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『ハードボイルド・エッグ』荻原浩 フィリップ・マーロウに憧れて探偵稼業

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荻原浩、最初期の作品

1999年刊行作品。荻原浩(おぎわらひろし)としては三作目の長編小説にして、初のミステリ作品である。以前に紹介した『コールドゲーム』同様に、ブレイク前の荻原浩作品だ。

ハードボイルド・エッグ

2002年に双葉文庫版が登場。わたしが読んだのはこちら。

その後、2015年に新装版の文庫が登場した。現在流通しているのはこちら。

荻原浩は1956年生まれ。1997年に『オロロ畑でつかまえて』で第10回小説すばる新人賞を受賞しデビューしている。今時の作家としては遅いデビューだけど、本来作家ってこれくらいの年でなるものだったんだよね。

『明日の記憶』が本屋大賞で第2位。そして山本周五郎賞受賞。更に映画化もされて、一気に知名度が上がった。その後は何度も直木賞候補にリストアップされるも、なかなか受賞できずにいたが、2016年の『海の見える理髪店』で遂に直木賞を獲得。実力派作家の地位を完全に確立した。

おススメ度、こんな方におススメ!

おすすめ度:★★★(最大★5つ)

初期の荻原浩作品を読んでみたい方。レイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウ関連作品がお好きな方。ハードボイルドな世界に憧れる方。同じような毎日が続いていくことに疲れてきた方におススメ。

あらすじ

フィリップ・マーロウに憧れて脱サラ。探偵業を始めてはみたものの、依頼されるのは迷子ペットの捜索ばかり。うだつのあがらない日々の中でもストイックな生き様を貫こうとする「私」の前についに運命の事件が立ちはだかる。地上げで立ち退きを迫られている動物施設と発見された惨殺死体。背後には暴力団の影がちらつく。ナイスバディな美人秘書と共に悪に立ち向かう「私」の活躍を見よ!

ここからネタバレ

思うに任せない人生を描く

ハードボイルドな人生を指向しながらも、やることなすこと全てが裏目に出続ける主人公。そんな男の七転八倒の奮闘を描くユーモアミステリ。

最初の100頁はひたすら地味な動物捜索話が続く。後の話の前振りにもなっているんだろうけどこれはかなりの忍耐が必要。もう少し短くても良かったと思う。ユーモアミステリということで、主人公のギャグが滑りすぎなのは既定路線なのだと思うが、連発されるとさすがにキツイ。1/3を過ぎたあたりからようやく物語が転がり始めてきて、そこから先は一気に読める。

最後に明かされるのはちょっぴり意外な真相。ある程度予想は出来てしまうのだけど、この終わり方はけっこう好み。

なお、続篇の『サニーサイドエッグ』が2007年に登場している(わたしは未読)。こちらは東京創元社からの刊行。 

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