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『天涯の砦』小川一水 遭難した宇宙船に残された10人のサバイバル


ベストSF2006国内部門第三位

2006年刊行。ベストSF2006国内部門第三位の作品。ハヤカワSFシリーズ・Jコレクションレーベルからの登場であった。

ハヤカワ文庫版は2009年に刊行されている。

天涯の砦

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★★(最大★5つ)

災害モノ、特に宇宙を舞台にしたサバイバル系の作品が好きな方。個性豊かなキャラクターたちが、それぞれの持ち味を生かして難局を乗り越えていくタイプのお話が好きな方。昔の小川一水(おがわいっすい)作品を読んでみたい方におススメ!

あらすじ

軌道ステーション<望天>で致命的な大事故が発生。分離した第四扇区は繋留中の月往還船<わかたけ>と共に軌道を外れ漂流を始める。ブロックの内部には奇跡的に生き残った生存者が10名。しかし事故の衝撃で通信機は故障し、外部に救援を求めることは不可能だった。大気圏への突入コースを辿る第四扇区。果たして彼らは無事に生還することが出来るのか。

ココからネタバレ

小川一水の宇宙災害モノ

本作は宇宙災害モノである。早々に救援活動は打ち切られ、満足な食料もなく、空気は減り続ける。周囲を取り囲むのは悪魔のような真空。宇宙空間という人間が生きていくのにおよそ不向きな劣悪な環境下で、主人公たちが生への可能性を模索していくさまを描く。

生き残りの10人はステーション及び係留中の宇宙船内にバラバラに取り残されスタートする。彼らを繋ぐ通路は破損により通行不能になっていたり、真空状態であったりと容易には合流することが出来ない。内部での連絡手段も限られており、エアダクトを通した肉声による会話がメインとなる。

ブロック内には宇宙服や、各種工具、医療品、食料等の有益なアイテムが点在しているが、必ずしもそれを扱える能力を有するものの側にあるとは限らない。といった限定状況の中、有限であるアイテムと人員を駆使して、いかに脱出への道を見つけるか。定番のテーマなのでこれは作家の腕の見せ所ですな。

魅力的で燃える設定

残された10人の職業は医師、科学者、軌道業務員、災害オペレータ、学生、子供と様々。医者は貧乏人に高額請求して顰蹙を買って逃げてきた男だし、科学者は訳ありクンで、軌道業務員は落ちこぼれ、学生三人はどいつもこいつも人格曲がり過ぎと、ひねくれものばかりが残っているのが面白い。そして内部には邪悪な意思を持った妨害者が一人。この作者の燃える設定を作り出す力はいつもながら素晴らしい。

少々主人公のキャラクターが弱いかなって気もするけど、逆に強くて賢い包容力に溢れたスーパーマンキャラだったら幻滅だったろうから、これで正解なのだと思う。能力的にも、人間性的にも決して優れているとは言えない登場人物たちが、時に協力し合い、時に反目し合いながらも、生存の道を模索していく姿は非常に読み応えあり。

小川一水、こういうお話も書けるのか、もはや日本SF界には欠かせない作家に成長したなと思った作品(当時)なのであった。

天涯の砦

天涯の砦

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