コミック誌に連載されていた西尾維新作品
2007年刊行作品。西尾維新のJDCトリビュートシリーズの第二弾。講談社のコミック誌、月刊少年シリウスに2005年7月から2005年12月まで、連載されていた内容をまとめたものである。え?小説なのにコミック誌に連載?と突っ込みたいところだが、講談社的にもいろいろお家事情があるのだろう。
講談社文庫版は2010年に登場している。2003年に講談社ノベルスから刊行された『ダブルダウン勘繰郎』との合本となっている。いずれもJDCトリビュート作品ということで、カップリングするにはちょうど良かったのだろうね。
おススメ度、こんな方におススメ!
おすすめ度:★★★(最大★5つ)
西尾維新も好きだけど清涼院流水のJDCシリーズも大好き!(最近はいないかもだが)な方。JDCシリーズについて、これを機会に読んでみたいと思っている方。クセの強い、あるいは強すぎる本格ミステリ作品を読んでみたい方におススメ。
あらすじ
作家髑髏畑一葉は父、髑髏畑百足(どくろばたけむかで)の邸宅であった岐阜山中の裏腹亭を訪れる。三重殺の怪盗スケアクロウこと、刑部山茶花からの予告状が届けられたからだ。ベストセラー作家でありながら謎の失踪を遂げた髑髏畑百足が最後に残した作品とは?日本探偵倶楽部からは窃盗犯専門の探偵海藤幼志が派遣される。稀代の怪盗はいかにして目的を遂げようとするのだろうか。
ここからネタバレ
西尾維新と清涼院流水との関係
本作は2005年に書かれた作品だが、既に戯言シリーズが好評を博しており、十分売れっ子作家の仲間入りを果たしていた時期である。単独作で十分に売れる作品が書ける作家に、わざわざトリビュート作品を書かせなくても良いのではないかと思ってしまうのだが、流水御大は西尾維新のデビュー作『クビキリサイクル』の帯に推薦文を書いた作家なのである。これは書かないわけにはいかんだろうね。
以下、参考画像。
濃厚な投げっぱなし感
先日の『ダブルダウン勘繰郎』のレビューでも書いたけど、清涼院流水によるJDC(日本探偵倶楽部)シリーズの世界を借りて、いろいろな若手作家にトリビュートをさせて楽しもうってのが本企画の趣旨である。
しかしながら、やはりこの時期の西尾維新は忙しかったのか、この作品に全力投入する余力はなかったのではないだろうか。内容的には非常におざなりの急ぎ働きなのである。ワンアイデアだけで書き逃げって感じ。もう少し枝葉をつけて膨らませればいいのに。話の発端だけ書いてあって、あとは放置なのである。
さすがにこれは、いかがなものかと思うのだ。西尾維新だからこんな内容でも売れてしまうのだろうけど、なんとも罪深い一作であると言える。