方向模索中の本読みBlog

書評Blogの予定だけど、現在方向性模索中。基本ネタバレありなので注意してね。

「殺人鬼の放課後」はライトノベルレーベル×ミステリの越境アンソロジー

内容はこんな感じ

殺人鬼の放課後―ミステリ・アンソロジー〈2〉 (角川スニーカー文庫)

殺人鬼の放課後―ミステリ・アンソロジー〈2〉 (角川スニーカー文庫)

 

殺人鬼こそミステリの華。湿原に聳える謎めいた全寮制学園で繰り広げられる残酷なゲーム「笑いカワセミ」。その謎を追う『水晶の夜、翡翠の朝』。誘拐された三人の少女の悲惨な末路を描いた『攫われて』。死んだはずの少女と酷似した容貌の受講生。その正体を巡る顛末を描く『還ってきた少女』。閉ざされた七つの部屋。閉じこめられた人々。凄惨な死のルール『SEVEN ROOMS』。四編の競作アンソロジー。

短命に終わったスニーカー・ミステリ倶楽部

2001年に登場した、スニーカー文庫内のミステリレーベルが、スニーカー・ミステリ倶楽部だ。でも、結局あんまりうまくいかなくて、数年で消えてしまったはず。同時期に始まった、富士見ミステリー文庫も、無くなってしまったし、ライトノベルとミステリは意外に食べ合わせが悪いのかもしれない。

米澤穂信(古典部シリーズ)を世に出したことが最大の功績かな。こないだ紹介した稲生平太郎の『アクアリウムの夜』もこの系譜だった気がする。

www.nununi.site

スニーカー・ミステリ倶楽部は長編作品に新人を多く起用している一方で、本作のようなアンソロジー集(ミステリ・アンソロジーシリーズ)では既存のミステリ系作家を登場させている。

シリーズの第一弾『名探偵は、ここにいる』では太田忠司、鯨統一郎、西澤保彦、愛川晶の四人を揃え、名探偵モノを(って読んでないけど)。そして第二弾の本作では恩田陸、小林泰三、新津きよみ、乙一の四人のラインナップで殺人鬼モノを競作させている。このジャンルに初めて接する若い読者に、ミステリ界の定番の「型」的なものに触れてもらいましょう!という意味があるのでは思われる。200頁に満たないボリュームなので、手軽にミステリの世界を味わってもらうには良い趣向といえるだろう。

では、簡単に各編へのコメントを。

『水晶の夜、翡翠の朝』@恩田陸

そもそもこれを読むために購入したようなもの。『麦の海に沈む果実』に登場した人気キャラクター、ヨハンを主人公としたショートストーリー。キャラの個性を活かして巧くまとめた一品。ファンなら感涙モノだろうが、このシリーズを未読の向きには少々入りにくいかもしれない。

※『水晶の夜、翡翠の朝』に関しては2007年刊の恩田陸作品『朝日のようにさわやかに』にも収録されている。

『攫われて』@小林泰三

本来の作風通り。期待を裏切らない内容。グログロな内容の中でラストはしっかりオチをつけてくる。しかしライトノベルでこんなえぐい話にしてしまていいのか?でも、まるで救いの無いラストは好物だったりする。

『還ってきた少女』@新津きよみ

おいおいこれはちょっと不味いのでは、ってくらいフツウな一作。あんまり記憶に残ってない。他の三人と比べるとダウングレード感は否めず、ちょっと可哀そう。

『SEVEN ROOMS』@乙一

この当時の角川的には一番プッシュしたいであろう乙一だが、ここはしっかり期待に応えて本領発揮。映画の『Cube』を思わせる不条理な状況設定の中での極限の人間心理を描いて好印象。良質な暗黒系ハートウォーミングストーリーに仕上がっている。さすがは「せつなさの達人」(笑)。

立ち位置が微妙なアンソロだったと思う

全体の感想としては、何故スニーカーなのにイラストが無いの?ってことだろう。多少は楽しみにしていただけに残念。表紙のデザインもイマイチなんだが、これで本来のターゲットである若者ユーザーを引き込めたのかは多いに疑問。

ちなみにミステリ・アンソロジーシリーズ、第三弾の『密室レシピ』が、翌2002年に刊行されている。ラインナップは折原一、霞流一、柴田よしき、泡坂妻夫だった模様。