ネコショカ

小説以外の書籍感想はこちら!
2023年に読んで面白かった新書・一般書10選

『嫉妬と階級の『源氏物語』』大塚ひかり

『将軍の娘』ネルソン・デミル 軍人一家の父と娘の悲劇

本ページはプロモーションが含まれています


アメリカ陸軍を舞台としたミステリ小説

1996年刊行作品。オリジナルの米国版は1992年刊行。原題は『The General's Daughter』でわりとそのまんま。作者のネルソン・デミル(Nelson Richard DeMille)は1943年生まれのアメリカ人作家。

将軍の娘〈上〉 (文春文庫) 将軍の娘〈下〉 (文春文庫)

本作で登場したブレナー准尉が登場する続篇的な作品としては2003年刊行の『アップ・カントリー 兵士の帰還』がある。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

特殊な常識が支配する世界。軍隊を舞台としたミステリ作品を読んでみたい方。1990年代前後のアメリカ社会の雰囲気を感じてみたい方。ネルソン・デミルのポール・ブレナーシリーズに興味がある方におススメ。

あらすじ

美貌のエリート大尉が殺害された。しかも全裸で手足を杭にしばりつけられたまま絞殺されたのだ。偶然同じ基地に居合わせた合衆国陸軍犯罪捜査部に所属するブレナー准尉は早速事件の解明に乗り出す。被害者の父親は湾岸戦争の英雄キャンベル中将。各方面からの政治的圧力に妨害されながらもブレナーは真相に迫っていく。

ここからネタバレ

映画化までされた話題作

主人公の一人称で物語は進行していく。訳がいいのかもしれないがとても読みやすい。しかし、自分の見聞きしたことしか書けないのが一人称であるわけで、この手の複雑に人間関係が入り組んだタイプの作品で一人称は珍しいのではないだろうか。

主人公はヴェトナム戦争にも従軍した歩兵上がりの捜査官。極めて有能。離婚歴アリ。気まずい別れかたをしたかつての恋人が今回のパートナー。卓越した行動力で事件の真相に肉薄していくが、年齢的なこともあってか、いま一つ積極的に意中の女性に迫ることが出来ないでいる。……なんていかにもアメリカ映画の主人公にありがちなキャラ造形ではあるが、キャラクター造形は丁寧になされていて読みやすい。

魔性の女の悲劇の筈が……

しかし本質的にはこの話は父と娘の悲劇の筈なんだけれど、これだけ徹頭徹尾セックスが絡んでくると妙に滑稽な雰囲気になってくるから不思議。たった一人の美人大尉の前に壊滅に追い込まれたフォート・ハドリー陸軍基地上層部(ほぼ全員彼女と寝てた)の皆さんに合掌するしかない。

映画版はジョン・トラボルタ主演

本作は1999年に映画化されている。 監督はサイモン・ウェスト。ブレナー准尉役は、ジョン・トラボルタが務めている。いかにもなハリウッド映画!というノリで、よけいなアクションシーンなどが追加されて、比較的残念な映画化案件になっている。

海外ミステリならこちらも