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『グアルディア』仁木稔 「HISTORIAシリーズ」の第一作


仁木稔のデビュー作

2004年刊行作品ハヤカワSFシリーズ Jコレクションの一冊として刊行された作品。作者の仁木稔(にきみのる)は1973年生まれのエスエフ作家。本作『グアルディア』がデビュー作となった。ベストSF2004の国内9位の作品。

ハヤカワ文庫版は2007年に登場。文庫化に際して上下巻に分冊されている。

グアルディア 上 グアルディア 下

なお、本作は仁木稔における「HISTORIAシリーズ」を構成する一作である。現在までに四作が刊行されている。

  • 『グアルディア』(2004年)
  • 『ラ・イストリア』(2007年)
  • 『ミカイールの階梯』(2009年)
  • 『ミーチャ・ベリャーエフの子狐たち』(2014年)

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

未来の人類史を描いた作品に興味のある方。文明崩壊後の世界を描いた作品を読んでみたい方。中南米世界を舞台とした作品を読みたい方。佐藤亜紀っぽい雰囲気の作品を読みたい方におススメ。

あらすじ

致死性ウイルスの蔓延により人口が激減し、放射能汚染により居住地も制限され、人類は中央アメリカを中心とした僅かな地域に辛うじて文明社会の残滓を留めていた。西暦2643年。都市国家エスペランサは、ラテンアメリカ地域全てをその傘下に収めるべく軍事侵攻を開始する。知性機械サンティアゴにアクセス出来る唯一の存在、生体端末アンヘル。エスペランサを統べる彼女の真の目的とは。

ココからネタバレ

「HISTORIAシリーズ」

舞台は27世紀のラテンアメリカ。死のウイルスと戦争の影響で人類がまともに生きていけるのはこの地域だけ。スペイン語ベースの世界観がなんだか目新しくて良い。英語でセント・ジェームスって書くよりも、サン・ティアゴとスペイン読みするだけで新鮮に見えてくるから不思議。

ただ、地域やキャラクターによって、アンヘルの呼び名が人にエンジェルだったり、アンゼリーナだったりと違ってくるので、この点読みづらいのが難点と言えば難点。冒頭に人物紹介をつけているのなら、一通りの呼び名を全部書いておいてくれるとよりベターだったかな。

知性機械と生体端末

旧時代の超技術、知性機械へ唯一人アクセスすることが出来る生体端末アンヘル。彼女はラテンアメリカで唯一旧時代の科学が残された都市国家エスペランサの総統だ。単性生殖で増え、自分で自分と同等の遺伝子を持つ「娘」を生むことでその力を継承していく。各世代のアンヘルに記憶は受け継がれないが、知性機械本体と彼女の脳は直結されているので、時折知性機械から歴代のアンヘルの記憶の逆流が起こり彼女を苦しめる。未来永劫に続く生体端末としての運命に絶望したアンヘルが、そんなら知性機械ごとぶっ壊して自殺しちゃえばいいんじゃね?と、血迷い始めたのがこのお話の発端。

不老不死の男

対立軸として登場するのは、特殊なウイルスを埋め込まれることで生体甲冑として無敵&不老不死に近い体を手に入れた男JDとその娘カルラ。百数十年間、彼らは老いることもなく旅を続けており、これが歴代のアンヘルの目にとまり今回の騒動に巻き込まれることになる。最強のアンヘルを殺せる唯一の可能性は生体甲冑を持つJD親子のみ。かくして、退行しつつある人類文明をよそに、超人VS超人の凄絶な戦いが繰り広げられていく。

佐藤亜紀作品っぽい

硬質な文体、やたらに多い省略、仄かに漂う退廃的なエロティシィズムは、どことなく佐藤亜紀っぽい雰囲気だなと思ったら、佐藤亜紀の創作講座出身の人らしい。なんと解説も佐藤亜紀だった。とはいっても、彼女独特の洒脱さ、他の追随を許さない洗練されたスタイルにはさすがに及ばない。デビュー作でそこまで望むのは酷だけどね。

一読してまず感じたのが、読みにくさ、わかりにくさで、これは描写力がどうこうというよりは、構成の問題のように思えた。いま現在、起きている出来事の、説明がその場ではなされずに、かなり前の章でさらり書かれていたりするので、相当集中して読まないと置いていかれる。行間をしっかり読めば判る佐藤亜紀のわかりにくさとは質が違うんだな。