吉川良太郎のデビュー作
2001年刊行作品。第二回日本SF新人賞受賞作。作者の吉川良太郎(よしかわりょうたろう)は1976年生まれのエスエフ作家。本作、『ペロー・ザ・キャット全仕事』がデビュー作となる。
日本SF新人賞は日本SF作家クラブが主催し、徳間書店が後援を行っていたエスエフ系の公募賞。1999年に始まり、残念ながら2009年の第11回にて活動が休止となっている。わたし的には『M.G.H. 楽園の鏡像』で三雲岳斗(みくもがくと)を世に出した賞という印象が強いかな。
吉川良太郎の既刊は以下の通り。
- 『ペロー・ザ・キャット全仕事』徳間書店(2001年) ※本作
- 『ボーイソプラノ』徳間書店(2001年)
- 『シガレット・ヴァルキリー』徳間デュアル文庫(2002年)
- 『ギャングスターウォーカーズ』カッパ・ノベルス(2004年)
単著は上記の四作だが、雑誌掲載のみの単行本未収録作がかなりの数で発表されており、現在でも作家としての活動は継続しているもよう。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
ネコが登場するエスエフ作品を読んでみたい方。日本SF新人賞系列の作品に興味がある方。近未来を舞台としたエスエフ作品がお好きな方。ゼロ年代に書かれた国内エスエフ作品が気になる方におススメ。
あらすじ
虚栄と混沌の街パレ・フラノ。この街に住む青年ペローは、何の変化もない日常に絶望し新たな人生を見いだすべく行動を起こす。彼が闇の世界から手に入れたのはサイボーグネコに人間の意識を憑依させる画期的なシステム。かくしてネコの体を借り、強請屋稼業を始めたペローだったが、世の中は決して甘くは無かった……。
ここからネタバレ
サイボーグネコの活躍を描く
アメショーをサイボーグレベルにまで改造し(そんな……酷い!)、自らの意識を憑依させた主人公が、遠隔操作で猫ちゃんを操って犯罪組織相手に大暴れするお話。ペローが憑依する猫は時速100キロ超で走り、極限までに強化された肉体は弾丸を軽々とかわし、その犬歯は瞬時に人間の首を切り落とす。って、こんなネコ、怖ろしくて飼いたくねえ。
話がいくらなんでもご都合主義に過ぎる(シモーヌの存在は犯則級)ところや、パパ・フラノの魅力がいまいちなところ。昔に読んだ大原まり子やら、攻殻機動隊やらのサイバーで猥雑な未来都市のイメージが、既視感ありありなのが気になる。デビュー作としては頑張っていると思うけど、ネコ⇒憑依以外の部分に目新しさが感じられなかったのが難点かな。
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