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『エドワード・ゴーリーの世界(改訂増補新版)』濱中利信編 ゴーリーファン必携、ガイドブックの決定版


エドワード・ゴーリーのファンブック

本作は、アメリカ人絵本作家エドワード・ゴーリー(Edward Gorey)のファンブックだ。編者の濱中利信(はまなかとしのぶ)は1961年生まれ。エドワード・ゴーリーの邦訳がまったくなかった頃から、ゴーリーファンとしてその作品の普及に尽力してきた人物。ゴーリー本のコレクターとしても世界的な権威の一人である。開設されたゴーリー紹介サイト「Wonderful World of Edward Gorey」はあまりにも有名。

『エドワード・ゴーリーの世界』は、まず2002年8月に最初の版が登場している。この時点では、日本におけるゴーリー作品は七作しか刊行されていなかった(本書のあとがきでは『華々しき鼻血』までの六作とされているけど、奥付を見る限り『蒼い時』も刊行されていたような……)。ゴーリー作品の全体感を知ることが出来た意味で、本書の存在意義は大きい。

その後、ゴーリー本の翻訳は人気を博し、日本国内での刊行点数は30を超えた。この流れを受けて『エドワード・ゴーリーの世界』は、2020年に最新の情報を踏まえた「改訂増補新版」が刊行された。

エドワード・ゴーリーの世界

旧版との主な違いは、あとがきによる以下の二点。

  • ゴーリー自身の作品(プライマリー・ブックス)のリスト見直し
  • 挿絵提供作品(セカンダリー・ブック)リストを新たに追加

ゴーリーが関与した作品の全貌がひととおり俯瞰できる意味で、ファンブックとしてより完璧な一冊になったように思える。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

エドワード・ゴーリー作品のファンの方。ゴーリー作品や、その歴史、作家自身の人となりについて、より詳しく知りたい方。ゴーリー関連グッズに興味がある方。作品リストや、年譜、日本における受容の流れについて知っておきたい方におススメ。

内容はこんな感じ

世界有数のゴーリー本コレクターである濱中利信が編者となり、エドワード・ゴーリーの全著作(希少な限定版を含む)と、イラストを手掛けた作品群の書影をカラーで大公開。併せてゴーリー関係者のインタビュー集。江國香織、柴田元幸との座談会記事。巻末にはゴーリー年譜を収録。ファン必携のガイドブックとなっている。

カラーページの充実ぶりがすごい

本作で圧巻なのが、冒頭から80ページにも及ぶカラーページだ。日本ではなかなかお目にかかれないゴーリーグッズの数々が登場。ゴーリー作品のTシャツ、超欲しいんだけど、河出さん企画してくれないだろうか。

日本では未だ翻訳本が出ていない、オリジナルのゴーリー作品が全てカラー書影付きで紹介されているのも嬉しい。日本国内でのゴーリー本もかなりの冊数となってきたが、まだまだこれほど未訳本があるのかと思うと嬉しくなる。アメリカでのゴーリー本は、限定で少数部だけ発行された私家版のような作品が相当数存在してるようで、コレクター的にはたまらないだろうなあ。

「セカンダリー・ブックス」と名付けられた、イラストレータとしてのゴーリーの活躍の事績を知ることが出来るコーナーも、よくぞここまで調べた(そして蒐集もしているのだろう)というマニアならではのこだわりを感じさせるページだった。

ゴサム・ブックマートに行ってみたかった!

カラーパートの後には、ゴーリー関係者へのインタビュー記事が続く。ゴーリー存命中から、ニューヨークの古書店ゴサム・ブックマートは「聖地」として、知る人ぞ知る人気書店であったらしい。サイン付きのゴーリー本を販売し、グッズも各種取り揃え、日によってはゴーリー当人も来店しているという夢のような空間である。何も知らずにゴサム・ブックマートを訪れたら、ゴーリー本人が偶然中にいて、その場でサインまでしてもらえたという磯田和一の体験談が凄すぎる。

残念ながら、ゴサム・ブックマートは現在では閉店してしまっており、もはや存在していない。現在でも残っていれば行ってみたかったな。リアルタイムで、ゴーリー作品を楽しめた世代が本当に羨ましい。

エドワード・ゴーリーを知るためのABC

インタビュー記事の後に登場するのが、濱中利信による「エドワード・ゴーリーを知るためのABC」だ。このパートでは、ゴーリー作品をより深く味わうために、知っておきたい基礎知識の数々が披露されている。

ゴーリーは26のアルファベットで構成された「アルファベット・ブック」と呼ばれる作品を八作手掛けている。この「エドワード・ゴーリーを知るためのABC」では、このゴーリーの「アルファベット・ブック」に倣い、ゴーリーに関するミニ知識をアルファベット26文字分でまとめて構成となっている。

特別座談会でゴーリーの日本初出を知る

最終パートは、編者の濱中利信に、ゴーリー本の翻訳で知られる柴田元幸(しばたもとゆき)、そして作家の江國香織(えくにかおり)を加えた、豪華メンバーによる座談会「ゴーリー作品の魅力を語り合う」である。

興味深いのは、ゴーリー作品の日本初出に関する言及だ。1970年代の早川書房「ミステリ・マガジン」に、かなり無茶な形で紹介されていたのが最初らしい。

後半の作品解釈の部分では、江國香織の「ぜったい理に落とさないんですよね」とのコメントに納得感。ロジカルで割り切れないところは、ゴーリー作品の絶対的な魅力なのだと思う。

ゴーリーファン、マストバイの一冊

以上、改訂増補新版の『エドワード・ゴーリーの世界』について、ざっくりとご紹介させていただいた。率直な感想は、もっと早く買っておくべきだった!

作品リストの充実ぶりは、ゴーリー作品の全体像を理解するのに役立つし、貴重なグッズの数々は写真で見ているだけでも楽しい。ゴーリーに関する雑学知識も多数収録されているので、ファンとしては本当に楽しい一冊となっている。

ゴーリーファンの方で本書を読まれていない方は、是非一読されることをお薦めしたい。

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