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『ななつのこ』加納朋子 第3回鮎川哲也賞受賞の加納朋子デビュー作

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「駒子シリーズ」の一作目

1992年刊行作品。作者の加納朋子(かのうともこ)は1966年生まれ。本作が第3回鮎川哲也賞を受賞しデビューを果たしている。配偶者は同じく作家の貫井徳郎(ぬくいとくろう)である。

ななつのこ

ななつのこ

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創元推理文庫版は1999年に登場。二十年以上前に刊行された文庫本だが、菊池健(現:十日町たけひろ)の柔らかで郷愁を誘う表紙イラストが印象的で、覚えておられる方も多いのではないだろうか。

ななつのこ (創元推理文庫)

『ななつのこ』は、短大生駒子を主人公とした、「駒子シリーズ」でもある。シリーズのラインナップはこんな感じ。いずれも現在は、創元推理文庫で読める。

  • ななつのこ(1992年)
  • 魔法飛行(1993年)
  • スペース(2004年)

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

日常の謎系のミステリ作品がお好きな方。ミステリは短編に限る!と思っている方。1990年代の創元系のミステリ作品に興味のある方。加納朋子のデビュー作を読んでみたい方。歴代鮎川賞作品を読んでみたいと思っていた方におススメ。

あらすじ

美しいイラストに惹き付けられ購入した一冊の本『ななつのこ』。ファンレターを書いた駒子の元に届けられた作者からの返信。日々の疑問や生活のささやかな謎を問いかける駒子の元に次々と意外な真相がもたらされる。七編の連作短編集。

ここからネタバレ

駒子シリーズの一作目

主人公は文科系の女子短大生駒子。その後、『魔法飛行』『スペース』と続いていく、「駒子」シリーズの一作目となる。

日常の中のささやかな謎。とくれば、北村薫の『空飛ぶ馬』から始まる「円紫師匠とわたし」シリーズを髣髴とせずにはいられないだろう。

一編目と二編目の「スイカジュースの涙」「モヤイの鼠」あたりは、正直ピンと来ない感じ。北村薫による日常の謎系作品ととテイストが似すぎなのである。

しかし三編目「一枚の写真」が、わたし的な泣きのツボを強くプッシュ。子供絡むと弱いんだよな。この頃から素直に独立した作品として楽しみ始める。四編目、五編目と順調に読み進め、六編目「白いたんぽぽ」。これでまたしても泣かされてしまうわたし。「いい話」度としては悪意の存在が出てこない分、北村作品を上回るかもしれない。

そして全てが明かされる七編目「ななつのこ」。瀬尾さんが怪しいのはどう読んでもバレバレなので予想の範囲内だったが、更にもう一段奥の深いオチが用意されていようとは。なかなかやるのである。二重底ではなく三重底なのね。『ななつのこ』のタイトルネーミングもダブルやトリプルどころじゃなくて、幾層にも意味を重ねているあたり芸が細かい。 鮎川賞受賞も納得のクオリティ。

なお、本作に登場する作中作は2005年に、スピンアウト企画として実際に絵本が刊行されている。未読なので、いずれ読んでみるつもり。

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