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『吹け、南の風』秋山完 圧倒的な敵勢力VS不正規部隊の戦いを描く良作


秋山完の大長編作品

今週のお題「読書の秋」に引き続き便乗。本日は秋山完(あきやまかん)の大長編作品『吹け、南の風』全三巻を一気にご紹介したい。

『吹け、南の風』は2001年~2003年にかけて、今は亡きソノラマ文庫から刊行されたエスエフシリーズ。秋山完としては、第8作~10作目にあたる。イラストは小菅久実(こすがくみ)が担当している。

吹け、南の風〈1〉星戦の熾天使(セラフィム) (ソノラマ文庫) 吹け、南の風〈2〉星海の襲撃者 (ソノラマ文庫) 吹け、南の風〈3〉開戦への序曲 (ソノラマ文庫)

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★★(最大★5つ)

スペースオペラ的な物語、壮大なスケールのエスエフ作品を読んでみたい方。『銀河英雄伝説』っぽい、巨大陣営同士の戦いを描いた作品に興味のある方。同じ作者の『ペリペティアの福音』を読んで感動した方におススメ!

ここからネタバレ

過去作『ペリペティアの福音』の内容についても言及しているので注意!

吹け、南の風1 星戦の熾天使 あらすじ

<<連邦>>所属の商船を襲う謎の船籍不明艦。海賊鼠小僧と名乗るその船は神出鬼没にして大胆不敵。通商路に次々とダメージを与えていく。一方、回廊星域の独裁国家ムエルト帝国はトランクィル廃帝政体の示威行動を受け窮地に陥る。<<連邦>>大統領第三息女ジルーネは麾下の艦隊を率い、局面の打開に打って出るのだが……。

秋山ガジェット満載で燃える!

『ペリペティアの福音』「光響祭」(『天象儀の星』収録』)の8~9年後のエピソードで、秋山未来史の一翼を担う作品。2001年12月の刊行。

秋山完の遅筆ぶりはもはや致し方ないものとは諦めながらも、あまりに刊行速度が遅いので以前に出てきた登場人物が再登場しても、記憶から抜け落ちてしまっていてさっぱり誰が誰だか思い浮かばないのがもどかしい(読者の記憶力の問題も大だが)。超ヒロイン・ジルーネお嬢様はさすがに忘れないにしても、コムカタやフロプトは完全に忘却の彼方だった。ごめんな。

ジルーネ配下の圧倒的な軍事力に対して、正体を現すことすら禁じられている不正規部隊がいかに立ち向かっていくのか。古典的なシチュエーションでありながら、秋山ガジェット満載のエスエフ設定に、弾けすぎの感すらある砕けたサブキャラの魅力も相まって、実に燃える話に仕上がっている。第一巻としてはなかなかいい引きだ。

吹け、南の風2 星海の襲撃者 あらすじ

トランクィル廃帝政体の秘密工作船<フリーゲンデ>は商船<ゼンタ>号に襲撃をかけた。楽勝かと思われた筈の戦いは思わぬ逆襲を受け予想外の展開を迎える。船体を固定され逃走手段を失った<フリーゲンデ>に<<連邦>>の狼狩り戦隊が迫る。<ゼンタ>号に潜入したコムカタは自分がかつてこの船の乗組員であったことを思い出すが……

昼行灯がいざとなると頑張るタイプ

シリーズ二巻目。後に「無邪気な戦争(シリーウォーズ)」と呼ばれた大戦争の、前哨戦「ザントヴィーケ事件」の顛末を描く。2002年4月刊行。

重度の健忘症に重要任務を帯びた特務艦の艦長が勤まるのかどうか、激しく疑問で仕方がないのだが、放置プレイかと思われていたコムカタにようやくスポットが当たる。きっとこのキャラ、普段は昼行灯なんだけどピンチに陥ると大活躍なタイプだな。<ゼンタ>号の女艦長ティダの変装ぶりは演技とかメイクとかいうレベルを超えてるような気がしないでもないけど、この子も何か裏がありそう。

吹け、南の風3 開戦への序曲 あらすじ

<フリーゲンデ>と<ゼンタ>号の睨み合いは膠着状態に陥り、業を煮やしたロストウは<ゼンタ>号もろとも<フリーゲンデ>を撃沈する決断を下す。高速巡洋艦四隻の全力集中射撃が迫る中、コムカタとティダは驚くべき対応を見せる。一方、緊張高まるムエルト星系では<<連邦>>勢力が新たな蠢動をはじめようとしていた。

続きが出て欲しい終わり方

後の世に「無邪気な戦争(シリーウォーズ)」と呼ばれることになる大戦争の、前哨戦「ザントヴィーケ事件」の顛末を描いたシリーズの三巻目。やっと最終巻だ。2003年4月刊。よもや一年も待つことになろうとは。一巻(253p)、ニ巻(223p)が厚さ1センチも無かった状態だったのに、今回は厚さ2センチ強(610p)。三冊並べてみると著しくバランスを欠いていて脱力する。

しかしどれだけ待たされようと、面白ければ全て許されるのがこの世界。待っただけの甲斐はあった。戦闘シーンは圧巻であまりに素敵過ぎる。圧倒的な敵勢力を相手に貧弱な武装を駆使してボロボロになりながら頑張る話萌えな向きにはたまらんだろうよこれ。是非映像で見てみたいのだが、どこかアニメ化してくれないだろうか。順調にシリーズが続いていきさえすれば、銀英伝を喰えるレベルまで育つと思うのだけど。

で、ティダ=フレンとわかった瞬間にもう泣きそうだったんだけど、涙腺弱すぎだろうか。『ペリペティアの福音』を読んできた人間には感涙ものだろう。表紙絵を見たときには誰こいつ?という感じでピンと来なかったのだが、ジルーネお嬢様との対立軸にフレンを持ってこようとは。「シリーウォーズ」編が早くも楽しみになってきたけど、未だ書かれていない、中間エピソード「葡萄園のフレン」がまずは先か。次の新刊は何年後だろうか。

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