わせの灰と青春」に続く、ウィザードリィ小説の2作目 今は亡きゲーム雑誌「ファミコン必勝本」。かつて宝島社(当時はJICC出版)から出版されていたこの雑誌はなぜか異常なまでに「ウィザードリィ」という特定のRPGをプッシュしていて、コミックが連…

『隣り合わせの灰と青春』ベニー松山 「ウィザードリィ」の世界を完全再現

ファミコンゲーム「ウィザードリィ」のノベライズ 30年以上前に刊行された作品だが、未だ色褪せないゲームノベライズの先駆にして、その域をはるかに超えてしまった大傑作がベニー松山の『隣り合わせの灰と青春』である。作者のベニー松山は1967年生まれの小…

「グイン・サーガ」40年目の到達点!あの人はどうなった?

栗本薫「グインサーガ」のキャラクターがその後どうなったか、シリーズ40年分のネタバレまとめ。 五代ゆう、宵野ゆめによる続篇については全話感想を掲載。 リタイア組も、継続組の方も是非ご覧ください。

グインサーガ続篇148巻『トーラスの炎』(最新刊) イシュトヴァーンの闇堕ちが止まらない

続篇グイン・サーガ2年4カ月ぶりの新刊 2022年刊行作品。続篇グイン・サーガとしては、なんと2年4カ月ぶりの新刊である。もう出ないのでは?打ち切りなのでは?と思っていた読者も多いはず(ちょっと思っていたわたし、スミマセン)。 続篇グイン、もう一人の…

『魔導物語'98』『真・魔導物語外伝』『真・魔導物語』織田健司 懐かしの『魔導物語』ノベライズ三作をまとめて紹介

本日は1998年~2001年にかけて刊行されていた、ゲーム『魔導物語』に関する、一連のノベライズ作品ご紹介した。古いネタでごめんよ。 おススメ度、こんな方におススメ! おすすめ度:★★★(最大★5つ) ゲーム『魔導物語』をプレイしたことがある方。ほんわか…

『あたしのマブイ見ませんでしたか』池上永一、初の短編集

池上永一の三作目 1999年刊行作品。「Seven Seas」「週刊小説」に95年~99年にかけて発表された作品群をまとめたものである。長編作品が印象に残りがちな池上永一(いけがみえいいち)だが、本書はそんな彼の初の短編集だ。『バガージマヌパナス』『風車祭(…

白川紺子『後宮の烏(からす)』はしんみり泣ける中華ファンタジーの佳品

下鴨アンティークの白川紺子(こうこ)最新シリーズ。 集英社オレンジ文庫『後宮の烏(からす)』のあらすじ、各エピソードの考察とネタバレ感想を書いています。 後宮の奥深く、<烏妃>と呼ばれる妃の物語。

『糞袋』藤田雅矢 タイトルが強烈過ぎる!!

藤田雅矢のデビュー作 1995年刊行作品。第七回日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞受賞作である。ちなみにこの年のファンタジーノベル「大賞」は該当作なしであった。 なお、『糞袋』はもちろん「くそぶくろ」と読む。糞袋とは、糞を包んでいる袋、つまり人…

『「十二国記」30周年記念ガイドブック』 担当編集者のインタビューが面白かった!

祝☆「十二国記」30周年! いまやシリーズ累計1,280万部を超える大ヒット作となった「十二国記」シリーズ。その第一作(というかエピソードゼロ)である『魔性の子』が世に出たのが1991年だ。従って「十二国記」シリーズは昨年の2011年で30周年を迎えていたこ…

『アラビアの夜の種族』古川日出男 馥郁たる闇の香り

古川日出男の出世作 2001年刊行作品。ゲームボーイソフト『ウィザードリィ外伝2・古代皇帝の呪い』のノベライズ版として、1994年に刊行された『砂の王』(ログアウト冒険文庫/未完)を下敷きに、全く別の物語として再構築し直したのが本作である。 砂の王〈1…

『競漕海域』佐藤茂 第9回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞作品

佐藤茂のデビュー作 1997年刊行作品。第9回の日本ファンタジーノベル大賞、優秀賞受賞作品である。作者の佐藤茂(さとうしげる)は1967年生まれ。 ちなみにこの年の大賞受賞作品は井村恭一の『ベイスボイルブック』であった。 なお、文庫化はされていない模…

『さみしさの周波数』乙一、最後のスニーカー文庫作品

「白い方」の乙一作品集 2003年作品。乙一(おついち)としては10作目の作品である。せつない系の短編群が集められた初期白乙一を代表する作品の一つと言える。 4編目の『失はれた物語』のみ書き下ろしで、それ以外は角川書店のライトノベル誌「ザ・スニーカ…