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『九杯目には早すぎる』蒼井上鷹 ショボイ動機にせせこましい犯罪

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短編小説の名手、蒼井上鷹のデビュー作

2005年刊行。蒼井上鷹は双葉社が主催する、小説推理新人賞を2004年に受賞してデビューした方。個人的には短編小説の良い書き手という印象の作家さんである。著作の中でも、短編作品の占める割合がかなり多い。

名前は「あおいうえたか」と読む。なにかのアナグラムなのかな?それとも50音順で、書店の棚で、少しでも先頭に並べてもらうための、いじましい工夫であるのかもしれない。

九杯目には早すぎる (双葉文庫)

「小説推理」掲載作の5編に書き下ろし作品を4編を加えて上梓したのが本書である。収録作は短編あり、ショートショートありといろいろ趣向が凝らされて飽きない構成になっている。

ちなみに、表題作の『九杯目には早すぎる』の元ネタはハリイ・ケメルマンの『九マイルには遠すぎる』ではないかと思われる(たぶん)。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

気軽に読めるミステリ短編集を探している方。ある意味ではとても人間らしい、しょーもない動機で起こるミステリを読みたい方。非日常的な感じがしない、庶民的な犯罪について知りたい方におススメ。

あらすじ

尾行していた男は寿司屋で奇矯な振る舞いに打って出た。丼に放り込んだ寿司に茶碗蒸しを投げ入れ盛大にかき混ぜ始めたのだ。果たしてその意味とは「大松鮨の奇妙な脚」。冴えない老人と知り合ったばかりに悲劇的災難に見舞われる男の話「タン・バタン」。東京郊外のとあるバー。この店で起きた奇妙な事件の顛末を描く表題作他、全9編を収録した短編集。

ココからネタバレ

愛すべきショボイ犯罪ミステリー集

セコイ人物によるショボイ犯罪が共通したテーマとなっていて、せせこましい動機や惨めな末路がなんとも身につまされて面白い。スパイスの効いた、ややもするとダークな決着のつけ方は、読み手によっては好みが別れるところかもしれない。

誰にでも起こりそうな卑近な話ばかりなので、感情移入しやすいけど、あまりにショボイ動機や、残念な終わり方が続くので、因果応報とはいえ、こういう連中にシンパシーは感じたくない気もする(笑)。

ミステリ的な切れ味としてはどうなんだろう。本格マインドが乏しい自分にはちょっと判断がつきにくい。起承転結の結でくるりと、物語の構造をひっくり返してしまう技はなかなかに巧。第二作の『二枚舌は極楽へ行く』も既読なので、近いうちに感想を上げる予定。

九杯目には早すぎる (双葉文庫)

九杯目には早すぎる (双葉文庫)

 

 

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