牧野修による最後のソノラマ作品
2004年刊行作品。牧野修はソノラマ文庫から作品を三冊刊行している。一冊目が、1995年の『プリンセス奪還―トウキョウ・バトル・フリークス』。二冊目が、2003年の『乙女軍曹ピュセル・アン・フラジャーイル』。そして最後の三冊目が本作である。
本作は長らく入手困難な状態が続いていたが、2015年にアドレナライズより電子書籍が版が登場。また、多少値は張るがオンデマンド版も存在しており、紙の書籍として手に入れることも可能となっている。
あらすじ
二年生の春。私立第四ボロヴィニア学園中等部の木戸美弥は自らに課せられた宿命と、生まれながらに備えていた大いなる力の存在を知る。学園内で次々と起きる奇妙な事件。世界の根元的な<絶対悪>ドゥルジと<<美徳の象徴>アシャ。太古より闘いを続けてきた二大勢力の対立は最終局面を迎えようとしていた。美弥は世界を救うことが出来るのか。
『超人バロム・1』を知っているか!
牧野修らしからぬオトメオトメした表紙絵にまずたじろく。しかし一筋縄ではいかないのが牧野修作品である。本作は、主人公の名前や敵勢力の名称など、細かく見ていくと、往年の特撮番組『超人バロム・1』のパロディが散見されるのだ。『超人バロム・1』の初回放送は1972年なので、本作刊行当時でも相当にマニアックなネタであった筈である。
と、思って調べていたら、実は2002年にアニメ版の『バロムワン』が放映されていた(わたしは未視聴)。これはこれで相当にマニアックな作品だと思うけど、多少はこのアニメ版も意識されていたのだろうか。
美少女キャラはいちおう適正に配置されている
元気溌剌な天真爛漫系少女の主人公木戸美弥と、気高くも美しい女王様系白鳥すこやかを軸に物語は展開されていく(この二人が『超人バロム・1』の主人公、木戸猛と白鳥健太郎に相当する)。
加えてボーイッシュで喧嘩っ早い戦士系の小林燐と、天然系おっとり少女の古府薫と、最小構成ながらも、それなりに女の子キャラの基本パターンは押さえられている様子。
善と悪の最終決戦を一冊で
普通のライトノベル作品なら一エピソード使って、それぞれのキャラクターの見せ場を作ってキャラ造りをして、何巻かかけて最終局面まで盛り上げていくところなのだろうけど、牧野修だからなのか、ソノラマだからなのか、この話驚く無かれ、世界の善と悪の最終決戦がなんと一巻で完結してしまう。
展開があまりにスピーディ過ぎて、せっかくのキャラクターが勿体ないなあ。ヒロイン以外の三人には見せ場らしい見せ場が少なくて残念。話の進展が早いためか、物語世界に説得力を持たせるだけの描写が少なく、いきなりそんな大事なこと断定口調で言い切られても……、と絶句してしまいそうなケースが多かったのもきつかった。
ソノラマ文庫はレーベルの性格的に単巻読み切りが多かったとはいえ、さすがにこれは詰め込み過ぎだと思われる。