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ジャンヌダルクの忌日に読みたい『乙女軍曹ピュセル・アン・フラジャーイル』牧野修

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先日、グインサーガ外伝として、牧野修による『リアード武俠傳奇・伝』をご紹介した。しかしながら牧野修オリジナルの作品を、まだ当Blogでは紹介していなかった。よって、本日はこちらの作品をお届けしたい。

乙女で軍曹?異形のジャンヌダルクの物語

2003年刊行作品。かれこれ15年以上前の作品だが、わたし的にはかなりお気に入りの一作である。今は亡き、朝日ソノラマのソノラマ文庫に、書き下ろされたもの。

乙女軍曹ピュセル・アン・フラジャーイル (ソノラマ文庫)

あらすじ

宇宙標準暦10414年。自らの生み出した擬人種の反乱により、人類は絶滅の危機に瀕していた。惑星ドンレミの敬虔な少女ピュセルはある日神の啓示を受け目覚める。滅び行く人類を救うため、ピュセルは惑星オルレアンを目指して旅立つ。立ちはだかるのは敵の最精鋭、巳組の羊頭狗肉兄弟。果たして少女は世界を救うことが出来るのだろうか。

牧野修的な「ジャンヌ・ダルク伝」

『乙女軍曹ピュセル・アン・フラジャーイル』とはずいぶん謎めいたタイトルだが、ピュセル(la Pucelle)とはフランス語で乙女の意味で、かのジャンヌ・ダルクの別称でもある。惑星ドンレミの少女が、王を探しあて、惑星オルレアンに向かうわけで、どう考えてもこれは牧野修的な「ジャンヌ・ダルク伝」なのであろうと想像できる。

手垢のついたこのネタをいかに換骨奪胎してのけるかが見所なわけだが、さすがは鬼畜牧野修。自ら剣を取り戦うピュセル。屍山血河の中で燦然と輝く少女の聖性が凄惨なまでに美しいのだ。超スピーディな展開(人死にすぎ)と、胡散臭げなSFギミック(記述式無限選択航法万歳!)、知性ゼロな敵キャラの存在(兄貴~)も素晴らしく、なかなかの佳作に仕上がっている。イラストが羽住都なのも大正解なのである。

乙女軍曹ピュセル・アン・フラジャーイル (ソノラマ文庫)

乙女軍曹ピュセル・アン・フラジャーイル (ソノラマ文庫)

 

ちなみに、改造されて人ではなくなるヒロイン。自在に変形する犬型の生命体。人類によって生み出されたボスキャラ。実はこれ『新造人間キャシャーン』のパロディでもあるわけで、中高年おじさん的には、ニヤニヤ出来る仕掛けなのであった。

新造人間キャシャーン Blu-ray BOX

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