岡崎隼人、最初で最後の作品
2006年刊行。第34回メフィスト賞受賞作品。作者の岡崎隼人(おかざきはやと)は1985年生まれなので、受賞時は21歳くらいか。わりかし若い作家が受賞することが多いメフィスト賞としてもかなり若い方だよね。
ノベルス版のみで文庫化は未だされていない。
というか、岡崎隼人の作品は本作が最初で最後。第二作は構想はあったようだが、結局世に出ることはなかった。
『メフィスト』2007年5月増刊号に掲載された「ノベルス あとがきのあとがき」で、2作目として「『welcome to my……』に対する感謝・対策」という仮タイトルを予告したが、未刊行である。
受賞作のみで以後作品が刊行されなかった作家としては、第17回古泉迦十『火蛾』、第24回津村巧『DOOMSDAY 審判の夜』、第33回森山赳志『黙過の代償』あたりが該当するだろうか。なんとも残念な話である。
ただ、Twitterを拝見する限り「新作長編小説鋭意執筆中」とあるので(プロフィール欄)、今後新たな展開があるのかもしれない。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
岡山県を舞台としたミステリ作品に興味がある方。岡山県に深い愛情を持っている方。猟奇殺人モノでも大丈夫!グロ描写もへっちゃらです!という方。とにかくメフィスト賞作品は絶対読むと決めている方におススメ。
あらすじ
連続乳児誘拐事件で非常事態を迎えていた岡山市。犯人の手がかりすら掴めず、遂に四件目の犯行が行われ、市中は狂騒状態に陥る。19歳の青年北原結平は、中学生の少女蒼以に出会い戦慄を覚える。彼女は四肢を切断された赤子の死体を持ち歩いていたのだ。ウサガワと名乗る猟奇殺人鬼の登場。結平がいまなお悔いる幼き日の罪。全ての事件が繋がった時、真の悪夢が訪れる。
ここからネタバレ
負の吸引力が捨てがたい
「舞城王太郎大好き!」的なリスペクト心が全編から漂ってくる戦慄のノワールノベル。そこはかとなく既視感を覚える作風ではある。しかし読み始めたら止まらない、圧倒的な負の吸引力は新人としては立派だと思うけど。これも一種のセカイ系かな。ほんのりゆやたん(佐藤友哉)の影響もある感じ。
岡山県凄い!というお話
舞城は福井県だったけど、岡崎君が選んだのは岡山県。岡山弁で繰り広げられる大量殺戮劇のエグいことエグいこと。軽々と殺人の禁忌の壁を乗り越えてしまう主人公も逝っちゃってるなと思うけど、それに輪をかけて出てくる奴がどいつもこいつもキチガイだらけだったという酷いお話。特にウサガワクンは逝き過ぎです、はち切れ過ぎにも程がある。岡山県怖いよ岡山県……。
前後のメフィスト賞受賞作品はこちら