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『8(エイト)』キャサリン・ネヴィル 伝説のチェスセットを巡る争奪戦

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宇宙の法則を内包するチェスの駒の物語

オリジナルの米国版は1988年刊行。邦訳版は1991年に登場。

作者のキャサリン・ネヴィルは1945年生まれのアメリカ人。

8(エイト)〈上〉 (文春文庫) 8(エイト)〈下〉 (文春文庫)

文春文庫版は1998年に登場している。

8(エイト)〈上〉 (文春文庫)

8(エイト)〈上〉 (文春文庫)

 
8(エイト)〈下〉 (文春文庫)

8(エイト)〈下〉 (文春文庫)

 

あらすじ

カール大帝の御代から伝わる幻のチェスセット『モングランサービス』。フランス革命の時代。存続の危機に瀕した修道院を護るため、修道女たちはチェスの駒を持ち旅立つ。途方も知れない奇跡を呼び起こすと言われた、伝説のチェスセットをめぐり時空を超えた壮絶な争奪戦が始まろうとしていた。

歴史上の有名人が多数登場

フランス革命期の修道女ミレーユと1970年代の女性プログラマキャサリン。このふたりの物語を軸にストーリーは展開していく。傑作なのはミレーユ編で、同時代に生きた多くの有名人が実名で登場してくる。

放蕩司教タレーラン、若き日のナポレオン、女帝エカチェリーナ2世、果てにはヴォルテールやニュートン、バッハまで登場してくるのだ、このあたりはデュマの一連の三銃士シリーズや山田風太郎の明治モノを読んでいるようなわくわく感が堪能出来る。歴史上の登場人物の意外な組み合わせって、とても楽しいモノなのである。

前半は耐えて読み進めるべし

上下巻で1,000ページ近い超大作なのだが、いかんせん序盤があまりに冗長。且つ、おいおいそんなわけねえだろう、ってなご都合主義展開に辟易させられるところがある。しかし後半ストーリーが進展しだしてからは一気に読者をひきこんでいく怒涛の展開。2つの時代にまたがる壮大な物語として見事な大団円を迎えるのだ。

チェスの素養があると更に楽しい

当たり前のことなんだろうけど欧米ではチェスは文化として人々の精神に根付いているわけで、それだけにチェスが登場する文学作品も多い。『不思議の国のアリス』は最も有名な部類だろう。国内作品では北村薫の『盤上の敵』なんかもそう。

数々のチェス用語やそれぞれの駒の意味なんてものが当たり前のように理解出来ればきっとこの作品はもっと楽しいのだろう。この点は少し残念。

なお、このエントリを書いていて気付いたが、続篇の『The Fire』が2008年に登場していた。しかし残念ながら邦訳版は出ていないようだ。

The Fire: A Novel

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