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『幕末遊撃隊』池波正太郎 隻腕の剣士、伊庭八郎の生涯

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実は池波作品の感想を書いていなかった

池波作品このブログでとりあげるのは実は初めてか(ちょっと意外)。池波正太郎(いけなみしょうたろう)は、もはや説明不要かと思われるが、1923年生まれの歴史小説作家。

もともと大好きな作家なひとりで『真田太平記』や、『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』の三大シリーズは全部集めていた。読書ブログを始める前にハマっていた作家だから、ここで触れる機会を逸してしまっていたのかもしれない。

『幕末遊撃隊(ばくまつゆうげきたい)』1964年の刊行作品。もともとは1960年に「週刊読売」に連載されていたもの。最初の文庫版は1977年に集英社から登場。

現在読めるのは2020年に出た新潮文庫版だろう。かれこれ60年以上読み継がれている作品だ。

幕末遊撃隊 (新潮文庫)

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

幕末なら佐幕派だ!という方。この時代に組織された遊撃隊の実情について知りたい方。剣士、伊庭八郎に興味のある方。池波正太郎の初期作品を読んでみたい方。特に幕末の時代を描いたものを読んでみたい方におススメ。

あらすじ

心形刀流伊庭道場の跡取り伊庭八郎秀頴。十六歳まで学問一筋に打ち込んでいた八郎だったが不治の病に冒され自らの死期を悟る。にわかに剣の鬼と化した八郎は瞬く間にその才能を開花させていく。時代の流れは幕末へ。将軍警護の任を帯び八郎は京都へと旅立つ。そこは尊王攘夷の嵐が吹き荒れる騒乱の地だった。

ここからネタバレ

隻腕の剣士、伊庭八郎の生涯を描く

伊庭八郎秀頴(いばはちろうひでさと)は1844年生まれ。剣術の名門、心形刀流(しんぎょうとうりゅう)の伊庭道場出身の剣客。幕末に至って、幕府の遊撃隊に参加し各地を転戦。函館戦争までの戊辰戦争を戦い、1869年に函館で没している。箱根湯本での戦いでは左手切断の重傷を負い、以後は、隻腕の剣士として活躍した。

あっという間に引き込まれる

シリーズものの続編ではないし、既読の作品というわけでもないのに、すっと、なんの違和感もなく池波正太郎的世界に入り込めてしまうあたりさすがは大家の貫禄。独特のリズムを持つ情趣に溢れた池波文体はやっぱり良い。ストイックに自らの生き様を貫く男と、それを静かに見守る女たち、いつもながらの池波節全開で心地好い世界ではある。

ちなみに作中で八郎が左腕を切り落とされた早川の三枚橋はここ。なんにも知らずについこないだ自転車で通り過ぎていました。この本読んでから出掛けていればもっと別の感慨があっただろうに。ちょっと惜しい気がする。

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