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『遙かなり神々の座』谷甲州は山岳小説も面白い

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谷甲州はSFだけじゃない!

1990年刊行作品。かれこれ30年以上前に世に出た作品である。

作者の谷甲州(たにこうしゅう)は1951年生まれ。航空宇宙軍史シリーズなどのSF作品が特に知られているが、もう一つの柱が山岳小説である。

ハヤカワ文庫版は1995年に登場。わたしが読んだのはこちらの方である。

遙かなり神々の座 (ハヤカワ文庫JA)

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

山岳小説というジャンルに挑戦してみたい方。ヒマラヤに憧れる、登山が好き、山歩きに興味がある方。血沸き肉躍る、熱いアクション巨編を堪能したい方。谷甲州の山岳小説を読んでみたいと思っていた方におススメ。

あらすじ

登山家滝沢はヒマラヤ登頂を目指しながらも、数々の不運から一度も山頂にはたどり着けず多くの仲間を死なせてきた。久しぶりに帰国した日本で出会った不審な男はマナスル登山隊の隊長になれと迫る。愛する女の安全と引き替えに再度カトマンズへ降り立った滝沢だったが、その登山隊は偽装したチベットゲリラの一行だった。

ここからネタバレ

心身共に超人的な主人公

この手の山岳小説のありがちな構成としては、トラウマを抱えた主人公が困難な山行をこなしながら過去の呪縛と向き合いそれを克服。その課程を通じて登山という行為の意義を哲学的な領域にまで高められたら二重丸。って感じかな?

しかし、本作の主人公滝沢はそんな低次元の領域は軽々とクリア、恐るべき超人性をいかんなく発揮していき、優秀な一兵士として逞しく難局を乗り越えていくのである。この超人ぶりは頼もしくはあるのだけれども、あまりにスーパーマンでありすぎて、一般人の共感を得るには辛いものがあるような……。

青年海外協力隊時代の経験が生きてる?

谷甲州には、若き日に青年海外協力隊時代に所属していたキャリアがある。

そのためだろう。かつて、現地ネパールに滞在していた作者ならではのリアリティに富んだ都市カトマンズや、バイタリティに溢れたネパールの人々の描写は素直に楽しめた。ヒマラヤどころか冬場は高尾山にすら近づかないなんちゃって低山ハイカー(過去形)のわたしとしては、こうした作品はとても魅力的なのだ。

『遙かなり神々の座』の続編『神々の座を越えて』

なお、本作には、続編の『神々の座を越えて』が1996年に刊行されている。興味をもたれた方はこちらもチェックしてみると良いだろう。リンクは、多少なりとも入手が容易かと思われる文庫版の方を貼っておく。

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