碓氷優佳シリーズの一作目
2006年刊行作品。石持浅海(いしもちあさみ)は2002年に『アイルランドの薔薇』でデビューして、以後年一冊ペースで良作を配給(というイメージ)。本作が五作目となる。このミス2006年版国内部門第二位の作品。当初は、祥伝社のノン・ノベルレーベルからの登場であった。
祥伝社文庫は2008年に刊行されている。
当時、講談社系に偏っていたので、新規作家開拓の一環として購入。ホントは『アイルランドの薔薇』から読みたかったけど、手に入らなかったのでまずは本作から。わたしにとっては最初に読んだ石持浅海作品である。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★★(最大★5つ)
石持浅海作品に興味がある。特に人気のある碓氷優佳が登場する作品を読んでみたい方。美人の探偵役にグイグイ追い詰められたい方。ちょっと毛色の変わったミステリ作品を探している方におススメ。
あらすじ
成城の豪邸を改造した高級ペンションに集った七人の同窓生。そこで伏見亮輔は後輩の新山を殺害する。密室の構築にも成功し、自殺に見せかけた偽装工作は完璧に見えた。誰もが不審を抱くことなく事態は進行するかに見えたが、唯一、碓氷優佳だけが事の成り行きに疑念を抱く。優佳の追求は精緻に組み上げられていた亮輔の犯罪計画を突き崩していく。
ココからネタバレ
犯人と探偵役との知能戦が楽しい
最初から犯人はわかっていて、探偵役が次第に犯人を追いつめていく刑事コロンボや古畑任三郎タイプ、いわゆる倒叙形式のミステリである。探偵役は碓氷優佳(うすいゆか)。石持浅海作品の中では、座間味(ざまみ)くんと並んでキャラの立った登場人物であろう。
普通、殺人事件となるとまず死体を発見して、それから皆でひと試案ってのがお決まりだけど、本作では最後の最後まで死体は出てこない。殺人現場のドアはラストまで開かず。開かないドアを前にして、犯人と探偵役が知能戦を繰り広げる。これはありそうで無かったパターンで新鮮。
しかし、正直この動機はありえねえんじゃないかと突っ込みたくもなるけど、優佳ちゃんかわいいんだから別にいいのかもと、妙な納得をしてしまう自分。最初からある程度事態を読んで、自分にもっとも望ましい結論に誘導した優佳の冷静沈着なキャラクターが素敵だった。
って、自分が犯人だったら絶対、碓氷優佳には居てほしくないけどね。
ドラマ版は黒木メイサ主演
恥ずかしながら知らなかったのだが、本作はテレビドラマ版が存在する。WOWOWでの放映だったので気づかなかった。キャスティングは以下の通り。放映は2008年。
碓氷優佳(黒木メイサ)
伏見亮輔(中村俊介)
大倉礼子(田丸麻紀)
石丸孝平(柏原収史)
安東章吾(和田聰宏)
上田五月(国分佐智子)
新山和宏(山崎樹範)
藤村百合子(小山田サユリ)
監督は村本天志、脚本は深沢正樹が担当している。
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