ネコショカ

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基本ネタバレありなので注意してね

自らの無力さ故に死なせてしまった女の子を救いたい!『君がいる風景』


表紙のテンションが20世紀だけど、2002年の作品

2002年刊行。作者の平谷美樹(ひらやよしき)は1960年生まれ。名前で勘違いしがちだけど男性作家。学校についての描写に妙にリアリティがあると思ったら、元々は中学校教師であったらしい。なるほどね。現在は教職は退任して、作家専業である様子。

君がいる風景 (ソノラマ文庫)

君がいる風景 (ソノラマ文庫)

 

しかし、表紙のテイストが凄い。2002年にもなって70年代ジュブナイルテイスト炸裂なカバーデザインをやってのけるソノラマ文庫って凄いと思う。ソノラマ文庫は2007年には終了してしまうので、このあたりで、もう既にヤバかったんだろうなあ。

あらすじ

少年の日、自らの無力さ故に死なせてしまった美鈴の命を救いたい。二十五歳の高村哲哉は十年前の世界へとタイムスリップする。しかし過去に戻ったのは意識だけ、肉体はあの日と同じ十五歳のままだった。しかも時間移動の衝撃からか、哲哉の記憶からは美鈴の死に纏わる部分だけが抜け落ちていた。宿命付けられた少女の死。その運命を変えることは出来るのか。

時間遡り型ジュブナイル小説

過去に戻った主人公だが、意識は大人、肉体は子供という状態で物語は進行していく。

設定として面白いのは肝心要のヒロインの死因について、主人公がさっぱり忘れている部分。美鈴が十五歳の夏に死んでしまうことは判っている、でもいつどこでどうやって死に至るかが判らない。都合が良すぎると言ってしまえばそれまでだけど、それによって生じる緊張感が物語のテンションを最後まで保ってくれていい効果をあげている。

わりとオッサン読者にはツボる

大事なことは覚えていないくせに、比較的どうでもいい十年前の記憶は残っている主人公。二十五歳の目線で見つめる十年前の世界に向けられたまなざしには、過ぎ去った日々をいとおしむ気持ち、郷愁感が満ち溢れていて、高齢読者の涙を誘わずには居られない。さすがは四十代作家。このあたりのノスタルジアの匙加減は見事なもの。

終盤の展開はお約束的な予定調和路線。まあ、この話でアンハッピーだったら読者許さないでしょって気もするので、深く突っ込まずに素直に感動しておくべきかと。二十五歳の自分が培ってきた知識と経験が、十年の歳月を遡り「君のいる風景」を取り戻す。再び元の世界に戻ってきた主人公。過去と現在が一本の環となってつながる瞬間のカタルシスはなかなかのもの。

本作が楽しめたなら『僕だけがいない街』もおすすめ!

しかし、こうして書いてみると設定的に『僕だけがいない街』を想起してしまうけど、かなり本作が先取りしてたわけだよね。というわけで、こういうお話が好きな方は、『僕だけがいない街』超おススメかと。要素的にはかなり近い。ヒロインを助けなきゃという気持ちは、両作品ともメチャメチャ感情移入出来ること請け合いである。

僕だけがいない街 (1) (カドカワコミックス・エース)

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