ネコショカ

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『放課後の記憶』森真沙子 25年の歳月を経て明らかになる真実


立風書房から出ていた森真沙子作品

1994年作品。今は亡き立風書房(りっぷうしょぼう)からの刊行。残念ながら文庫化はされておらず、現在では読むのが困難作品である。電子書籍化も無し。

軽くググってみたが、ほとんどレビューが見当たらない。インターネットが民間に普及し始めたころだから、さすがに仕方ないか。

作者の森真沙子(もりまさこ)は1944年生まれで、現在は75歳。デビューは1979年だから、大ベテランの域である。

放課後の記憶

ミステリから、サスペンス、ホラーの類まで、色々なジャンルで作品を残している。90年代は学園を舞台としたミステリを数作書いている。2000年代に入ってからは時代小説の分野にも進出。幅広いジャンルを手掛けている守備範囲の広い作家であると言える。

あらすじ

クラス演劇で「マクベス」を演じた二年五組の面々。舞台は好評のうちに幕を下ろしたが、マクベス夫人役を演じた少女が数日後に謎の死を遂げる。自殺、他殺、それとも事故なのか。真相は解明されることなく四半世紀の時が過ぎる。担任の尾藤は妻の死をきっかけとして事件を再び追い始める。かつての教え子を訪ね歩くうちに、哀しい事実が浮かび上がってくる。

過去の事件を振り返るタイプのミステリ

タイトルから学園ミステリなのかと予想して読んだら、過去振り返り型のミステリだった。以前に紹介した、同様のスタイルを持つ津原泰水の『ブラバン』の過去現在比が5:5だとすれば、こちらは1:9くらい。学生時代の描写は極めて少なく、視点のベースは事件から二十五年が経過した現在におかれている。学園小説、青春ミステリを期待して読むと外されるので注意。

各章で主人公が変わる

本作では各章ごとに主人公が入れ替わる構造が取られている。老境に入った担任の尾藤が、事件を解明するためにかつての教え子を順々に訪ねていく。往年のフランス映画『舞踏会の手帖』形式みたいな感じだな。

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二十五年前に高校生だった教え子たちも今では40代前半。クラスメイトの死は彼らの人生にどんな影響を与えたのか。人間二十五年も生きていればいろいろあるわけで、なかなか思うに任せないのが世の中。この部分をいかに哀愁を漂わせながら描くかが、このタイプの物語には大事だと思うのだけど、個々のエピソードと過去の事件がうまく絡んでこない。

そして死んだ女の子(有岡みほ)についても掘り下げが弱いのが残念。失われた未来の象徴としてこの子はとりわけ魅力的に描かなくてはならなかった。あともう少しで良作になる気配が感じられただけに惜しい。

放課後の記憶

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