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『ハムレット狂詩曲(ラプソディー)』服部まゆみ 演劇の世界を舞台としたミステリ

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服部まゆみの六作目

服部まゆみは1948年生まれ。第7回の横溝正史賞を『時のアラベスク』で1987年に受賞。以来、著作数は少ないながらも常に水準以上の良作を送り出してきた作家。『この闇と光』が1998年の第120回直木賞の候補にもなり、各方面でも高評価を受け、一気に認知度が上がった。

残念ながら2007年に58歳の若さで亡くなられている。二十年間の作家生活で書かれた作品は十一作(最後の『最後の楽園 服部まゆみ全短編集』は、死後の2019年に刊行)を数える。

『ハムレット狂詩曲(ラプソディー)』は1997年刊行作品。『時のアラベスク』『罪深き緑の夏』『時のかたち』『黒猫遁走曲』『一八八八 切り裂きジャック』に続く、服部まゆみの六作目の作品である。

光文社文庫版は2000年に登場。解説は俳優の江守徹が担当している(思いっきりネタバレしているので先に読まないように)。

ハムレット狂詩曲 (光文社文庫)

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

演劇の世界を舞台としたミステリ作品を読みたいと思っている方。気軽に楽しめるライトなミステリを探していた方。シェイクスピアの『ハムレット』を読んだことがある方。服部まゆみ作品を読んでみたいと思っていた方におススメ。

あらすじ

名門、劇団薔薇(そうび)は新劇場のこけら落としに「ハムレット」の上演を計画する。イギリスから招聘された天才演出家ケン・ベニングは、かつて日本国籍を持つ複雑な出生の秘密を抱えていた。蒼々たるメンバーがキャスティングされていく中で、ケンは歌舞伎役者片桐清右衛門に異常な執着を見せる。清右衛門こそはケンの実の父親だったのだ。母と自分を捨てた清右衛門に復讐の炎を燃やすケンだったが、事態は思いも寄らぬ展開を見せる。

ここからネタバレ

『ハムレット』を投影した作品

曰くありげな過去を持つ演出家ケン・ベニングと、親の七光りでハムレット役を演じることになってしまった片桐雪雄。この二人のそれぞれの視点から交互に物語は語られていく。本家の『ハムレット』からのモチーフやら、メタファーやらが巧みにちりばめられていてさすがは服部まゆみ作品。なかなか凝っている。ケンの復讐は思わぬ結末を迎える。オチとしては正直予想範囲内で残念なのだが、雪雄の成長物語は素直に楽しめた。

冒頭にも書いたが、解説の江守徹は単なるネタバラシおやじでしかないので、絶対に先に読んではダメだ。解説であらすじ書いてどうすんだ。こういうタイプの解説書く人、たまにいるけどホントに止めてほしい。