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『ミドリノツキ』岩本隆雄 ボーイミーツガール×ファーストコンタクトモノの魅力

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岩本隆雄の第四作

2001年刊行作品。今は亡きソノラマ文庫からの登場だった。上中下巻の三巻構成。イラストは小菅久実(こすがくみ)が担当している。

作者の、岩本隆雄(いわもとたかお)は1990年に第1回の日本ファンタジーノベル大賞で最終候補作となった『星虫』が作家デビュー作。『星虫』はファンタジーノベル大賞では選外となったものの、新潮文庫ファンタジー・ノベルシリーズのラインナップに入り、世に出ることになった。

ミドリノツキ書影1 ミドリノツキ書影2 ミドリノツキ書影3

岩本隆雄は1991年に第二作『イーシャの舟』を上梓。その後、10年に及ぶ沈黙期間に入る。しかし、ソノラマ文庫の編集部が声をかけていたようで、2000年に入って『星虫』『イーシャの舟』の改稿版が登場。第三作となる『鵺姫真話(ぬえひめしんわ)』を発表し、再デビューを果たす。

そして第四作となったのが、本日ご紹介する『ミドリノツキ』となる。

2009年には朝日ノベルズ版が登場。こちらは上下巻構成に改められている。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

ボーイミーツガール系の王道ジュブナイル作品を読んでみたい方。かつては誰もが持っていた、ひたむきで真っすぐな気持ちを思い出したい方。1990年代~2000年代前半のソノラマ文庫の雰囲気をもう一度味わってみたい方におススメ。

あらすじ

民田尚顕は不思議な夢を見た。その夢の中で尚顕はひとりの少女に出会う。目が覚めると現実の世界では一大事が起きていた。世界各地に突然降ってきた柱状の物体は、地球上のどんな物質よりも硬く、切断することも、引き抜くことも出来なかった。そしてゴビ砂漠上には巨大な塔が出現。そこから発せられたメッセージに人類は驚愕した。それは先史文明が残した超科学の遺構だったのだ。

ここからネタバレ

岩本隆雄の「変わらなさ」に驚く

この作家の作風の変わらなさ加減はすごいのではないだろうか。ネットに関しての記述が増えた程度で、現代を感じさせるようなテイストはほとんど盛り込まれていない。昔に書かれたジュブナイル作品を読んでいる気分。いかにもソノラマ的なイラストとの相乗効果もあってか、80年代の作品だと言っても信じるね。最近の若い人たちがこの本読むとどう感じるのが知りたいところだ。

アメリカ大統領の孫娘で金メダリスト(当然才色兼備)、っていう、盛りすぎのヒロイン設定がすごい。ライトノベルで合衆国大統領なんて登場させちゃうと途端に話が陳腐になっちゃうんだけど、その辺はまあ、岩本隆雄作品だから突っ込むだけ野暮ということで……。

上巻、中巻で極限にまで広げきった大風呂敷が果たしてちゃんと畳めるのかどうかエラク不安だったのだが、なんとか下巻でまとめきった……、かな?突っ込み所が無いわけじゃないんだけど、細かく考証をどうこう突き詰めなきゃならんタイプの作品じゃないからその点は見逃していいか。

清く正しい正統派エスエフジュブナイル作品。ただこの真っ直ぐさは、擦れ切ったオッサン読者にはさすがにちょっと辛いかな

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