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『米澤穂信と古典部』 シリーズ15年を記念したムック本

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<古典部>シリーズのムック本

2017年刊行作品。米澤穂信(よねざわほのぶ)の人気作<古典部>シリーズのムック本である。英題は『The Memories of Classic Club』。古典部って「Classic Club」なんだ!

米澤穂信と古典部 <古典>シリーズ (角川書店単行本)

<古典部>シリーズは2001年に1作目『氷菓』が刊行。2016年にはシリーズ6作目『いまさら翼といわれても』が刊行され15年目の節目を迎えた。KADOKAWAのサイトにようるとシリーズ累計で245万部を突破(スゴイ!)しているとのこと。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

米澤穂信の<古典部>シリーズのファンの方(シリーズ未読の方にはおススメできない)。<古典部>シリーズのキャラクターが好きな方。彼らがどんな本を読んできたか知りたい方。米澤穂信の創作の秘密について知りたい方におススメ。

内容はこんな感じ

米澤穂信が語る<古典部>シリーズ15年のあゆみ。書下ろしの新作短編「虎と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人」。北村薫、恩田陸、綾辻行人、大崎梢、四人のミステリ作家との対談集。著者による全作紹介。隠れネタの披露。古典部メンバー四人の本棚大公開、米澤穂信に30の質問企画など……。ファン待望のオール<古典部>本が登場!

 

以下、本書の魅力をかいつまんでご紹介したい。

<古典部>シリーズ15年のあゆみ

冒頭に登場するのがインタビュー記事だ。十五年目を迎えた(当時)<古典部>シリーズについて、作者本人によるとっておきの話が披露されている。過去の講演会などで語られており既出の部分も多いが、きちんと活字化されたのは重要である。

本来であればシリーズ三作目となるはずであった『さよなら妖精』が、レーベル(スニーカー・ミステリ倶楽部)の消滅から別系統になった件もしっかりと書かれている。太刀洗万智は<古典部>時代には存在しなかったキャラクターで、別系統として切り出される際に生み出されたものであるとのこと。

角川から出せなかった『さよなら妖精』がその後のブレイクに繋がっていくのだから、縁とは奇妙なものである。

短編「虎と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人」

『米澤穂信と古典部』にはオリジナルの書下ろし短編「虎と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人」が収録されている。これはいまのところ単著には収録されておらず、本作でしか読むことが出来ない。

奉太郎が中学時代に書いた読書感想文にフォーカスした作品。中学時代の作文を皆の前で披露されるのは相当に悲惨な罰ゲームである。わたしなら、泣く。

奉太郎が書いた感想文の元ネタはこちら。

  • 走れメロス(一年時)
  • 山月記(二年時)
  • 猿蟹合戦(三年時)

四人のミステリ作家との対談集

「米澤穂信とミステリ作家」と題して、四人のミステリ作家との対談記事が収録されている。いずれも既存記事の再録である。初出と併せて対談相手を書いておこう。

  • 北村薫 「謎に気付く」醍醐味:「小説 野生時代」2013年5月号
  • 恩田陸 こんなミステリが書きたい!:「小説 野生時代」2008年7月号
  • 綾辻行人 豊潤なミステリを生み出すために:「小説 野生時代」2013年1月号
  • 大崎梢 『いまさら翼といわれても』:「本の旅人」2016年12月号

作家の読書量の凄まじさに打ちのめされる対談集である。米澤作品をより深く知るための参考文献も多数挙げられているので、ファンなら要チェックである。

<古典部>シリーズをより深く知るために

<古典部>シリーズのファンとして嬉しかったのは以下の三企画である。

  • 著者による<古典部>シリーズ全開設
  • さらにディープな<古典部>隠れネタ大公開!
  • あなたの本棚見せてください!古典部メンバーの本棚大公開

 「あなたの本棚見せてください!」は古典部メンバー四人の本棚を考えてみよう!という企画モノ。各キャラクターの個性を伺える選書となっていて楽しい。特に伊原摩耶花の本棚はオールマンガ本でのチョイスとなっていて嬉しい。

米澤穂信の作られ方

後半には、米澤穂信の個人史と、講演録「物語のみなもと」が収録されている。この講演録は、実際に行われた講演録の草稿を活字化したもの。

物語が読まれなくなっている昨今。物語は本当に必要なのか。物語は役に立たないのか。物語はどこからやってくるのか。米澤穂信の「物語」観を知る上でとても重要なテキストとなっている。このパートもファンなら必読であろう。

米澤ファン、古典部ファンなら必携の一冊

以上ザックリとではあるが、『米澤穂信と古典部』の内容をご紹介させていただいた。思っていた以上に充実した内容だった。もっと早く読めばよかった!(何年も積みすぎである)。

具体的な内容は本書を読んでからのお楽しみということで、敢えて書かないようにした。米澤ファン、古典部ファンなら間違いなく読んでおくべき一冊である。刊行から四年経つので、そろそろ文庫にならないかと待っているのだがどうだろうか?ムック本は文庫化されないかな?

紙の書籍は入手困難になっている(変なプレミア価格がついている)が、電子書籍版であれば容易に入手できるのでそちらもおススメである。 

 

その他の米澤穂信作品の感想はこちらから

〇古典部シリーズ

『氷菓』/『愚者のエンドロール』/『クドリャフカの順番』/ 『遠回りする雛』/『ふたりの距離の概算』/『いまさら翼といわれても』 / 『米澤穂信と古典部』

〇小市民シリーズ

『春期限定いちごタルト事件』/『夏期限定トロピカルパフェ事件』 『秋期限定栗きんとん事件』/ 『巴里マカロンの謎』

〇ベルーフシリーズ

『王とサーカス』  / 『真実の10メートル手前』

〇図書委員シリーズ

『本と鍵の季節』 / 『栞と嘘の季節』

〇その他

『さよなら妖精(新装版)』/『犬はどこだ』/『ボトルネック』/『リカーシブル』 / 『満願』 /『儚い羊たちの祝宴』『追想五断章』『インシテミル』『Iの悲劇』 / 『黒牢城』