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『クリスタルサイレンス』藤崎慎吾 ベストSF1999国内部門第1位作品

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藤崎慎吾のデビュー作品

1999年作品。単行本版は朝日ソノラマから刊行。早川書房のベストSF1999(「SFが読みたい2000」)では『グッドラック 戦闘妖精・雪風』を抑えて国内部門第1位に輝いている。

作者の藤崎慎吾(ふじさきしんご)は1962年生まれの小説家、ノンフィクションライター。本書『クリスタルサイレンス』が最初の作品となる。

文庫化に際して上下巻に分冊されている。まず最初に2003年にソノラマ文庫版が登場。

続いて、ハヤカワ文庫版が2005年に刊行されている。

クリスタルサイレンス〈上〉 (ハヤカワ文庫JA) クリスタルサイレンス〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)

1995年に同人誌『宇宙塵』に発表した中編「レフト・アローン」が翌年の日本SFファンジン大賞を受賞。本作はこの「レフト・アローン」の世界観を受け継いでいる。 

こちらは2006年にハヤカワ文庫で書籍からされたので気になる方はチェック。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

火星を舞台としたエスエフ作品に興味のある方。謎の生命体との遭遇、ファーストコンタクトモノがお好きな方。ネットーワークをテーマとしたエスエフ作品を読んでみたい方におススメ。

あらすじ

2071年。火星にまで進出した人類はその極冠部に謎の生命体の死骸を大量に発見する。それは高度な知性を持つ異星人の存在を示唆するものだった。縄文時代を専門とする生命考古学者のサヤは、その能力を高く評価され火星へと赴く。しかしそこは列強各国と世界的巨大企業の思惑が渦巻く紛争の地だった。

ここからネタバレ

魅力的な謎とその解決

火星で謎の生命体の死骸が大量発掘される。それは高度な知性を持つ異星人がなんらかの目的のために使役していた生物らしい。果たしてのその目的は。異星人はどこに行ったのか。冒頭に魅力的な謎が提示され主人公がそれに挑むというスタイルは、ホーガンの『星を継ぐもの』を彷彿とさせる部分があり非常にワクワクさせられる。

だが本作では火星文明の謎解きよりも、真の主人公であるネットワーク生命体「KT」を創出することの方に重きを置いているようで、ミステリ部分の充実を期待していると肩すかしを食わされる。発表当時の1999年に読んでいればまた違った印象を持つとは思うのだが、今となっては本作のネットワーク世界の描写にも古さを感じてしまうのがこのジャンルの怖ろしいところだろうかね。

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