ネコショカ

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『アイルランドの薔薇』石持浅海はここから始まった


石持浅海、最初の作品

2002年刊行。石持浅海(いしもちあさみ)のデビュー作である。光文社のメフィスト賞とも言える、KAPPA-ONE登龍門(かっぱわんとうりゅうもん)の第一期作品でもある。

アイルランドの薔薇 (カッパ・ノベルス―カッパ・ワン)

光文社文庫版は2004年に登場している。

アイルランドの薔薇 (光文社文庫)

アイルランドの薔薇 (光文社文庫)

 

短命に終わったKAPPA-ONE登龍門

KAPPA-ONE登龍門を「光文社版メフィスト賞」と先ほど書いてしまったが、メフィスト賞同様に公募した作品を、編集者が審査してた点が特徴的である。ただ、この賞は現在では実施されていないため、今となってはご存知の方は少ないかもしれない。2002年から始まったこの企画は、残念ながら2008年以降運用が停止されている。有望な作家が集まらなかったのかな?

途中で企画倒れに終わってしまったこともあり、ネタ元のメフィスト賞に比べると輩出した作家数は少ない。それでも、石持浅海、そしてこの賞の同期生である東川篤哉を世に出したことが、KAPPA-ONE登龍門最大の成果であるかもしれない。あと、個人的には詠坂雄二もこの賞から出てきてる点は見逃せない。

あらすじ

1997年。アイルランド共和国スライゴー。アイルランド紛争の鍵を握る抵抗組織NCFの副議長が謎の死を遂げる。アイランド和平を目前に控えた中、その死は決して公開することが出来ないものだった。現場に居合わせた10人の男女は疑心暗鬼に囚われながらも、真犯人を見つけるため動き出す。犯人はこの中にいるのか?それとも外部の犯行なのか?

警察を介入させずに事件を解決する工夫

現代を舞台としたミステリ作品で、警察の介入をさせずに登場人物たちだけで事件を解決させるにはどうすればいいのか。石持作品に毎回共通している課題だけど、今回の鍵は「アイルランド」。日本ではない独自の社会情勢を利用したことで、そんなことありえねーっていう、スレた読者のツッコミをうまくかわしている。これは上手い。日本ではない分、そんなことがあってもいいのかも、ってなんとなく納得できてしまう。

凝った仕掛けのデビュー作

というわけで、二重三重の凝った仕掛けを堪能。処女作ならではの渾身の一撃が嬉しい。探偵役のフジの万能振りがややもするとハナにつくけど、総じて気概と志の高さを感じた一作。終盤。ひとり、またひとりと登場人物たちが去っていくシーンが映画みたいで美しい。いまのところ石持作品の中では一番これが好きだな。タイトルのセンスもなかなか好みなのである。

アイルランドの薔薇 (カッパ・ノベルス―カッパ・ワン)

アイルランドの薔薇 (カッパ・ノベルス―カッパ・ワン)