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『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午 事前情報なしで一気に最後まで読んで欲しい名作

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2003年の国内ミステリ界を席巻した名作

2003年刊行作品。この年の「 このミステリーがすごい! 」と「本格ミステリベスト10」でいずれも第一位。「週刊文春 推理小説ベスト10」では第二位。更に第4回本格ミステリ大賞と、第57回の日本推理作家協会賞を受賞している。2003年のミステリ界に君臨した名作といっていいだろう。

葉桜の季節に君を想うということ (本格ミステリ・マスターズ)

歌野晶午(うたのしょうご)としては15作目の作品。デビュー15年目だけど年一作ペースか。新本格系の作家として、堅実な実績をあげてきた作家。本作で一般層にリーチするほどのセールスを記録。遅まきながらブレイクした感があった(当時)。しかし、こういう話を書くとは思わなかったな。タイトルはスゴイ格好良い。

文春文庫版は2007年に刊行されている。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★★(最大★5つ)

私立探偵(ハードボイルド風味)が登場するミステリ作品を読んでみたい方。最後まで読んで、とにかく驚いてみたい方。ミステリ史に残る有名作品を読んでみたい方。歌野晶午作品を読んでみたい、まずは代表作から読んでみたい!と思っている方におススメ!

あらすじ

<何でもやってやろう屋>の成瀬将虎(なるせまさとら)は後輩のキヨシからの紹介で、白金の資産家久高愛子からの依頼を受けることになる。マルチ商法に騙された挙げ句に死んでいった父親について調べて欲しいのだという。元探偵の経験を活かして事件の謎に迫っていく成瀬。そんな最中、彼は駅で投身自殺しようとしていた女性を救う。それは運命の女、麻宮さくらとの出会いだった。

ここからネタバレ

予想のさらに斜め上を行くオチ

メインとなるマルチ商法絡みのエピソードを主軸に、成瀬の若き日のヤクザ見習い時代の話や、運命の女麻宮さくらとの交際話等々、複数のエピソードが断片的に並行して進行。なんちゃって私立探偵の活躍を描いていく。

あからさまに叙述トリックではあることは判るんだけど、その真相はあまりに強烈過ぎて想像すらしなかった。いや、想像なんかしたくないというレベルか。あのオチに、生理的にドン引きしてしまったのはわたしだけだろうか。

ここまで読み手を唖然とさせた筆力は買うが、えー、どうなのこの人?的な呆然とさせられている感が半端でない。年齢でどうこう言うのは野暮なのだけど、主人公カップルのあれこれを想像するとメゲてくるなあ。別の意味で再読を阻む作品だと思うよこれは。怖ろしくて二度は読めない気がする。

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