「マルドゥックシリーズ」シーズン2
2006年刊行作品。冲方丁(うぶかたとう)の人気シリーズ「マルドゥックシリーズ」のシーズン2である。あのウフコックが、あのボイルドが帰ってきた!名作『マルドゥック・スクランブル』の続編、というか前日譚が本作にあたる。
2012年に新装文庫版が登場している。現在読むならこちらの版になる。
本作単独でも読めるようにはなっているが、出来ることなら「スクランブル」を先に読むことを強くオススメする。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★★(最大★5つ)
能力バトル系の作品が好きな方。ハードで、猥雑で、サイバーパンク的な世界観が大好物な方。「マルドゥック・スクランブル」を読んで気に入った方。ボイルドとウフコックにもう一度会いたい方。初期の冲方丁作品を読んでみたい方におススメ!
あらすじ
ディムズデイル=ボイルドは自軍への誤爆の責を負い、軍研究所で生態改造を受ける。周囲の重力を自在に操る力を得たボイルドには、あらゆるものに変形出来る万能兵器ネズミ・ウフコックがパートナーとして付き従う。戦争が終わり存在意義を失った研究所の被験者たちは悪徳の街マルドゥック市にたどり着く。そこで彼らを待っていたのは意外な任務だった。
ココからネタバレ
ウフコックがバロットに出会う前の物語
カタカナ名前のオンパレードなので、キャラクターを覚えるのには苦労させられた。全キャラクターの絵を出せとは言わないけど、キャラクターリストにはそれぞれの得意技を書いて欲しかったかな。
本作はまだ、ウフコックがバロットに出会う前、未だボイルドとコンビを組んでいた時代のお話。自我が形成されて間もないウフコックの初々しさが愛らしい。ボイルドとの絡みは狙っているとしか思えない。そして主人公はボイルド。味方を誤爆しながらも大量殺戮の歓びに打ち震えてしまった自分。己の心中に潜む悪魔を必死に抑え込もうと苦悩する姿が本作では描かれていく。「スクランブル」がああいう話だっただけに、結末が判っている読者としては、如何にしてボイルドの精神が崩壊に至り、ウフコックと破局を迎えるのかを暗い期待を持って読み進めることになる。
集団VS集団の異能バトル
軍研究所の人体実験で改造を施された元軍人たちが、罪深き街マルドゥックシティでそれぞれの特殊能力を武器に特殊任務をこなしていく。彼らの前に立ちふさがるのは、同じく改造済の元軍人グループ。おお、今回は集団VS集団の異能バトルになる模様。この先の燃えるバトル展開に期待である。冲方丁だから、単純なハッピーエンドはもとより期待していないぞ。
ちなみに組織の名称が「09」なのはひょっとして「009」を狙っているのかしらん。
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