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『ひとくいマンイーター』大澤めぐみ わたしがなんであるのかは、わたしが自分で決める


『おにぎりスタッバー』の前日譚

2017年刊行作品。大澤めぐみの第二作となる。

ひとくいマンイーター おにぎりスタッバー (角川スニーカー文庫)

前作『おにぎりスタッバー』の続編、というか前日譚に相当する物語となっている。イラストは前作同様に、U35(うみこ)が担当。

『おにぎりスタッバー』の感想はこちらから。

『ひとくいマンイーター』は、『おにぎりスタッバー』時点では、既知の仲であった、アズこと、中萱梓(なかがやあずさ)と、サワメグの馴れ初めがわかるお話となっている。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★★(最大★5つ)

自分って何ものなんだろう。自分はどうすればいいんだろう。そんな悩みを持っている(もしくは持っていた)方に。大澤めぐみならではの独特の文体。饒舌な少女の一人語りを楽しみたい方におススメ!

※前作の『おにぎりスタッバー』から読むことを推奨。

あらすじ

目が覚めると、そこには濃厚な血の臭い。そして謎の少女。魔法少女サワメグは、自分の身に何が起きたのかを思い出せない。街には美少女ばかり狙う連続殺人鬼「人食いマン」が出現。大切な存在を奪った殺人鬼を見つけ出し、復讐を果たすこと。自らの使命を思い出したサワメグは事件の真相に迫っていくのだが……。

ここからネタバレ

キャラクター一覧

今回も、まずは登場するキャラクターを確認しておこう。

  • サワメグ:魔法少女。主人公。沢城恵
  • ケルベル:地獄の番犬。ヴァーチェの眷属
  • 廻沢小海(めぐりさわこうみ):元魔法少女。故人
  • 明科恵(あかしなめぐみ):元クラス委員長。いじめられっ子。故人
  • 中萱梓(なかがやあずさ):デフォ子。通称アズ。マンイーターのクォーター
  • 松川常盤(まつかわときわ):同級生。クラスカーストの頂点に君臨。吹奏楽部所属
  • 炎の魔女:サワメグの宿敵。

前作『おにぎりスタッバー』とかなりの部分、登場人物が被っているので、続けて読んでいる方であれば、比較的スムーズに世界に入れるはずだ。

サワメグの正体が明かされる

サワメグは魔法少女である。超越的システムヴァーチェと契約した彼女には、無限大の魔法力が供給され、あらゆるダメージは即座に無効化される。魔法少女の使命は、世界のルールを逸脱した魔法の使用者、世界の脅威となるような存在を取り締まることにある。

サワメグと廻沢小海、そして明科恵の関係は以下のようになっている。

  1. 廻沢小海(もともとのサワメグ、魔法少女)→人食いマンに殺される
  2. 明科恵→廻沢小海の仇を討つために、ヴァーチェと契約し魔法少女に→人食いマンに殺される
  3. サワメグ→殺された明科恵が、ヴァーチェの力で自動修復される。その後母親が離婚したため、沢城恵となる

いじめられっ子であった明科恵は、圧倒的な魅力を持つ廻沢小海に惹かれる。そして、廻沢小海の死を契機として、彼女の仇を取るために魔法少女になる。しかし、そんな明科恵も、人食いマンの前に敗れ死に至る。そして超自然的な力で再生された、新たな明科恵が「サワメグ」になる。

本作の冒頭に書かれた「ふたりの少女が死んで、このわたしが生まれた」は、上記の理由による。『ひとくいマンイーター』は、サワメグが、サワメグになるまでのお話。無から生まれた存在が、自身を見出し、存在理由を確立するまでの物語となっている。

自分探しと自己確立の物語

サワメグのベースとなった明科恵は、周囲から虐められていながらも、それを見て見ぬふりをしていた。自分は虐められてなどいないと信じていた人間だ。しかし、廻沢小海に救われたことで、明科恵は自分がいじめられっ子であることを思い知らされ、その後不登校となってしまう。

明科恵は、廻沢小海の「正しくあろうと、自分の足で真っすぐに立とうと努力し続ける」姿に強く魅了されていた。明科恵の想いは、現在のサワメグにも受け継がれている。その想いがサワメグ人格の軸となる。

すべては認識の問題

サワメグこと沢城恵の本編中での活躍は比較的冴えない。炎の魔女の前に完敗するし、仇である人食いマン(装備は、妖刀村雨。属性は水。効果は恐怖と粗略)には、相性の問題もあってまったく歯が立たない。人食いマンを倒したのは結局、中萱梓だったしね。

魔法少女の強さは、自己の内面の強さに依存している。炎の魔女が言うように「すべては認識の問題」なのだ。この時点での自己を確立できていないサワメグが、強者たりえないのは当たり前の話である。本作はサワメグが無双するお話ではなく、サワメグがサワメグになるための物語なのだ。

ここで最初に出てきた廻沢小海のセリフが生きてくる。。

わたしがなんであるのかは、わたしが自分で決める

『ひとくいマンイーター』p19より

自分がなにものであるかを規定できなかった、サワメグは、中萱梓に「サワメグ」と名付けられたことで、身体に精神が定着を果たす。サワメグとしての生を受け入れたのだ。最後のサワメグのセリフは、自戒でもあり、すべての自己確立に悩む人々へのメッセージなのだと思うのだ。

どんな風に生まれついたとしても、生まれちゃった以上は生きなきゃだめだからね。

『ひとくいマンイーター』p283より

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