ネコショカ

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二つの魂の再生の日々を描く、紅玉いづき『ミミズクと夜の王』


電撃タイトルとしては異例づくめのデビュー作

2007年刊行。第13回電撃小説大賞大賞受賞作。

「このラノ2008」で第七位。これは新人でしかも単発作品の中では最高位だった。

ミミズクと夜の王 (電撃文庫)

童話のような幻想的なカバーイラストが素敵。電撃文庫から出ているのに、全くラノベっぽくないテイスト(なんと磯野宏夫だ!)。そして口絵、本文イラストも無し。これはなかなかの英断だ。そして解説は有川浩ときたもんだ。なんだこの特別扱いは!当時の電撃としては、相当な自信を持って送り出してきた新人だったのだと思う。

あらすじ

額には数字の焼き印。そして両手両足には枷と鎖。ただ、自らの死だけを望む少女は魔物の王にその命を捧げるべく、夜の森へと足を踏み入れる。美しい月夜に少女は人間嫌いの夜の王に出会う。それは絶望の淵に沈んだ二人の心に、微かな光が差し込んだ瞬間だった。次第に心を通わせていく彼らだったが、その先には大いなる苦難が待ちかまえていた。

死を願う少女と魔物の物語

奴隷として日々を虐待の中で過ごし、絶望の果てに死を願うに至った少女ミミズク。そして人として生を受けながら魔物であることを選んだ夜の王。人間と人間ならざるもの、彼ら二人の精神の再生の日々を描く。

いきなり最初から壊れているヒロインの会話文に耐えられるかどうかがまず最初の関門。なにせ新人なので文章はこなれていないし、会話の部分もぎごちない。それさえ気にならなくなれば、最後まで一気に行けると思う。虐げられた人生を送りながらもなお、失われることの無かったヒロインのまっすぐさがとにかく泣ける良作。

見せるべき部分と見せない部分

一つの物語を作るのに、小説家という人種は作中に出てくるよりも遙かに多くのことを設定として考えている。これは本編中で説明しすぎると冗長になるし、しなければしないで判りにくいと批判を受けてしまったりする。

何を見せて、何を見せないかのバランスはとても難しいのだけど、本作に関してはせっかくお伽噺めいた物語なのだから、童話としての質感を大事にして、具体的な設定やら舞台裏の事情は極限までそぎ落とした方が効果的だったように思える。

背景的な事情(騎士がどうとか、巫女がどうとかね)が時として、前に出過ぎてしまって、興を削いでしまう時があるのはちょっと残念。作者の想いが過剰に溢れている部分ではあるので、それはそれで興味深く読める部分ではあるのだけれど。

続篇の『毒吐姫と星の石』も出ているので、いずれご紹介する予定。

ミミズクと夜の王 (電撃文庫)

ミミズクと夜の王 (電撃文庫)