ネコショカ

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辻村深月『冷たい校舎の時は止まる 下』感動的な力業で綺麗に物語が収束してた!


二週にわたって続けてきた、『冷たい校舎の時は止まる』感想の続き。

連続刊行の最終巻

第31回のメフィスト賞受賞作品。上・中・下の3分冊で2004年の6月~8月にかけて、毎月連続刊行されていた。

上巻ではややもたついていた感があったけど、中巻で登場人物の掘り下げが始まり、なかなかいい流れになってきていた。今回はいよいよラスト。最終巻である下巻をご紹介したい。

冷たい校舎の時は止まる (下) (講談社ノベルス)

本作は2007年に文庫化されているが、その際に上下巻の二巻構成に改められている

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)

 
冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫)

冷たい校舎の時は止まる(下) (講談社文庫)

 

あらすじ

冬の校舎に取り残された8人の高校生。四人の姿が消え、残された鷹野、菅原、景子、深月の四人は衝撃に打ち震える。彼らをこの場所に召還したのは一体誰なのか。文化祭のあの日、自ら命を絶ったのは誰なのか。やがて景子が消え、菅原が消息を絶つ。深月と共に残された鷹野に、驚くべき真実が明らかにされる。

残されたものたちの物語

下巻では残された四人のうち、まず景子編がスタート。プライドの高さ故に素直に人を好きと言えない不器用さんを描いて、これがわりとよく書けてる。メインでない登場人物の生徒会長君がいい味を出している。

続いて菅原編。これがどうして?って、激しく突っ込みたくなるくらい長い。景子編の40頁弱に比べてなんと80頁強。倍だ。でも、その分すごくいい話。どうして菅原がこんなお気軽君に育ってしまったのか、中学時代の哀しいエピソードが丁寧に描き込まれていて好感度アップ。本当は、この不自然な長さも疑わないといけないところなのだが、読みの甘い読者はあっさりこれを見過ごしてその先へ進んでしまうのである。

まさかの「読者への挑戦」

そして予想もしていなかった「読者への挑戦」がいきなり登場。えええ、この話って本格ミステリだったのか!論理的に考えて予想が付くものなのだろうか?提示された回答は、そりゃないだろうと激しくツッコミたくなるような意外過ぎるオチなのである。

呆気にとられている読者を放置して、更に謎解き編は進んでいくわけだが、ここで妙に長すぎた菅原編の意味が明らかになり、これで無理矢理ながらも、感動的な力業で綺麗に物語が収束していく。伏線に全然気付かなかったのはわたしだけ?最後に全ての感動を持ち逃げしてしまったサカキ君には感服した。

超自然現象を逆手に取ってのなんでもアリがこの作品の特徴なのだが、よもやこんな着地点を用意していたとは。驚きの結末と言う意味では、見事なデビュー作なのであった。青春ミステリとして、ベタベタしすぎない温度感も程よい感じで、過ぎ去りし学生時代に対しての慈愛に満ちた目線に、本作に込められた作者の愛情を感じずにはいられないのであった。良作!

冷たい校舎の時は止まる (下) (講談社ノベルス)

冷たい校舎の時は止まる (下) (講談社ノベルス)