ネコショカ

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池宮彰一郎『島津奔る』島津視点で描いた関ヶ原合戦


現在では入手困難な作品

1998年刊行作品。池宮彰一郎としては六作目の作品。

池宮彰一郎は1923年生まれ。脚本家として映画、テレビドラマの世界で活躍。1992年の映画化もされた『四十七人の刺客』から小説家としても活躍を開始した。

島津奔る〈上巻〉

島津奔る〈下巻〉

新潮文庫版は2001年に登場している。

島津奔る〈上〉 (新潮文庫)

島津奔る〈上〉 (新潮文庫)

 
島津奔る〈下〉 (新潮文庫)

島津奔る〈下〉 (新潮文庫)

 

司馬遼太郎の『関ヶ原』 との類似問題

本作に関しては、司馬遼太郎の『関ヶ原』 との類似が指摘されており、現在は回収・絶版状態である。経緯はWikipedia先生でどうぞ。

Wikipediaの方でも触れているが、司馬遼太郎の『関ヶ原』は超有名作品であり、古今の関ヶ原小説の王道中の王道であるだけに、真似れば即座にバレるだる。何かの手違い、ミスなのではという思いも湧いてくる。作品としては、十分に独自の領域に達している作品であるだけに、本当に残念である。

あらすじ

太閤秀吉死す。異郷の地でその報に接した島津義弘は来るべき大乱の予兆を感じ取っていた。天下を望む徳川家康と、豊臣政権の護持安泰を計らんとする石田三成との対立は日増しに強まる。天下分け目の大戦を前にして、寡兵のまま激戦地のただ中に取り残された島津主従。最強を謳われた島津軍団。彼らは激動の時代をどう生き延びたのか。

島津家視点での関ヶ原合戦物語

島津家は一時、九州一円を制覇しかけるところまでいきながらも、秀吉の九州征伐に屈しその野望を絶たれている。ここで当時の当主であった義久が隠居し弟の義弘が跡を継ぐ。義久は働き盛りの時分に引退を余儀なくされ、一方の義弘はその後の文禄・慶長の役で空前の大功績をあげ名声を大いに高めていく。

弟に対しての妬心から義久は関ヶ原に兵を送ることを拒み、大国島津が戦場に動員出来た兵力は僅かに千数百。一つ対応を間違えればその身は討死、自国も滅亡必至、両手足を縛られたような状況下で島津軍はいかに戦ったのか。これはなかなかに燃える設定で、四面楚歌の中で耐えに耐える義弘が実に格好いい。家康の居る敵本陣に向けて「退却」するあまりにも有名なクライマックスシーンが俄然盛り上がるのも、こうした耐えるシーンを根気よく積み重ねて描いてきたからこそだろう。

主人公が立派になりすぎた

家康や三成を偉大な人物として描かず、美点も欠点も併せ持つ、悪でも善でもない奥行きの深いキャラクターに書き上げているところは巧いなと思ったのだが、その分義弘がオールマイティに完璧な人物になりすぎていて、ちょっとこれは美化しすぎの感あり。多少は疵があった方が人間味が増して良かったと思うのだが。義久があまりに狭量で矮小な武将として描かれているのも不満だろうか。

なお、関ヶ原の合戦を描いた作品としては、阿部龍太郎の『関ヶ原連判状』を過去に紹介している。良かったらこちらもどうぞ。

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